これから引越しをするとき、誰もが安く引越し業者にお願いしたいと考えます。そうしたとき、割引制度を利用することを多くの人が考えます。

割引には早割や友人からの紹介制度、社員割引(社割)などさまざまです。それでは、こうした割引制度には意味があるのでしょうか。

一般的な買い物であると、割引は大きな意味があります。ただ、引越しに限っていえば割引制度はまったく意味がありません。なぜ、こうした制度が無意味なのかというと単純に引越し代が安くならないからです。下手をすると、高額な引越し費用になってしまいます。

この理由について確認し、適正価格で引越しを実現するために何をすればいいのかについて述べていきます。

引越しの割引制度は多い

引越しに関して目を向けてみると、さまざまな割引制度を設けていることがあります。例えば早割であったり、友人からの紹介制度だったりします。大会社であれば社員割引を設けていることがあります。

他にもインターネット割引や、クレジットカードに付帯する割引も存在します。不動産業者からのキャンペーン紹介により、割引されることもあります。

例えば、以下は三井住友カードの特典ですが、アート引越センターにお願いすることで引越し基本料金が30%引きになると書かれてあります。

こうした制度はあらゆる引越し業者で存在します。中小の引越し業者に限らず、以下のような大手引越し業者であってもさまざまな場面で割引を謳っています。

  • アート引越センター
  • 日通
  • サカイ引越センター
  • アリさんマークの引越車
  • ヤマトホームコンビニエンス(クロネコヤマト)
  • アーク引越センター

しかし、冒頭で述べた通りこうした割引は意味がありません。これは、なぜなのでしょうか。

引越し料金には定価が存在しない

多くの場合、商品には定価があります。「レストランでの食事」「スポーツ用品」「塾の受講料」など、既に値段が決められています。そして、実際に定価で売られています。

こうした定価のある商品であれば、割引は大きな意味があります。特定の価格から値引きしてもらうことで、安い値段で商品を購入できます。

それに対して、引越しでは定価が存在しません。すべて引越し業者の言い値です。

あなたも、「3人家族で引越しをするときの値段はいくらになるか?」と聞かれると困ってしまうと思います。おおまかな料金相場はあるものの、特定の決まった価格(定価)がないので答えることができないのです。

荷物の量や引越し場所への距離、オプションの有無(エアコン取り外し、荷物の吊り上げなど)によって値段は大幅に変わります。

3人家族の引越なら、10万円で済むことがあれば25万円以上になることもあるため、営業マンが訪問見積もりを実施しなければ値段を算出できませんし、このときの見積もり金額はすべて営業マンのさじ加減です。

業者によって値段はバラバラ

実際にいくつかの見積もり業者に依頼すればわかりますが、まったく同じ荷物の量で引越し内容が同じにも関わらず、価格差が2倍以上あるのは普通です。ある会社は9万円の見積もりだが、他の会社は4万円の見積もりを出すことがよくあるのです。

通常の買い物であれば、こうしたことは起こりません。しかし、引越しのように定価がなく言い値ですべて決まる業界は普通なのです。

いくら「20%OFF」と提示されていたとしても、元々の値段を高く設定されてしまったら、結局のところ値引きの意味がなくなります。例えば、適正価格が10万円の引越であったとしても、元値を12万5,000にされてしまえば、「12万5,000 × 0.8(20%引き) = 10万円」と値引きされていないことになります。

引越し業界ではこうしたことが日常的に行われています。そのため、割引制度を活用したとしても安くならないのです。

・見積もり後の割引はできない

もし、「実際の見積もり金額が出た後にクーポンを提示することで、見積もり後の価格から割引される」という制度であるなら意味があります。ただ、引越し業者ではそういうことを受け付けていません。

実際、先ほどのクレジットカード優待を細かく見ると、以下のように「見積もり後の割引は不可」とあります。

なぜ、見積もり後(定価)からの割引が無理なのかというと、引越しの割引は「言い値で成り立つ業界なので、最初の値段を高くすれば問題ない」というお客様にとって不都合な常識がまかり通っているからです。

割引は客を引っ張ってくるエサでしかない

割引の中でも、特に引越し業者はあらゆる媒体に「割引します!」と優遇措置を発表しています。

なぜ、こうしたことが可能なのかというとこれまで説明した通り定価が存在せず、値段設定を好きなようにコントロールできるからです。見積もり後の値引きには対応していないのがその証拠です。

要は、割引制度はお客さんを引っ張ってくるためのエサになるのです。そのため、あまり情報を知らない人は「30%も割引してくれるなら、最初からこの業者にお願いしよう」「早割や社員割引を使えば安くできる」と考え、一社だけに訪問見積もりを頼むようになるのです。

一社しか依頼しない場合、その業者は好きなように値段をつけて見積もりを出します。他の業者に仕事を取られることがなく、料金も自由につけるのです。

依頼したお客さんは「引越し代はこれくらい高いものなのか。ただ、割引してくれたから問題ない」と考えて契約してしまいます。そうした結果、異常に高額な契約を結び、「適正価格での引越し」が実現できなくなります。

必ず複数業者へ依頼しなければいけない

こうした裏事情を知っていれば、どのような対策を施さなければいけないのか理解できるようになります。

まず、一社だけに訪問見積もりを依頼するのはやめましょう。一社だけでは競争原理が働かず、不当に高い見積もり金額になってしまいます。

また、見積もりをもらった後に契約を迫られるようになると思いますが、「他社からも見積もり依頼をしているため、現時点では契約しない」とハッキリと伝えるようにしましょう。これを伝えるだけで2~3万円ほどその場で値引きされ、見積もり金額が修正されることはよくあります。

要は、それだけ高めに見積書が提示されていたわけです。

例えば、以下は4人家族での引越しをしたとき、アート引越センターとサカイ引越センターの見積書です。当然、引越し内容はまったく同じです。

繁忙期(4月)の引越であり、荷物も非常に多かったので値段は高くなっていますが、このように業者によって約24,000円もの開きがあることがわかります。

複数社に見積もりを依頼するだけで、すぐに引越しの値段が下がります。また、提案内容も良くなります。割引制度があるとはいっても、それにとらわれて一社だけにしか見積もりを出さないようにするのはやめた方が得策です。

見積もり価格が提示された後、さらに交渉する

本当に重要なのは事前の割引提示ではなく、「見積もりをもらった後に、そこからどれだけ値引きできるか」にあります。そのために最も有効な方法が複数社への見積もり依頼です。

ただ、他にも方法はあります。以下のようなことを見積もり後に伝えるようにしましょう。

・引越し日を変える

休日よりも平日の方が、確実に引越し料金は安くなります。休日の方が依頼は多く、平日だと人員やトラックが余っているからです。そのため、平日を含め他の日に引越し日を変えれば値段がどう変わるのか聞いてみましょう。

また、月末よりも月初の方が引越しする人は少ないです。同じ月でも、日にちが違えば値段が大きく変動します。

・時間を変える

引越し日の当日、トラックが到着する時間を変えてみましょう。最も値段が高いのは午前であり、午後便であると価格が安くなります。午後便では「前の引越が長引いた」などの理由で後ろにズレることが頻繁にあり、引越し時間を正確に決定できないからです。

また、どの時間帯になっても問題ないフリー便もあります。「フリー便なら値段はいくら?」と営業マンに聞くなどして、価格交渉を進めるようにしましょう。

電話やメールの見積もりではダメ

そして最もダメな見積もり依頼の方法として、電話やメールでの見積もりがあります。電話口や、メールのやり取り・メール画像だけで見積もりを出させる手法です。そうではなく、必ず営業マンに訪問見積もりをさせましょう。

電話やメールだけの見積もりであると、ほぼ確実に安い値段を提示されます。

ただ、残念ながら引越し日の当日になって「聞いていたよりも荷物が多い」「追加オプションが必要になった」などの理由をつけられ、追加料金が必ず発生するようになります。そのため、結果として金額が非常に高くなります。

一社だけに見積もりを依頼する人は引越しに失敗しますが、同じように電話やメールだけで終わらせようとする人も確実に失敗します。そのため、訪問見積もりは必須です。

定価がないからこそ、交渉が重要

引越し業者に依頼するとき、初めに定価がないことを知る必要があります。これを理解すれば、早割や友人からの紹介割引、社員割引(社割)、クレジットカードの割引優待、不動産業者からのキャンペーン紹介を含め、すべて意味がないことを理解できます。

「アート」「日通」「サカイ」「アリさん」「クロネコヤマト」など、あらゆる引越し業者が割引制度を設けています。ただ、これにつられて一社だけに見積もりを依頼することがないようにしましょう。

私の友人には、「これから引越しをするけど、社員割引があってサカイ引越センターだけに依頼している」と話していた人がいました。ただ、明らかに損をするので他業者にも依頼したらどうかと話をしました。

その人は一人暮らしであり、単身引越しだったのですが、他に2社へ見積もりを依頼することで13,000円ほど値段が安くなり、非常に喜んでくれました。

適正価格を引き出す方法は簡単です。「複数社へ見積もりを依頼する」「訪問見積もりのときに交渉する」だけです。これを実践するだけで、安い価格での引越しを実現できるようになります。


引越しのとき、必須となるのが「複数社から見積もりを取ること」です。引越し価格には定価がなく、引越し業者によって見積もり額はバラバラです。そのため複数の業者から見積もりを取るだけで、何万円も節約できます。

例えば、以下は5人家族の長距離引越しで見積もりを取ったとき、4社に見積もりを依頼しました。このとき、最高額は438,264円でした。一方、最も安い業者は198,720円であり、半額以下の料金になりました。複数業者へ依頼しないだけで、大きな損をすることになります。

ただ、自ら業者を探して電話をかけるのは大変です。そこで、必要な情報を入力するだけで完了する一括見積もりを利用しましょう。

引越し侍

引越し侍ではアート、サカイ、日通、アリさんなどの大手が登録しており、入力作業は30秒で終わります。無料で利用できるサービスなので気軽に利用できます。

さらに大手だけでなく、中小の引越し業者も登録しているので低価格な引越しが可能になります。最大15社まで見積依頼でき、できるだけ複数の業者の見積もりを取り、最安値で引越しをしたい人に適しています。

SUUMO引越し見積もり

一般的に引越しの一括見積もりでは登録直後、たくさんの電話がかかってきます。こうした電話が嫌でメールだけで完結したい場合、SUUMO引越し見積もりを利用しましょう。

SUUMO引越し見積もりでは「電話番号の登録が任意」なので、メールだけで見積もりの日程調節が可能です。電話が嫌な場合、リクルート社が運営するSUUMO引越し見積もりが最適です。

おすすめの人気記事

・引越し料金を値切り、最安値の引越しを実現する時期や価格交渉術

引越し価格を安くするためには、適切な方法が存在します。見積もりを比較するのは当然として、例えば休日ではなく平日の引越しにするだけで、1万円以上の値引きは簡単です。

また、同じ日であっても午前の引越しを午後にするだけでも値引きが可能です。こうした価格交渉術について解説しています。

引越し価格を安くする交渉術

・引越しの割引制度(早割、紹介割引、社員割引)に意味がない理由

多くの場合、引越し業者は割引制度を設けています。ただ、残念ながらこうした割引はまったく意味がありません。引越しには定価が存在しないからです。

この事実を認識すると、なぜ引越しで何社もの見積もりを取らなければいけないのか理解できるようになります。格安引越しをするためにも、知識をつけなければいけません。

引越し業者の割引は無意味

安い引越しを実現する、訪問見積もりのコツや流れ、事前準備

見積もりのとき、必ず訪問見積もりとなります。電話やメールだけの見積もりでもいいですが、ほぼ100%の確率で失敗します。追加料金が必要になり、非常に高額な引越しになるのです。

ただ、訪問見積もりではどのような流れになるのでしょうか。またどう接すればいいのでしょうか。引越し業者の営業マンが訪問に来たときの対処法について確認していきます。

引越し業者の営業マンへの対処法

見積もり比較サイトでの引越しはおすすめ!料金はいくら安いのか

実際に見積もりを依頼するとき、自ら業者を調べて電話するのは非常に手間です。そこで、ほとんどの人が一括見積サイトを利用します。

ただ、そのような見積もり比較サイトが適切なのでしょうか。利用方法に違いはあるのでしょうか。これらを明らかにしていきながら、おすすめの見積もり比較サイトを紹介していきます。

おすすめの見積もり比較サイト