結婚によっていまの仕事を退職して引越しをするとなると、多くの手続きが必要になります。単なる結婚でもやることが多いにも関わらず、そこに退職に伴う作業が加わります。

このときは失業保険の申請をしたり、仕事探しをしたりします。専業主婦になるので仕事探しをせず会社に就職しない場合であっても、確定申告をする必要があるなど必ずやるべきことがあります。

結婚による退職では行うべきことがたくさんあるため、何をするべきなのか不安に思う人が多いです。そこで、ここでは何に注意して引っ越し作業をすればいいのかについて確認していきます。

県外・遠方へ引越しする結婚では退職を伴う

結婚では二人が一つの家に住むようになるため、女性が男性の住んでいる場所(または男性が女性の住んでいる場所)に引越しをすることになります。それぞれの家が近い場合、単に引越しをするだけで問題ありません。

一方で遠距離恋愛での結婚となると、どちらか一方の住んでいる場所へ引越しするのに伴って退職するのが普通です。遠方にある地方からいまの会社に通うのは現実的ではないため、遠距離恋愛をしていた人が結婚によって引越しする場合、会社を辞めるのです。

このときは引越しをスムーズにするため、必要な手続きを理解するようにしましょう。具体的には、以下のような手続きをしなければいけません。

住民票の変更、婚姻届の提出

役所で行う手続きとして、住民票の変更(住所変更)や婚姻届の提出があります。同じ市区町村内での近場の引越しであれば、転居届を出します。ただ、県外の遠方へ引越しするときなど、異なる市区町村へ住民票を移す場合は転出届と転入届を出さなければいけません。

いま住んでいる地域の役所に出向いて転出届を提出し、新たに住む場所で転入届を出すのです。これにより、住民票を移せるようになります。

近くの役所(市役所や区役所など)に出向けば、転出届や転入届を出すための窓口があります。以下のように窓口には転出届・転入届の紙が置かれているため、ここに必要事項を記載して提出するだけで問題ありません。

転出届は引越し日の2週間以内であれば提出することができます。引越し日が近くなった場合、早めに書類を提出するようにしましょう。

・転入届と婚姻届を同時に出すと楽できる

結婚するのであれば、同じように出すべき書類として婚姻届けがあります。私もいまは結婚していますが、以下のような婚姻届を役所に出しました。

婚姻届では証人(親など)の署名をもらう必要があるなど、事前に準備するべきことがあります。結婚記念日(=婚姻届の提出日)にこだわりをもっている人は多いため、結婚記念日にしたい日になって「婚姻届けが完成していない」という状況は避けるようにしましょう。

このとき、婚姻届の提出は転入届と同時にすると楽です。婚姻届を提出する場合、多くの場合で女性側の名字が変わります。これによって役所での手続きが発生することになりますが、転入届と同時であれば役所に行く回数を最小限に抑えられるようになります。

つまり、以下のような流れにすると楽です。

  1. 引越し日を決め、転出届を出す
  2. 引越し後、新居にある役所で転入届と婚姻届を出す

婚姻届については、どの役所で出しても問題ありません。人によっては、記念のために沖縄旅行中に沖縄の役所で婚姻届を提出する人もいます。日本の役所であれば、どこでも婚姻届けを受け入れてくれます。

健康保険証の変更

病院を受診するときに必ず必要になるものとして健康保険証があります。退職する場合、必ず保険証を返納しなければいけません。

ただ、このときは退職後の状況によって健康保険証の手続きが異なってきます。

・転職先が決まっており、退職後はすぐに働く

引越し前から転職活動をしていたため、新居へ引越しをした後すぐに働き始める場合、新たに就職した会社が社会保険の加入手続きをすべて行ってくれるため、健康保険証が届くのを待つだけになります。

・旦那の扶養に入る(夫がサラリーマンの場合)

すぐに仕事探しをせず、就職するつもりがない場合、婚姻届けを出した後は旦那の扶養に入ることになります。このとき、夫がサラリーマンであれば社会保険に加入することができます。

扶養に入るための手続きをして、旦那の会社に「結婚するので専業主婦の妻を社会保険に入れたい」ことを申請すれば、後日に健康保険証が届くようになります。保険料の支払いなく社会保険に加入できるため、非常に優れた方法になります。

・任意継続するか国民健康保険に変える

旦那が自営業・フリーランスなどの個人事業主である場合、「会社員の旦那の扶養に入り、ついでに社会保険まで加入する」という方法を取れません。

その場合、「退職前の社会保険を任意継続する」または「国民健康保険に切り替える」の2つから選ぶことができます。

基本的には社会保険の方が内容は手厚くなり、保険料の支払額も少なくなります。そのため、特別な理由がない限りは任意継続を選択するようにしましょう。社会保険の場合、全国にある協会けんぽ(全国健康保険協会)の窓口で任意継続の申請が可能です(健康保険組合や共済組合の場合も同様です)。

また、国民健康保険に切り替える場合は市区町村の役所へ出向くといいです。国民健康保険に関する窓口があるため、そこで申請手続きをするのです。

「転職活動をしており、就職先が決まっている人」「専業主婦になるが、夫が個人事業主の人」など、その人の状況によって健康保険証の手続きが異なります。どの健康保険に加入すればいいのか事前に理解するといいです。

年金の手続き

健康保険証と同様に必ず行うべき手続きが年金です。このとき、健康保険証と同じように「転職先が決まっている人」「専業主婦になると同時に、会社員の旦那の扶養に入る人」であれば、会社に伝えるだけで厚生年金の加入手続きをすべて行ってくれます。

ただ、夫が個人事業主であったり、起業のためにフリーで活動する予定だったりする人の場合、国民年金に切り替えなければいけません。

退職した会社から年金手帳をもらった後、引越し先の住所にある市区町村の役所に行けば国民年金の手続きをすることができます。

運転免許証の住所・氏名変更

住民票を移して新居に住み始めた後、婚姻届の提出まで済んだのであれば、今度は運転免許証を変えるようにしましょう。

特に女性の場合、氏名変更があった場合は必ず運転免許証を更新しなければいけません。そのため、役所での住所変更と氏名変更の手続きが終わった後、一気に変えるといいです。

運転免許証は新住所の管轄警察署に行けば変更できます。このとき、住民票が必要になります。転入届を出した後、住民票を入手して警察署へ出向くといいです。

失業保険の手続きを行う

こうした細かいことはあるものの、忘れてはいけないものとして失業給付があります。

結婚による退職をするとき、既に転職活動を済ませていて再就職先が見つかっている人は少数です。特に県外の遠距離へ引越しをする場合、いまの職場で働きながら遠方にある新居での仕事探しをするのは現実的ではありません。専業主婦ではなく働く意思のある人であっても、引越し後に就職先を探すのが普通です。

こうしたとき、必ず申請するべきものが失業保険です。会社都合の退職ではなく、結婚や妊娠・出産など自己都合で会社を辞める場合であっても失業給付を受けることができます。

失業保険の申請はハローワークで行うことができます。引越し後、新居の住所地にあるハローワークで申請するようにしましょう。

このとき、ハローワークへ行くときに必要な書類として離職票があります。辞めた会社から送られてくるものが離職票であり、必ず必要になります。以下のようなものが離職票です。

出典:ハローワーク

もし、前の会社との関係が悪く離職票をもらえない場合、ハローワークから「離職票を発行する」ように促してもらうといいです。

・意外と忘れがちな銀行口座

結婚するとき、必要な手続きとして意外と忘れがちなものが銀行口座です。婚姻届を提出した後、早めに新姓での銀行口座を開設するようにしましょう。

改名している場合、失業給付を受けるときに旧姓の銀行口座は受け付けてくれません。必ず新しい名前の銀行口座が記載された通帳を提示するようにしましょう。

なお旧姓のままであるなら、いま持っている銀行口座でハローワークに対して失業保険の申請ができます。しかしながら、「失業給付の受給中に結婚・改名をする」となると、改名した場合の届け出や新たな銀行口座の提出をハローワークで行わなければいけないので非常に面倒になります。

失業保険を受け取るための条件

ただし、失業保険を活用するためには条件が必要です。まず、以下のような人でなければいけません。

・雇用保険に加入している

サラリーマンであれば、雇用保険に全員が加入しています。パートで働いている人であっても、週20時間以上を働いている人は雇用保険に加入することになります。そのため、パートをしていて辞める場合も給付の対象になります。

離職する前の2年間、12ヵ月以上で雇用保険に入っている場合、雇用保険の制度によって失業給付を受けることができます。

・再就職の意思があり、仕事探しをしている

ハローワークは仕事をあっせんする場所ですが、失業保険は再就職の意思がある人だけが受け取ることができます。つまり、再就職の意思がない人は失業保険を受け取ることができません

退職後に「専業主婦として家庭を守ることを考えている」「フリーランスとして活動しようとしている」などの人はどこかの会社に再就職をするわけではありません。そのため、ハローワークで失業保険の申請をしても受け付けてもらえません。

あくまでも再就職の意思があり、仕事探しをしている人が対象になります。

なお、遠方への引越しで実際に再就職先を探すとき、「結婚による引越し」は退職理由としてまったく問題ありません。不利になることはないため、履歴書や面接などで素直に退職理由を伝えるようにしましょう。

結婚による県外・遠方への引越しでは特定理由離職者になる

なお、遠距離恋愛などによって結婚し、遠方へ引越しをするときは特定理由離職者となります。会社の倒産や解雇など会社都合で退職した人は特定受給資格者に該当し、結婚による引越しは特定理由離職者です。

特定理由離職者では、失業保険の給付期間は90日(雇用保険への加入期間が1~10年未満の場合)です。一方で会社都合の辞職である特定受給資格者では、年齢などにより給付期間がより長くなります。ただ、結婚での引越しではそうした給付期間の延長などの対象にはなりません。

・特定理由離職者の失業給付 

雇用保険の加入期間1年未満1~10年未満10~20年未満20年以上
給付日数90日120日150日

結婚による失業保険の給付を受けるとき、雇用保険への加入期間が1~10年未満の人が多いです。そのため、一般的に90日の給付日数があると考えてください。

なお、失業保険の給付中は扶養に入れないことを理解しましょう。給付を受けるのは仕事探しをして就職することが前提なので、扶養(誰かに養ってもらっている状態)になることはできません。

・妊娠、出産の場合は受給期間延長できる

ただ、中には結婚によって妊娠が発覚することがあります。このとき、いくら再就職先を探そうと履歴書を送ったとしても、すぐに妊娠・出産や育児が待っているので企業は受け入れてくれません。

そうしたとき、ハローワークで失業給付の受給期間延長を申し出るようにしましょう。これにより、妊娠・出産や育児が終わった後に失業保険を活用できるようになります。

引越し後に行うべき年末調整、確定申告

会社に勤めているときであればすべて会社が代行してくれたものの、結婚退職によって自分で行うとなると、考えなければいけないものがこれだけたくさんあります。しかし、他にも面倒な作業が存在します。

地方など遠方への引越しをしたあと、仕事探しに成功して再就職した人の場合、年末調整の書類を会社に提出しなければいけません。このとき、どこの住所を記載すればいいのかというと、「翌年1月1日に住んでいる場所の住所」を記載するようにします。これだけ覚えておけば問題ありません。

一方で専業主婦やフリーランスになる人の場合、年末調整を会社が行ってくれるわけではないため、今後は自ら申請しなければいけません。つまり、確定申告が必要となるのです。専業主婦で扶養に入る人であっても、退職した初年度は確定申告をするようにしましょう。

専業主婦になる人が確定申告の作業を省いてもいいですが、それでは収めすぎた税金は返ってきません。これでは不公平なので、必ず確定申告をして税金を取り戻すようにしましょう。辞めた会社から源泉徴収票をもらい、確定申告の時期に近くの税務署で作業をするだけなのでそこまで難しくありません。

事前に知るべき税金の問題

転職活動をしていたり、退職後にすぐ再就職先がみつかったりする場合は問題ありませんが、専業主婦など収入が途絶えた人に重くのしかかってくるものが税金です。

よくある支払いは住民税です。住民税とは、「市民税・町民税(市町村への税金)と県民税(都道府県への税金)の合計」です。

1月1日から12月31日までの所得に対して、翌年1月1日に住んでいる住所(住民票のある住所)の自治体に支払う税金が住民税です。そのため、遠方の地方へ引越ししている人であれば、以前の住所の自治体に住民税を支払うことになることはよくあります。以前の自治体から住民税の催促がきても、それは二重課税ではありません。

前年の所得をもとに住民税が算出されるため、たとえ専業主婦であったとしても前年に収入があったのであれば住民税は高額になります。

ただ、これは日本国民全員が負担する義務であるため、退職の初年度については税金負担が大きくなるものだと理解して耐えるしかありません。

結婚退職での手順を理解して引越しをする

結婚するだけでもやることが多いです。ここに退職まで加わるとなると、さらに作業が増えてしまいます。ただ、遠距離恋愛を含め遠方へ引越しをするのであれば、どちらか一方の退職は必然なので仕方ないことでもあります。

このときは住民票の住所変更や婚姻届による氏名変更を含め、引越し後の「転入届を出すタイミングですべての書類を提出し、一気に片付ける」など面倒でない方法を取るといいです。

さらに、運転免許証の変更や新たな姓での銀行口座の開設を含め、できることを先に行うようにしましょう。

また、退職したのであれば失業保険について理解する必要があります。失業給付には条件があり、給付を受けるにしても新たな氏名が記載された銀行口座の通帳が必要などルールがあります。これを理解したうえで準備を進めなければいけません。

結婚をするにしても、新たな生活が始まると同時に大きな不安をもつのが普通です。ただ、あらかじめ何をするべきなのか理解しておけば怖くありません。やることリストを作っておき、不安を最小限にしながら引越し準備を進めるようにしましょう。


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