入居中に部屋を傷つけてしまった場合、退去時に部屋の修繕費用を支払うことになります。ただ引越しにはお金がかかるため、退去費用はなるべく抑えたいところです。

このとき、床の傷を補修するアイテムはホームセンターなどで市販されています。そのため中には、「傷の補修を自分で行って、修繕費用を浮かせよう」と考える人もいるでしょう。

それでは、賃貸物件の床に付いてしまった傷を自分で直しても問題ないのでしょうか? また自力で床の傷を補修する場合、どのようにして行えばいいのでしょうか?

ここでは、賃貸物件の床に傷が付いてしまったときの対処法と補修方法ついて解説していきます。

床の傷・跡を自分で補修しても問題ないのか?

どれだけ気をつけて生活していても、家具を倒したり硬い物を落としたりなどの不注意によって床に傷・跡が付いてしまうことがあります。

故意でなかったとしても、あなたの行動で床を傷つけてしまったのであればあなたが費用を負担して傷を元に戻す(=修繕する)ことになります。床の傷が大きい場合、床材の張替え作業が行われます。

ただ、床の張替えには多大な費用がかかります。そのため床の傷が小さい場合、傷を埋めるだけで修繕を済ませるケースがあります。

このとき、床の傷を補修するアイテムはホームセンターで手に入れることができます。そのため「可能であれば小さな傷は自分で補修して退去費用を抑えたい」と考える人は多いです。

結論からいうと、目立たないように補修できるのであれば、傷ついた床を自力で補修しても問題ないケースが多いです。

補修後の傷が目立たない状態になっていれば、退去の立会い時に気付かないケースがあります。当然ながら、立会い時に大家・管理会社が床の傷に気付かなければ修繕費用を請求されません。

また大家が床の補修跡に気付いたとしても、目立たない状態に補修されていれば問題視しないケースもあります。特に築年数が経過している物件だと、さまざまな箇所に小さなダメージがあるのは普通です。そのため大家が補修跡を見つけても、修繕費用を請求しないケースが多いです。

このとき、市販の床リペアキットは素人でも簡単に扱えるように工夫されている製品がほとんどであるため、小さな傷であれば問題なく補修できるケースが多いです。退去費用を少しでも抑えたいのであれば、床の傷の補修に挑戦してみるといいです。

自力で補修しない方がいいケース

ただ中には、自力で床の傷を補修しない方がいいケースもあります。例えば契約書に「自分で補修してはいけない」と明記している場合です。

契約書にこのような記載がある場合、床の傷を自分で補修するのは契約違反となります。自分で床の傷を補修したことが判明すると違約金が発生するリスクがあるため、自分で補修するのは避けた方がいいです。

また床の補修跡が目立っている状態だと、かえって修繕費用が高くなる可能性が高いです。内装修繕のプロであっても、一度修繕した傷をきれいに直すことは難しいためです。

床の補修跡が目立つようだと、床の張替えなどが行われます。つまり、床の修繕がへたくそだと床を張替えなければならず、余計な費用がかかるリスクがあるのです。

このようなことから床の傷が大きく、目立たないように修正するのが難しい場合も自力で補修しない方がいいです。

床の傷を直さなくても問題ないケース

また床に付いてしまった傷の中には、あなたが修繕費用を負担しなくてもいい(=補修する必要がない)ケースがあります。具体的には、以下のようなケースです。

  • パッと見ではわからない細かい傷
  • クッションフロアの家具跡
  • 耐用年数を超えて使用されている床材

以下で詳しく解説していきます。

・パッと見ではわからない細かい傷

大家は次の入居者にきれいな部屋を貸し出す義務があるため、入居前に部屋を確認して必要に応じて修繕します。

ただ、大家や管理会社は入居前の部屋の状態を完璧に把握しているわけではありません。そのため一目でわからない傷は、前回の退去の立会い時に気付かなかった(=入居前からある)可能性があります。そのため、床の細かい傷については修繕費用を請求されないケースがほとんどです。

したがってよく見ないとわからないような細かい傷は、補修せずにそのまま退去しても問題ないといえます。

・クッションフロアなどの家具跡

クッションフロアや畳などは、フローリングと異なり弾力性があります。そのため、家具などの重い物を長期間置いていると跡が付いてしまいやすいです。

ただクッションフロアに家具の跡が付いていても、あなたが修繕費用を負担する必要はありません。家具を置くことは生活する上で必須であるため、「家具の跡の修繕費用を借主が負担する必要はない」と原状回復ガイドラインで定められているためです。

実際、以下は国土交通省が公開している原状回復ガイドラインです。

ここには家具の設置による床やカーペットのへこみ、設置跡は賃貸人(大家)の負担で修繕する必要があると記されています。

そのためクッションフロアや畳などに家具の設置跡が付いていても、あなたが補修する必要はありません。退去の立会い時に「家具を置いていた」と説明しましょう。

・耐用年数を超えて使用されている床材

また原状回復ガイドラインでは、原状回復にかかる費用は耐用年数を考慮することが定められています。そのため床材の耐用年数を超えて使用している場合、補修しなくても修繕費用をあなたが負担することはありません。

例えば、クッションフロアやカーペットなどの耐用年数は6年ほどとされています。参考までに、以下は国土交通省による原状回復ガイドラインです。

ここには畳床やカーペット、クッションフロアは6年で残存価値が1円となると記されています。つまり、使用開始から6年経過していれば床材の価値(=修繕費用)は1円となります。

そのため居住から6年経過していれば、これらの床に傷があったとしても修繕費用を負担する(=床の傷を補修する)必要はありません。

また居住6年未満であっても、入居時に床材を取り換えていなかったようであれば修繕費用の請求金額が低い可能性が高いです。このような場合も、わざわざ自分で補修する必要はないでしょう。

なお例外的に、フローリングの部分張替えでは経年劣化が考慮されません。そのためフローリングの傷によって部分張替えの必要が生じると、あなたが全額負担して修繕を行うことになります。このような場合、自力での補修を検討する余地があるといえます。

床補修のコツや注意点、実際の修繕方法

なお床の傷を自分で補修する道具は、ホームセンターのDIYコーナーなどに陳列されています。床の補修アイテムは大きく分けて「パテ」「クレヨン」「マーカー(ペン)」の3種類があります。

これらのうちパテは、液体のりのような形状となっています。補修パテは深い傷の補修に適しており、床の傷を埋めるのに使用します。

また、クレヨンは傷の穴埋めと着色の両方を行うことができます。傷口にクレヨンを擦りながら塗り込めば穴を埋めることができますし、通常のクレヨンのように使うことでパテの上に模様を書き足すことができます。

一方でマーカーは、一般的な水性ペンと同じような書き心地の製品です。そのため木目を書き足すのには最適である一方、床の傷そのものを補修することはできません。床の補修マーカーは「マニキュア」「補修ペン」などの名称で販売されています。

3種類の補修アイテムのうち、クレヨンやパテなどは製品の色がそのまま発色します。そのため床と同じ色(または似た色)のクレヨン・パテを選べば、床の傷を目立たないように埋めることができます。

一方でマーカーだと、ペンに表記されている色よりも濃く発色すると思った方がいいです。太陽光や明かりの下だと、表示色が実際の色よりも明るく見えるためです。

参考までに以下は、一般的な賃貸物件で使用されているフロア材に補修マーカーを使用した写真です。

四角で囲んである部分は光が当たって明るくなっており、実際に使用したときの色よりも明るい印象となっています。そのため表示色をイメージしてマーカーを使用すると、想定していたよりも濃く発色してしまい、傷が目立ってしまいます。

これに加えて、床に直接マーカーで着色すると修正できません。マーカーだけで床の傷を補修しようとすると、失敗してもやり直すことができないのです。

そのため床の傷が小さかったとしても、マーカーのみで補修するのは避けるのが無難です。マーカーはあくまで木目の書き足しに使用し、傷の補修はクレヨンやパテなどで行いましょう。

なおクレヨンやパテで埋めた部分にマーカーを使用すれば、着色に失敗しても失敗部分を削って埋め直せばやり直すことができます。

市販の床補修キットで補修する流れとコツ

ただこのとき、現物(床)と見比べながら補修剤を購入することはできません。そのため、「床と近い色である」と思って購入しても合わないケースは多いです。

また補修する床がフローリングやフローリングを模したクッションフロアの場合、床と同じ色であっても1色のみで補修するとかえって補修箇所が目立ちやすくなります。

そのため傷ついた床を自分で補修する際には、床に近い色が複数色入った補修セットを購入することをおすすめします。例えば以下は、ホームセンターの売り場です。

この補修セットには傷の穴埋めに使用できるクレヨンと木目を書き足せるマーカーが5色ずつ入っています。これだけあれば色の微調整が可能となり、床の傷を違和感なく補修しやすくなります。

なお床の修繕には、補修剤以外にも以下のようなアイテムが必要となります。

  • ドライヤー
  • マイナスドライバーやスプーン
  • 乾拭き用雑巾やティッシュ

以下で詳しい補修方法について解説していきます。

・浅い傷を補修する場合

擦り傷のような浅い傷を補修する場合、床に似た色のクレヨンとマーカーが1~2本あれば補修可能です。塗ったクレヨンはへらなどで擦れば取ることができるので、いくつかのクレヨンを床に試し書きして、もっとも床に近い色を使用しましょう。

床とまったく一緒の色がない場合、もっとも床に近い色のうち薄い方を補修に使用しましょう。床より薄い色で傷を埋めても、マーカーや濃い色のクレヨンで木目を書き足せば自然な仕上がりとなります。

床に近い色を1色選んだら、床の傷部分にクレヨンを押し込みながら刷り込んで傷を埋めます。このとき、傷をクレヨンで埋める際には、傷を大きく覆うように塗りつぶします。例えば以下のようになります。

このようにして広めにクレヨンを塗り広げた後、傷の周りのクレヨンを付属のへらで除去します。へらを床に垂直に当ててまっすぐ手前へ引くことで、余分なクレヨンのほとんどが取れます。

その後、木目の溝に入り込んだクレヨンをへらの角を使って除去しましょう。木目に沿って取り除くことで自然な仕上がりとなります。へらについたクレヨンと床のクレヨンカスはティッシュや乾いたぞうきんで拭き取りましょう。

このとき室温が低めだとクレヨンが冷えてしまい、傷にうまく入っていきません。そのためクレヨンが硬く穴を埋めづらいようであれば、クレヨンをドライヤーで温めながら使用しましょう。以下の写真のように利き手でクレヨンを持ち、反対の手でドライヤーを持って作業するといいです。

その後、クレヨンで埋めた補修跡が目立つようであれば、マーカーを使用して木目を書き足しましょう。木目の線を埋めるように線を書き足せば自然に見えるようになります。参考までに、以下はマーカーで木目を書き足した傷跡です。

この状態を遠くから撮影したのが以下の写真です。

このように、遠目ではほとんどわからない状態になりました。退去の立会い時には床を間近で見ることはほとんどないため、この程度まで補修できれば問題ありません。

・深い傷を補修する場合

次に、少し深くて大きい傷を補修する場合です。参考までに、以下のような状態の傷を補修していきます。

このような傷を補修する際には、まず傷のまわりの盛り上がりを平らにする必要があります。傷を埋めても傷周辺が盛り上がっていると目立つためです。

傷回りの盛り上がりはスプーンの丸い部分を押し当てて補修しましょう。盛り上がり部分を削り取ろうとすると傷が大きくなるため注意が必要です。

傷回りの盛り上がりを平らにしたら、次は傷を埋めます。このとき、クレヨンだと深めの穴をきれいに埋めることは難しいので、パテで傷の穴埋めを行いましょう。

パテで傷を埋める際には、傷を覆うように多めにパテを出します。例えば以下のような感じです。

その後、床に付属のへらを垂直に立て、余分なパテを取り除きます。

このようにして穴をパテで埋めたら、傷のまわりに合わせて色や模様などを調整します。

ただ、穴埋めパテはクレヨンと異なり、乾くまでに少し時間がかかります。パテで穴埋めした直後にクレヨンやマーカーなどを使用すると、パテが取れてしまいます。

パテが乾く時間は製品によって異なり、完全硬化前でも作業は継続できますが、最低でも1時間ほどは置いた方がいいです。

なおパテが乾くと、色が少し薄くなったりくぼんだりするケースがあります。参考までに、以下は傷部分に塗ったばかりの床補修パテです。

このように、塗ったばかりの床補修パテは床とほぼ同じ色となっています。これに対して以下は、床の傷に塗って1時間が経過した床補修パテです。

このように、パテの色が薄くなって床とは異なる色となっています。また写真だとわかりづらいですが、平らだったパテが少し沈んで段差が生じています。この状態だと、床を補修したことが一目でわかってしまいます。

そこでパテが乾いて色が薄くなったり沈んでしまったりしたら、床に似た色のクレヨンで色と高さを補修しましょう。浅い傷を直すときと同様に、クレヨンをドライヤーで温めながら広めにクレヨンを乗せ、余分なクレヨンをへらで取り除きます。

以下は、パテが乾いてへこんだ部分をクレヨンで埋めた状態です。

このようにして穴を埋めた後、マーカーで木目を書き足したのが以下の写真です。

このようにして、遠目から見て目立たない程度まで補修できれば作業完了です。

小さな床の傷を自力で補修して、修繕費用を浮かせる

あなたの過失でついてしまった床の傷は、目立たないように補修することで退去時の修繕費用を抑えることができます。

ただ一目で補修したことがわかる状態だと、床を張替えなければならずかえって退去費用が高くなる可能性があります。そのため自然な補修が難しい大きな床の傷は、自分で補修しないのが賢明です。

また契約書に「補修を自分でしてはいけない」と明記されている場合、補修したことがばれると違約金が請求される可能性があります。この場合も床を自分で補修しないようにしましょう。

一方で小さな床の傷であれば、ホームセンターに売られている床補修キットで目立たないように補修できます。傷を補修クレヨンや補修パテで穴埋めし、床補修マーカーで木目を書き足しましょう。このようにして床の補修を実行し、退去費用を安く抑えましょう。


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