引越しをするとき、水生生物を飼っている人は「どのように運搬すれば良いのか」と悩むことが多いです。特に温度変化などストレスの影響を受けやすい熱帯魚なら、なおさら注意が必要です。
熱帯魚に限らずそのほかの生体でも、水槽の引越しでは温度管理や酸素の確保など、慎重に移動させる必要のある生き物は多いです。
それでは水生生物は、どのような方法で引越しすれば良いのでしょうか。そこで今回は、水槽と魚の引越し方法について解説します。
もくじ
生体を含む引越しでは、引越し先のレイアウトを考えておく
水生生物の引越しで一番先にやるべきことは、引越し先の環境をくまなく確認しておくことです。確認すべき点は、主に以下の4つです。
- いま使っている水槽が引越し先に入るのか
- 水質管理機材を使用するための電源があるか
- 日光の当たり具合はどうか
- 床が水槽の重さに耐えうるか
熱帯魚に使用する標準的な水槽の長さは60cmです。この水槽に水を入れると、重さは60kgほどになります。これくらいの大きさの場合、重さ的には問題ないので確認すべきは電源と日光くらいです。
しかし、これより大きい90cmの水槽になると、重量が180kgを超えます。建築基準法では1㎡当たり180kgまでは耐えうるよう建築することが義務付けられています。しかし「それ以上の重さに耐えうるか」は建物によって違います。
したがって90cm以上の水槽を入れる場合は、電源、日光の当たり具合と共に耐荷重について施工主に確認することが大事です。
業者に依頼するか、自力で運ぶかを選ぶ
こうして引越し先の環境をチェックしたら、生体や水槽の運搬の方法について検討します。運搬の仕方は、自力で行う方法と業者に依頼する方法の2種類があります。
自力で行えば費用が安く済みますが、最悪の場合、生体が死んでしまうこともあります。引越し前後の様々な準備も自分でやることになります。一方、業者に頼めば特にやることはありませんが、費用はかさみます。
どちらが良いかは、生体に関する知識の有無や移動距離、種類、予算により一概に言えません。ただ、楽なのは業者に任せることです。
業者による引越しで梱包・運搬してもらう
移動が長距離だったり、魚の数が多かったりすると、「無事に魚を運ぶことができるか」を考えると、とても心配になります。
このようなとき、代金は発生しますが専門の業者に頼むことを検討してみると良いです。専門業者であれば、温度や酸素の管理をしながら安全に運搬してくれます。
しかし実際のところ、水生生物を運搬してくれる引越し業者はそう多くはありません。
事実、私が大手引越し業者に電話してみたところ、ほとんどの業者の回答は「水生生物は取り扱っていません」とのことでした。水生生物はデリケートな生き物であるため、死んでしまうなどのトラブルを考えて業務を行っていないところが多いです。
参考までに、実際に電話したのは以下の6社です。
【水生生物の運搬が不可である引越し業者】
- ハート引越しセンター
- サカイ引越しセンター
- 日本通運
- アート引越しセンター
- アーク引越しセンター
- ハトのマークの引越センター
業者としても、リスクを背負ってまで水生生物を運搬したくないのです。
このような中、私が確認した中でサイトに「熱帯魚なども地域によってはお受けできます」と掲載している業者ありました。それが「ヤマトホームコンビニエンス」です。
さっそく問い合わせたところ、熱帯魚の運搬は可能でした。委託業者が取り行うそうです。ただし委託業者が関東にあるため、関東圏以外の人はサービスを受けることができないとのことです。全国対応ではないことに注意が必要です。
そのほか、魚の引越し専門の業者もあります。例えば、以下のような業者です。
配管が必要なオーバーフロー水槽の引越しも可能です。フィルターなどの機材も運んでくれるほか、不要品の引取りや処分、清掃やレイアウトのサービスもあります。
しかしサイトをよく読んでみると、ここでも営業エリアには限りがあります。
このように水生生物の運搬は営業エリアが限られるケースが多いです。専門業者を探すとき、必ず営業エリアを確認するようにしましょう。このような中、全国の輸送に対応しているのが「アクア便」です。
ここでは金魚、熱帯魚、メダカ、ヌマエビ、海水魚などあらゆる水生生物の引越しに対応しています。
値段は水槽の大きさと移動距離、種類によります。金魚より熱帯魚の方が、1割程度値段が高いです。参考までに値段は以下の通りです。
【条件】
- 横浜から大阪までの引越し
- 水槽は60×30×36cm
【料金】
- 金魚:78,600円
- 熱帯魚:86,200円
専門の業者は水温、水質、酸素を管理しながら運んでくれます。また引越し後は、清掃などのサービスもあります。
ただし人によっては「安全に魚を移動させたいけど、そこまでお金をかけたくない」と考える人も多いです。そのような場合、生体の梱包のみお願いすると良いです。
この場合、生体の運搬や引越し後の水槽のレイアウトなどは自分で行うことになりますが、すべてを業者に任せるときに比べて、値段は4割ほど安くできます。あるいは自分でやりたい作業(水槽の水入れやろ過装置のセッティングなど)を業者のサービスから省いてもらうことで、値段を安くすることも可能です。
出典:アクア便
少しでも引越し費用を抑えたい場合は、検討してみると良いです。ただ、あなたが専門知識を持っていない場合、すべてを業者に依頼しないケースだと安全度が低くなることは理解しましょう。
自力で魚を引越しさせる方法
しかし思うような専門業者が見つからない場合は、自分で魚を引越しするしか方法はありません。
どの種類の生体でも、引越しの事前準備としてすべきことがあります。それは、水換え、餌切り、水温調整の3点です。
【水換え】
- 水換えに慣らすため、1ヶ月前から少しずつ水換えをしておく
- 水が変わることによるストレス軽減のために行う
- 特に熱帯魚は、急激な変化に弱いため必ず行うようにする
【餌切り】
- 移動中に魚が糞をして、水を汚すのを防ぐために事前に断食させておく
- 目安は引越しの3日前(大型の魚は7日前)から
- 水が糞で汚れると、アンモニア中毒になる場合もあるため重要な作業
【水温調整】
- 季節に合わせて、常温の5度以内に調整しておく
- 1週間程度かけて少しずつ調整していく
- 引越しに伴う水温の変化に順応させるために行う
特に熱帯魚は、急激な変化に強いストレスを感じやすいです。しかしゆっくりとした変化には順応できるため、引越しの1ヶ月前くらいから計画的に準備を始めるようにします。
魚の種類別、運び方手順
なお、魚の種類によって運び方が異なります。そこで、それぞれについて運搬手順を確認していきます。
【金魚】
私は過去に、金魚を60cmの水槽ごと実家に持って行った経験があります。
このときは水質、温度などをあまり気にせず、水槽に2割程度の水を残したまま金魚ごと自家用車で輸送しました。少ない水でも、車が発進するたびに波揺れが起き、やはり多少の水がこぼれてしまいました。
また金魚も今までにない揺れを感じたので、「大丈夫かな」と心配になりました。しかしこのとき10分程度の短距離移動だったこともあり、無事に輸送できました。
別のときには、祭りですくった金魚を2時間程度、袋にいれたまま持ち帰ったこともあります。無事に運ぶことはできましたが、このとき運んだ金魚は、あまり長生きしませんでした。
原因は、水温にあったと思います。季節が夏だったため、水温が上がっていました。事実、魚類は0.1度の水温を感じる変温動物です。魚は水温によって影響を受けやすいのです。
また、酸素不足もあったのかもしれません。そこで引越しの際は、100円均一に酸素の出る石が売られているので、そのような「酸素を注入できるもの」を入れておくと良いです。
これらの経験から「金魚の運搬では温度と酸素に気をつければ、ビニール袋に入れるなどして自力で運ぶことができる」と考えられます。
ただし移動距離や環境によってリスクはあり得るため、あくまで自己責任が前提です。
【熱帯魚】
熱帯魚は金魚よりもデリケートなため、慎重に水質等を管理しながらの移動が大事です。このとき、以下のようなグッズを用意すると良いです。
- コック付きポリタンク:引越し先で使う飼育水を確保しておく(目安:全体の1/2量)
- 魚用パッキング袋:魚を入れる。2重にすると安心。メダカなどの小魚ならペットボトルも可
- 発泡スチロール(クーラーボックス):パッキングした魚を入れて、温度管理をする
- 新聞紙:発泡スチロールの中にできた隙間を埋めて、魚を固定する
- 乾電池式のエアーポンプまたは、酸素タブレット:長距離移動の場合、使用
- 保温、保冷剤:外気温が26度前後でない場合、温度管理をする
魚の数が多かったり、移動距離が長かったりする場合、パッキング袋やエアーポンプ(または酸素タブレット)をいくつも用意する必要があります。
またパッキングの際は魚同士がぶつかって傷つかないようにするため、中型以上の魚になると1匹ずつパッキングしなくてはなりません。
ろ過装置に入れるろ材にバクテリアを利用している場合は、バクテリアの酸欠を防ぐためにろ材を水から出しておくことも大事です。
このようにデリケートな熱帯魚の移動には、やるべきことや気をつけるべき点が思いのほか、たくさんあります。さらに海水に生きる熱帯魚の場合は大量の酸素を必要とし、なおかつ生存できる水温範囲が狭いため配慮が必要です。
このため魚の引越しを「自力でやるか、業者に任せるべきか」については、「自分でできるか、できないか」を慎重に考えることが大事です。もし、少しでも難しいと感じた場合は業者に依頼しましょう。
車で魚を運ぶ方法
自家用車で運搬する場合は、ダンボールを敷いた上に魚を入れた発泡スチロール(またはクーラーボックス)を置き、衝撃をできるだけ少なくします。さらに荷物の置き方を工夫して、魚がなるべく揺れないようにすると良いです。
空になった水槽は、割れるのを防ぐために毛布で包みます。このとき、フィルターやエアーポンプなどの機材も気泡緩衝材などで梱包します。熱帯魚用の底砂(ソイル)はそのまま入れておいて良いです。水草は新聞紙で包みます。
通常の引越し業者では、水槽のみならば運搬してくれる場合が多いです。そのため、事前に確認してみると良いです。
水槽の引越し後にやること
魚は環境の変化により、ストレスを感じてショック死を起こすことがあります。そのため水にすぐに放すのではなく、まずは袋ごと水に浮かべます。その後、袋の口を開け、魚が自然に出て行くのを待ちます。これを「水合わせ」と言います。
餌については1〜2週間食べなくても問題ないため、すぐにやる必要はないです。魚自体、体温を持たない生体のため、動かなければほとんどエネルギーを消費しないので心配はいりません。
特に引越しのときのように水量が少ない場合、餌をやると水が汚れて魚が苦しんでしまいます。そのため、むしろ絶食させるほうが良いです。
また引越し後の水換えでは魚に強いストレスがかかり、このようなとき餌を与えると、消化不良を起こす可能性があります。最悪の場合、体の中に餌が詰まり死ぬこともあります。
さらに水換え後やろ過装置を新しくしたときは、水をろ過してくれるバクテリアのバランスも不安定なため、餌を入れると水が汚れやすいです。
このように魚の消化不良や水質の悪化を防ぐために、引越し中だけでなく引越しが完了した後もエサやりを控えましょう。
なおエサやりの再開は、新しく入れた水の量を基準とします。目安として、1/3量の水換えをした場合は12時間以上、半量の水を新しくした場合は、1日以上の断食をおすすめします。
餌をやらないと死んでしまうのではないかと気になる人も多いです。しかし例えば金魚の場合、条件の悪い高温の水でも2週間エサ無しで生きることができます。
したがって引越し後は魚やバクテリアのコンディションが整うのを待ってから、エサやりを再開して問題ありません。
手順を確認して、魚の引越し計画を立てる
水生生物の運搬には、水温や水質の管理など専門的な知識が必要なため、多くの引越し業者では取り扱っていません。
業者に依頼したい場合は、魚の引越しを専門としている会社を検討するようにします。このとき、営業エリアを確認することが大事です。多くの業者で対応エリアが決まっているからです。
また自分で魚の引越し行う場合、どの生体でも温度や水質の管理が必要です。事前に引越しの手順を確認して、計画的に準備をしましょう。なお、空になった水槽は、引越し業者に運搬してもらうことができます。
魚の運搬を全面的に「業者に頼むか」「自力で行うか」については、知識の有無や移動距離、魚の種類、予算などを考慮して慎重に決めるようにしましょう。生体がいる場合は特殊な引越しになりますが、事前にどのような手順になるのか確認するといいです。
引越しのとき、必須となるのが「複数社から見積もりを取ること」です。引越し価格には定価がなく、引越し業者によって見積もり額はバラバラです。そのため複数の業者から見積もりを取るだけで、何万円も節約できます。
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見積もり比較サイトでの引越しはおすすめ!料金はいくら安いのか
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