社宅住まいや家の購入時を除き、引越しの際に必ず行うことになるのが物件探しです。予算より安い家賃の物件であり、内装・間取りが希望通りの部屋を見つけられれば、引越し後の生活が充実しやすくなります。

ただこのとき、好条件の物件を見つけたいからといって早いタイミングから物件探しを始めると、希望の部屋に住めなかったり損をしてしまったりしやすいです。

それでは、引越し先の物件はいつから探すべきなのでしょうか? また、良い物件が出やすい時期は存在するのでしょうか?

ここでは、引越しの際の物件探しのベストタイミングについて解説していきます。

引越し先の賃貸物件にはいつから住めるのか?

賃貸物件を探す際、多くの人は不動産賃貸仲介を行っている業者を利用することになります。代表的な業者でいうと、アパマンショップやSUUMO(スーモ)などがこれにあたります。

このような不動産業者の多くは、物件探し用のホームページと実店舗を構えています。そのため不動産賃貸仲介業者を利用すると、インターネット上で賃貸物件を比較しながら探したり、店舗で営業スタッフに相談したりすることができます。

これらを活用して住みたい賃貸物件が決まったら、その物件を取り扱っている仲介業者を介してオーナーと契約することになります。例えば以下は、東京にある賃貸物件の物件情報です。

これらの物件は公式インターネットサイトに掲載されています。そのためこの物件に住みたい場合、掲載元の業者を介してオーナー・管理会社と賃貸契約を結ぶことができます。

なお、賃貸物件の契約時には「家賃の支払い能力があるか」を見る信用審査が行われます。支払い能力に問題のない人であれば、3日~1週間ほどで審査が終わります。

その後、仲介業者店舗などで賃貸契約を完了させると入居が可能となり、該当する賃貸物件の鍵を受け取ることができます。そのため即入居可となっている賃貸物件であれば、入居の申し込みから1週間ほどで契約・入居できるケースが多いです。

また不動産会社を通さずに直接オーナーとやり取りする場合、オーナーの裁量で審査なしで契約できる場合もあります。このケースだと、入居の意思を示して契約書や初期費用などを準備した段階で即入居が可能となります。

賃貸物件の仮押さえ予約はできない

このとき「賃貸物件の仮押さえをしたい」と考える人は多いです。目星をつけた物件をいくつか内見すると、気に入った物件が複数生じることがあります。物件の仮押さえができれば、複数の候補から入居する部屋をゆっくり選ぶことができます。

それでは、借主が賃貸物件を仮押さえすることはできるのでしょうか? 結論からいうと、基本的には「契約の意思が確定していない賃貸物件について、他の顧客に貸さないように押さえておくこと(=仮押さえ)」はできません。

物件の所有者からしてみれば、所持物件の空室期間が長いほど損失が出ます。そのため、借りるかどうかわからない顧客に対して、物件をキープしておくと大きな損失が出るリスクがあります。そのため賃貸物件の契約は早い者勝ちであり、あなたが気に入った物件をキープしておくことは不可能なのです。

ただこのとき「該当の賃貸物件を契約する意思は固まっているが、引越し日がまだ先である」という状況であれば、交渉次第で入居日を調整してくれるケースがあります。

例えば引越し日が7/1であるのに対して、入居したい物件が6/1に決まったとします。

前述のように、賃貸物件をあなたの都合で「とりあえずキープ」しておくことは不可能なため、希望の物件に入居するためにはなるべく早く申し込む必要があります。そのためこのケースの場合、通常だと6月半ばには審査・契約が終了し、家賃が日割り(物件によっては月割り)で発生します。

このとき、契約時にオーナー(または仲介業者)に相談すると、入居日(家賃の発生開始日)を最長で一ヶ月は猶予してくれるのが普通です。この場合だと、最長で7月半ばほどまで入居日を伸ばしてくれます。

ただ、家賃の支払い開始日の延長は最長でも1ヶ月ほどです。また、人気のある物件や繁忙期などには対応してもらえないケースがあるので覚えておきましょう。

・不動産業界でいう「仮押さえ」は入居申し込みを指す

なお不動産業者とやり取りしていると、スタッフから「仮押さえ」という単語を聞くことがあります。ただ、この場合の仮押さえは一般的にいう仮押さえ(=とりあえずキープ)ではありません。不動産業者がいう仮押さえは、顧客の入居申し込みを指します。

不動産業者からしてみれば、顧客から入居申し込みがあった物件は、顧客の信用審査などが終了するまで他の顧客が契約できないようにしなければなりません。つまり、物件を押さえておく(=仮押さえ)必要があるのです。

そのため不動産業者が仮押さえという表現を使ったとしても、あなたの希望する物件を自由にキープできるわけではないことを理解しておきましょう。

退去日を決めないまま物件探しを進めると、二重家賃が発生する

なお引越し時に物件探しをする際、気を付けなければならないのが二重家賃の発生です。

数ある引越し作業の中でも、物件探しは早い段階で取り掛かる人が多いです。次に住むところの選定は重要ですし、新生活へのワクワク感から楽しく取り組みやすい項目であるためです。

ただ旧居の退去日を決めないまま物件探しを進めると、家賃が二重で発生する期間が発生しやすいです。賃貸物件を退去する際には、最低でも退去する1ヶ月以上前に退去の意思を申告する必要があるためです。

例えば4/1から新しい部屋に住み始めるとした場合、3/1までには賃貸物件の管理会社へ退去の連絡を入れなければなりません。連絡が遅れて解約手続きが3/14になると、手続きの一ヶ月後である4/14までの家賃が発生します。

多くの場合、月半ばの退去では残りの家賃が日割り請求されます。ただ中には、家賃が月割りの契約となっているケースもあります。この場合、契約書に従って4月分の家賃をすべて支払わなければなりません。

また賃貸物件の中には、退去申告義務を退去日の2ヶ月前までや3ヶ月前までに設定しているケースもあります。この場合、退去を予告した日から少なくとも2ヶ月間または3ヶ月間は家賃が発生します。例えば、以下は2ヶ月前までに通知しなければいけない実際の賃貸契約書です。

このとき前述のように、引越し先の賃貸物件契約を開始すると1ヶ月後には家賃が発生するのが基本です。そのため引越し先が決まってから退去日を設定すると、家賃の重複期間(二重家賃)が発生します。

退去日の確定が遅くなるほど二重家賃の発生期間が長くなります。そのため引越し先の目星がついたら、なるべく早く旧居の解約手続きを行いましょう。

また二重家賃の発生を防ぎたいのであれば、先に退去日を確定して解約手続きを行った後、1~2週間ほどの短期間で新居の物件を決めましょう。

何ヶ月前から物件探しに動くべきか?

それでは引っ越しをする際、具体的にはいつ頃から物件探しに動くべきなのでしょうか?

物件探しのタイミングが早いと、その分だけ多くの物件を吟味することができます。そのため「物件探しを始めるタイミングは、早いほど良い」と考える人は多いです。

ただ前述のように、気に入った物件をキープしておくことができない以上、早すぎるタイミングで物件探しをする意味はありません。

例えば早すぎるタイミングで理想の部屋が見つかると、他の人に取られないように「退去予定日よりかなり前に賃貸契約する」「早めの契約は諦めて見合わせる」の二択を迫られることになります。

当然ながら賃貸契約を早めに行うと、二重家賃が発生しやすくなります。一方で契約を見合わせると、他の顧客にお目当ての物件を取られるリスクがあります。

物件探しは、早くから始めるほど良いとは限らないのです。そのため引越しをする際には、まず退去予定日を設定して、それに合わせて物件探しなどのスケジュールを組むといいです。

具体的には、以下のようなスケジュールで物件探しを進めましょう。

引っ越し予定日の二ヶ月前には居住エリアを絞る

引越しをする際、間取りや家賃、築年数などの条件から物件を決める人は多いです。当然ながら、これらの条件は満足のいく引越しのためには重要です。

ただ、より快適に生活するためには居住エリアの選定も大切です。どれだけ条件の良い物件に住むことができても、居住エリアに商業施設が少なかったり治安が悪かったりすると住み心地がかなり悪くなるためです。

実際に私が住んでいる区域は子育て世帯が多く、新築戸建てやマンションなどが立ち並んでいます。近隣には一通りの商業施設があり治安も安定しています。

一方で自宅から1km程度しか離れていない隣の区域は、飲み屋やアパートが多く、住民の騒音トラブルや盗難(自転車やタイヤなど)などが多発しています。隣接した区域であっても、居住環境が大きく異なるケースがあるのです。

そのため引越しをする際には、引越しの2ヶ月ほど前から引越し先地域の情報を集め、居住エリアの選定に取り掛かるといいです。このとき、いくつかのエリア候補を挙げておき、その中から希望条件を満たす物件の目星をつけておきましょう。

なお引越しの時期が3~4月の繁忙期である場合、このタイミングで引越し業者の訪問見積もりも済ませておきましょう。この時期は引越す人が多く、早めに動かないとトラックの予約を取れないケースがあるためです。

引越し一ヶ月前に希望の賃貸物件の内見を開始する

なおインターネットサイトなどで居住したい物件の目星がついたら、引越しの1ヶ月前には不動産会社への問い合わせを開始するようにしましょう。引越しの1ヶ月前になれば、物件の内見を実施できるようになります。

大家としては、すぐに入居してくれる人だけを相手にしたいを考えています。1ヶ月以内に引越し&入居&賃料支払いをしてくれる人を対象にするため、日本では一般的に「内見は引越し日(お金を支払ってくれる日)の1ヶ月前から可能」となっているのです。

このとき、例えば壁が薄く生活音が響きやすい部屋だと、他人の生活音が気になってしまったり、騒音を立てないように生活しなければならなかったりするため快適に過ごせません。

また理想の間取りであっても、天井が低かったり窓が小さかったりすると、圧迫感を感じやすいです。そのため間取りは広い部屋であっても、実際に訪れてみるとそれほど解放感がないケースがあります。

このような居住環境は、物件の内見を終えるまでわかりません。そのため物件サイトを見て引っ越し候補に挙げていた物件であっても、内見によって気変わりすることは多いです。理想の部屋に住むためには、内見が必須なのです。

そのため快適に暮らせる物件を見つけたいのであれば、引越し予定日の1ヶ月前に不動産会社へ連絡し内見予約を入れましょう。

また引越しが繁忙期かどうかに限らず、このタイミングまでに引越し日を決めておき、引越し業者の訪問見積もりを受けましょう。これ以上遅くなると、希望の日程でトラックを予約できなかったり費用が高くなったりします。

新しく住む賃貸物件が決まった後の引越し準備

なお新居や退去日などが決まったら、引越し業者を選び少しずつ荷造りや掃除、断捨離などを開始しましょう。

また、引越前に必要な行政手続きを済ませておくことも大切です。例えば市区町村外へ引越す場合、転出届・転入届など住民票の移動手続きが必要となります。

このとき、転出届は旧居のある地域の役所に提出する必要があります。そのため住民票の移動が必要となる人は、引越前に転出届の提出を済ませましょう。

これに加えて、子供がいる人は旧居住所の役所で児童手当の廃止手続きを行わなければなりません。この手続きを忘れると、児童手当の支給開始手続きが遅れて、手当をもらい損ねるため注意が必要です。

同棲や独り立ちは繁忙期の後に物件を探す

なお大学入学や新卒社会人、仕事の都合・転勤などで引越しをしなければならない場合、引越し時期を調整することはできません。一方で中には、いつ引越ししてもいい人もいるでしょう。このとき自由に引越し時期を調整できるのであれば、繁忙期を避けて物件を探すことをおすすめします。

3~4月は引越し業界の繁忙期となっており、仕事や学業などの都合で引越す人が多いです。そのためこの時期は空き物件が減りやすく、人気物件の競争率もかなり高いです。

一方で5~6月は新入学や新社会人、転勤などによる引越しが落ち着きます。また4月で退去した物件のクリーニングなどが終了するため、入居可能となる物件が多くなりやすいです。

また同様の理由で、10~11月も好条件の物件が充実しやすいです。9月は新年度に次いで転勤が多く、10月頃には空き物件が出やすいためです。

これに加えて、繁忙期を避けて物件探しをすると管理会社やオーナーなどが融通を効かせてくれやすくなります。例えば家賃の支払い発生日を遅らせたり初期費用の減額交渉を成功させたりしやすくなります。

そのため同棲や実家からの独り立ちなどで引越し時期を調整できる場合、繁忙期後に物件を探しましょう。この時期は引越し業者も安いため、好条件の物件へ費用をかけずに引越しやすくなります。

引越しの物件探しはタイミングが大切

引越し準備をする際、最初に物件探しをする人は多いです。確かに、新居の選定は引越しにおける最重要項目の一つです。また、物件探しの期間が長いほど良い部屋が見つかりそうに思えます。

ただ早くから物件探しを開始して良い部屋を見つけたとしても、あなたの意思で物件をとりあえずキープ(=仮押さえ)することはできません。気に入った物件に住むためには、巡り合ったタイミングで契約を進める必要があります。

しかし契約するタイミングが退去予定日より早すぎると、長期間の二重家賃が発生しやすいです。物件探しは「早く始めるほど良い」というわけではないのです。

そのため引越しをするとき、いつから探すのがいいかというと物件選びは引越し日の1~2ヶ月前からです。また、内見は1ヶ月前から可能です。これらを理解して、最適なタイミングで物件探しを行いましょう。


引越しのとき、必須となるのが「複数社から見積もりを取ること」です。引越し価格には定価がなく、引越し業者によって見積もり額はバラバラです。そのため複数の業者から見積もりを取るだけで、何万円も節約できます。

例えば、以下は5人家族の長距離引越しで見積もりを取ったとき、4社に見積もりを依頼しました。このとき、最高額は438,264円でした。一方、最も安い業者は198,720円であり、半額以下の料金になりました。複数業者へ依頼しないだけで、大きな損をすることになります。

ただ、自ら業者を探して電話をかけるのは大変です。そこで、必要な情報を入力するだけで完了する一括見積もりを利用しましょう。

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