大家からの立ち退き通知書は、前触れなく自宅に届くことが多いです。そのため、突然届いた立ち退き通知書に対して不安に感じる人は多いです。

また、引越しにはお金がかかります。立ち退きでの引越し費用を自分で負担しなければならないのであれば、金銭的負担がかなり大きいです。これに加えて、引越しには手間と労力もかかるため、多くの人は「可能であれば立ち退き要求を拒否したい」と考えます。

それでは、大家からの立ち退き要求を拒否することは可能なのでしょうか? また立ち退きで引越しする際の引越し費用は、大家とあなたのどちらが負担するべきなのでしょうか?

ここでは大家から立ち退き通知書が届いた際の対処法や、立ち退きによる引越しでの費用負担などについて解説していきます。

大家からの立ち退き要求は拒否できる?

家賃を長期間未納していたりペット禁止物件で動物を飼育していたりなどの契約違反を犯している自覚がある場合、「いずれ退去を求められるかもしれない」と心のどこかで思う人が大半です。

一方で毎月家賃を支払い違反行為もしていない人にとっては、「対価(家賃)を支払っているにも関わらず、大家の都合で生活を一変させられる」という印象になります。そのため、突然届く立ち退き通知書に不満・不安を覚える人がほとんどです。

このとき、大家からの立ち退き通知書には「立ち退きしてもらう理由(正当事由)があるため、賃貸契約を解約する(更新しない)」と記されているケースが多いです。このような内容を見ると、立ち退き通知書には強制力があるように思えます。

ただ結論からいうと、契約違反を犯している場合を除き、大家が強制的にあなたを退去させることはできません。賃貸物件からの退去はあくまで入居者の意思で行われることであり、あなたの同意なしに立ち退きは成立しないのです。

そのため大家からの立ち退き通知書が自宅に届いても、要求を拒否して現在の住居に住み続けることは可能です。

立ち退きの拒否はデメリットが大きい

しかしどのような場合においても、大家からの立ち退き通知を無視することはデメリットの方が大きいです。

まず、立ち退き請求があなたの契約違反(家賃滞納など)によるものである場合、大家が強制退去の手段に出ることが可能となります。

借主を強制退去させるまでには多くの段階を踏まなければならないため、「立ち退き期限を過ぎたらすぐに強制的に退去させられる」ということはありません。ただ立ち退き通知書が届いても違反行為を続けていた場合、数ヶ月後には強制的に退去させられる可能性があります。

強制退去が執行されると、あなたは住所を失うことになります。住所を失うと身分証明書や保険証などを利用できなくなり、仕事に就くこともできなくなります。そのため契約違反を犯している場合、立ち退き通知を無視して住み続けるリスクは非常に高いです。

また住居の老朽化による立て直し・取り壊しなどで立ち退きを要求された場合、あなたの住んでいる住居は倒壊の恐れがあります。一見問題のなさそうな住居であっても、そのまま住み続ければ水道・電気などのライフラインにトラブルが起きたり、階段や床が抜けたりする可能性があります。

ただ中には、大家や大家の知人などが入居するために部屋の明け渡し(立ち退き)を要求されるケースもあります。このような場合、要求を拒否して住み続けても、金銭的・身体的リスクはありません。

しかし当然ながら、大家からの立ち退き要求を拒否すると大家との関係性が悪化します。そうすると、さまざまな局面で融通を利かせてくれなくなりますし、場合によってはいやがらせを受けるケースもあります。

このように、大家からの立ち退き請求を拒否することには多くのデメリット・リスクを伴います。そのため引越しを面倒に感じても、立ち退き通知書が届いたら期限内に退去するのが賢明です。

引越し代として立ち退き料を受け取れる

ただ、このとき引越し費用のすべてをあなたが負担する心配はいりません。あなたの契約違反による場合を除き、大家都合での立ち退きでは立ち退き料の支払いを受けられるのが一般的であるためです。

このとき、立ち退き料の相場は家賃6ヶ月ほどです。賃貸物件の契約には家賃5ヶ月分の支払いが一般的であるため、家賃6ヶ月分のお金があれば、同等の家賃の家へ引越すことが十分に可能だからです。

ただ、立ち退き料の支払いは法律で定められたものではありません。そのため、実際に支払われる立ち退き料は物件によって異なります。

大家が提案する立ち退き料については、立ち退き通知書に記されています。そのため自宅に立ち退き通知書が届いたら、立ち退き料の金額と内容を確認しましょう。

なお建物の取り壊しによる立ち退きでは、敷金が全額返還されるのが基本です。住んでいる部屋を壊すため、入居前の状態に戻す(原状回復)必要がないためです。当然ながら、掃除をする必要もありません。

一方で大家や大家の知人などが入居する場合など、あなたの退去後にも誰かが住む予定なのであれば、通常の退去と同様に敷金から原状回復費用が天引きされます。原状回復費用にあてた敷金が余れば差額の返金がありますし、敷金でまかないきれなければ原状回復費用が請求されます。

交渉して引越し費用を賄える金額の立ち退き料をもらう

このとき、大家から提示された立ち退き料が相場(家賃6ヶ月分)よりも低い場合、交渉次第で増額してもらえる可能性があります。

例えば大家が提示した立ち退き料であなたの引越し費用をまかなえない場合、あなたが費用を負担して引越ししなければなりません。このような場合、「立ち退き料では引越し費用をまかなえないため、立ち退きできない」と交渉するといいです。

大家からしてみれば、立ち退きを求めた入居者が退去してくれないとかなり困ります。老朽化した建物でトラブルが起こったら大家の責任になりますし、あなたが引越しせずにそのまま賃貸物件を借りることになると余計な費用がかかります。

そのため「引越し費用をまかなえる金額の立ち退き料を負担してもらえれば、退去を約束する」と伝えれば、応じる大家がほとんどです。したがって引越し費用を賄えない金額の立ち退き料を提示されたら、具体的な引越し費用の概算を示して立ち退き料の増額を交渉しましょう。

例えば「退去を求められている部屋と同等物件の契約費用として家賃5ヶ月分、引越し費用やライフラインの契約・解約費用、役所での手続きにかかる費用などを合わせて家賃1ヶ月分ほどの金額が必要となるため、合計家賃6ヶ月分を支払ってもらえれば〇月頃までには引越しできる」と伝えるといいです。

このように「立ち退き料を増額する必要性」「引越しにかかる費用の概算」「具体的な退去予定日」を伝えれば、大家が交渉に応じやすくなります。

多くもらおうとして弁護士を介すとむしろ損する

なお引越しには多額の費用だけでなく、多大な労力と時間を要します。そのため「迷惑料を含めて、なるべく多くの立ち退き料を支払ってもらいたい」と考える人は多いです。中には、弁護士を介して立ち退き料の交渉をしようと考える人もいるでしょう。

確かに弁護士を通して立ち退き料の増額を交渉すると、大きく増額するケースがほとんどです。過去には、100万円を超える立ち退き料が支払われた事例もあります。

ただ弁護士を通して立ち退き料が増額しても、最終的にはほとんど手元にお金が残らないのが実態です。

まず、弁護士に仕事を依頼すると10万円以上の着手金を支払うことになります。これに加えて弁護士に成功報酬を支払う必要があり、解決金(最終的な立ち退き料の金額)の3~5割ほどを弁護士に支払うことになります。

また、大家から支払われた立ち退き料は所得として換算されます。実際に、以下は国税庁のサイトに記載されている立ち退き料についてのページです。

ここには、借家人(賃貸物件の借主)が立ち退き料を受け取ると、所得税法上の各種所得の収入となると記されています。立ち退き料を受け取ると、その年の所得金額が上がるのです。

所得金額が上がると、その分だけ所得税や住民税などが増額します。当然、受け取る立ち退き料の金額が大きくなると支払う税金の金額も増えます。

このようなことから弁護士と契約して時間をかけて立ち退き料を増額できても、弁護士への報酬や増額した税金を支払うと、手元に残るお金はかなり少なくなります。場合によっては、赤字になるケースもあります。

そのため多額の立ち退き料を請求したくても、弁護士を介して交渉を進めるのは避けるのが賢明です。大家と直接交渉し、引越し費用をまかなえる金額の立ち退き料を請求しましょう。

早めに立ち退き交渉を終えれば、引越し費用を抑えて得できる

また、大家と立ち退き料の交渉を直接するべき理由がもう一つあります。交渉が早く終わることによって、余裕をもって引越しできる点です。

立ち退き期限までの時間的な余裕があると、引越し作業を自分のペースで進められます。また退去日を調整することによって引越し費用を抑え、結果として手元に残るお金を増やすことも可能となるためです。

引越しにかかる費用は、引越しが多い時期ほど高くなります。例えば2~3月は新生活シーズンであり、1年でもっとも引越しが多い「引越し繁忙期」です。このタイミングで引越しすると、他の時期に引越すときに比べて引越し料金が1.5倍ほどになります。

また繁忙期の引越しだと、大家・不動産業者の言い値で引越し先の賃貸物件を契約せざるを得ないケースが多いです。

一方で閑散期の引越しだと、賃貸契約の際に「礼金免除」「フリーレント」などの条件を引き出しやすくなります。大家と直接交渉して早めに立ち退きの合意を終えると、退去日を調整して引越し費用を抑えることができるのです。

仮に礼金と入居後1ヶ月間の家賃を免除してもらえれば、家賃3ヶ月分ほどの費用で引越しを完了することが可能です。家賃6ヶ月分の立ち退き料を受け取っていれば、差し引き家賃3ヶ月分のお金が手元に残ることになるのです。

そのため立ち退き通知書が届いたら、なるべく早く立ち退き料の交渉を進め、引越し料金が安いタイミングにて退去日を調整しましょう。

具体的には繁忙期を避け、可能であれば引越し料金が安くなりやすい月初の平日に引越すといいです。また午前便よりも午後便の方が引越し料金を抑えられるので、手元に残るお金を増やしたいのであれば午後に荷物の搬出・搬入を依頼しましょう。

大家と立ち退き料の交渉を行い、引越し日を設定する

契約違反の場合を除き、大家からの立ち退き通知書には強制力がありません。そのため立ち退き通知書が自宅に届いても、拒否して現在の部屋に住み続けることは可能です。

ただ、大家の立ち退き要求を拒否することは多くのデメリットを伴います。老朽化した建物は倒壊のリスクがありますし、要求を拒否することによって大家との関係性が悪化すれば生活に悪影響を及ぼします。そのため立ち退き通知書が届いたら、大人しく退去する方がいいです。

ただ金銭的に得したいからといって、弁護士を通して高額の立ち退き料を請求するのは避けましょう。弁護士への報酬や税金などの支払いが増えるため、最終的に損をするリスクが高いためです。

一方で大家と直接交渉すれば、引越し費用の相場をまかなえるだけの立ち退き料を受け取れるケースがほとんどです。その上で引越し費用を安く抑えれば、手元にお金を残すことも可能となります。このようにして、立ち退きの交渉や引越しを進めましょう。


引越しのとき、必須となるのが「複数社から見積もりを取ること」です。引越し価格には定価がなく、引越し業者によって見積もり額はバラバラです。そのため複数の業者から見積もりを取るだけで、何万円も節約できます。

例えば、以下は5人家族の長距離引越しで見積もりを取ったとき、4社に見積もりを依頼しました。このとき、最高額は438,264円でした。一方、最も安い業者は198,720円であり、半額以下の料金になりました。複数業者へ依頼しないだけで、大きな損をすることになります。

ただ、自ら業者を探して電話をかけるのは大変です。そこで、必要な情報を入力するだけで完了する一括見積もりを利用しましょう。

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