引越しを考えたとき、もっとも心配になるのは段取りと費用でしょう。時間とお金は有限であり、なるべく節約したいと考えるのは普通です。

特に賃貸物件への引越しだと、計画から引越しまでの期間が限定されます。仕事などと並行して多くの作業・手続きを進めなければならないため、引越し準備を効率よく進める必要があります。

また賃貸物件への引越しでは、費用を節約できるポイントがいくつかあります。これを理解することで、無駄な出費を防いで引越し費用を抑えることができるようになります。

そこで、ここでは賃貸物件へ引越す際の流れや費用の相場などについて解説していきます。

賃貸物件へ引越す際の費用相場

賃貸物件への引越しでかかる高額の出費には、大きく分けて「賃貸物件の契約費用」「引越し業者の利用料金」「家具家電の購入費用」の3つがあります。

これらのうち、家具家電については所持しているものをそのまま使えば出費を抑えることができます。手持ちの家電が収納スペースに入らない場合は買い替えが必要となりますが、手持ちの家電を収納できる賃貸物件を選べば問題ありません。

一方で賃貸物件の契約費用と引越し業者の利用料金については、引越しする上で必須となる出費です。

これらのうち、賃貸物件の契約費用は敷金や礼金、仲介手数料などを含めて家賃の5倍ほどが目安です。例えば家賃8万円の部屋に引越す場合、初期費用として40万円かかることを覚悟する必要があります。

一方で引越し料金については、荷物の量や引越し先までの距離、引越し時期などによって料金が変わります。以下は、引越し業者を利用する際の費用相場です。

短距離(50km以内)中距離(200km以内)長距離(500km以内)
単身3~4万円4~5万円5~6万円
2人6~7万円8~9万円10~12万円
3人以上8万円~11万円~14万円~

このように、引越し荷物が多くなったり引越し距離が長くなったりすると、その分だけ料金が高くなります。

また引越し時期が3~4月の場合、引越し料金が上記の表の1.3~1.5倍ほどになります。3~4月は新生活のタイミングであり、引越し件数が非常に多いためです。

このように、賃貸物件への引越しでは「家賃5ヶ月分と上記の引越し料金の合計金額」が初期費用として発生するのが基本となります。

閑散期に引越しすれば初期費用を節約できる

ただ、必須で発生する引越し費用であっても、工夫することで節約は可能です。

まず引越し料金については、引越し業者を選ぶ際に複数業者へ見積もりを依頼するだけで料金が安くなります。他社にも見積もりを依頼していることを伝えることによって、業者間で価格競争が起こるためです。引越し時期を選べる場合、特に6月や11月、1月などの引越し閑散期であれば、引越し料金の最安値を引き出しやすくなります。

また賃貸物件の契約費用についても、閑散期に引越しすると費用を節約しやすくなります。大家が初期費用の値下げ交渉に応じやすくなるためです。

引越し繁忙期は、引越し先を探す人が非常に多くなります。大家からしてみれば「何もしなくても入居者が決まる見込みがある」という状況であるため、わざわざ初期費用の値下げや免除などのサービスを実施する必要はありません。

一方で引越し繁忙期を過ぎると、入居希望者が一気に減少します。空室期間が長くなるほど大家は損することになるため、閑散期であれば入居希望者の初期費用の免除交渉に応じやすくなるのです。

このとき、大家に対しては礼金や1~2ヶ月分の家賃免除(フリーレント)などを交渉できます。ただ、内見前から初期費用免除の交渉をすると応じてもらえないケースがあります。そのため初期費用の免除・減額については、内見終了後に交渉しましょう。

また礼金などと同様に、敷金の免除についても交渉することは可能です。ただ、敷金は退去時の原状回復に充てられるため、敷金を支払わないと退去費用が高くなるリスクがあることを覚えておきましょう。

賃貸物件への引越しの流れ

それでは賃貸物件へ引越すとなったとき、どのような流れで手続き・作業を進めていけばいいのでしょうか?

このとき賃貸から賃貸へ引越しするのであれば、最初にやるべきことは退去日の設定と退去の連絡です。

一般的に、賃貸物件を退去する際には1ヶ月以上前に大家(管理会社)へ連絡する必要があります。契約内容によっては、「2ヶ月前に連絡」となっているケースもあります。例えば以下は、2ヶ月前までに通知しなければいけない実際の賃貸契約書です。

契約書にこのような記述がある場合、退去日の2ヶ月前までには退去の意思を伝えなければなりません。

このとき、退去連絡をした日から1ヶ月間(2ヶ月前申告だと2ヶ月間)は家賃が発生します。そのため退去の連絡が遅くなると、旧居での家賃発生期間と新居での家賃支払い期間が重複する(=二重家賃)可能性が高くなります。

そのため賃貸から賃貸へ引越す際には、まず都合のいい日を退去日(=引越し日)に設定し、大家や管理会社に退去の連絡を行いましょう。

その後、以下のような流れで新たな賃貸物件への引越しを進めていきます。

新居候補を絞って内見し、賃貸物件を契約する

退去日(=引越し日)を決めたら、引越し業者の手配と引越し先の賃貸物件を契約します。これらのうち引越し業者の手配については、前述のように複数の業者に訪問見積もりを依頼して、条件のいい引越し業者と契約しましょう。

一方で賃貸物件の契約は、まず不動産仲介業者の物件検索サイトや業者の店舗で希望条件から新居候補を2~3件に絞り込み、内見の予約を入れます。その後、不動産仲介業者の店舗へ出向いてスタッフと一緒に候補物件の内見を行っていきます。

このとき、内見で気に入った物件がなければ再び新居候補を絞り込んで内見を行います。内見で住みたい物件が決まったら、不動産業者の店舗で賃貸物件の契約申し込みへ進んでいきます。

賃貸物件の契約申し込みに必要な書類

賃貸物件の契約申し込みでは、希望物件の大家・管理会社に対して「〇月〇日にこの物件に入居したい」という意思を伝えます。

このとき、賃貸物件の入居の際には審査が行われます。大家からしてみれば、設定されている家賃の支払い能力がある人しか入居させられないのは当然のことです。

そのため賃貸物件の契約申し込みでは、入居審査のために本人確認書類と収入証明書、住民票、印鑑証明書などの「収入・信用性についての証明書」を提示・提出する必要があります。連帯保証人を立てる場合、保証人にも同様の書類を揃えてもらうことになります。

これらのうち、本人確認書類は運転免許証やマイナンバーカードなど顔写真付きの身分証明書が必要です。また収入証明書については、会社員だと源泉徴収票、自営業だと前年の確定申告書などが必要です。これらはどれも業者側でコピーを取るため、原本を持参します。

また住民票や印鑑証明書などを求められた場合、居住している地域の役所で発行してもらいます。このとき、住民票にマイナンバーが記載されていると防犯の観点から受け取りを拒否されるので、マイナンバー記載なしの書類を発行してもらいましょう。

なお、このような必要書類の種類については申し込み時に「必要書類一覧」として業者側から受け取れるケースが多いです。このとき、「住民票の写し」の表記について「役所で受け取った住民票のコピーを提出する」と考える人がいます。

ただ「住民票の写し」とは「役所で保管されている住民票の原本を写した書類(=役所で発行してもらった住民票)」を指します。住民票をコピーして持参すると書類不備となるため注意しましょう。

これらの書類を揃えて不動産業者へ提出すれば、入居の審査が行われます。契約を申し込んだ物件は仮押さえの状態となりますが、書類を揃えるのに時間がかかりすぎると他の人に契約されるリスクがあるので、なるべく早く書類を揃えましょう。

審査完了から入居までの流れ

なお、入居審査は通常3日~1週間ほどで終わります。入居審査が完了したら、賃貸契約を申し込んだ業者から電話連絡があり、いよいよ賃貸物件の契約に進んでいきます。

このとき、敷金や礼金などの初期費用は賃貸契約の前に支払う必要があります。なお現金での支払いだと契約手続き時、振り込みでの支払いだと契約前日までに指定口座への入金が一般的です。

このようにして初期費用の支払いを終え、契約書への記入・捺印を済ませたらついに、賃貸契約が完了となります。

このとき、新居の鍵については入居日当日の引き渡しが原則ですが、前日の夕方に受け取れるケースが多いです。契約時に不動産業者から鍵の受け渡し日時について告知があるので、指定された時間に鍵の受取へ出向きましょう。

なお、入居前であっても賃貸物件の契約を終えたらキャンセルはできません。契約後に他の物件を選ぶとなると、キャンセルではなく解約の扱いとなります。

契約直後に賃貸物件を解約すると、支払った初期費用が返ってこないだけでなく、違約金が発生する可能性があるので注意しましょう。

引越し日までにやるべきこと

賃貸契約を終えたら、荷造りを進めながら引越し当日までに退去の準備と各種手続きを進めていきます。

例えば水回りにカビが生じていたりキッチンに頑固な油汚れが付着していたりすると、退去時のクリーニング費用(=退去費用)が高くなります。そのため余計なお金を支払わないためにも、退去日までには頑固な汚れを落としておきましょう。

また引越し先が市町村外の場合、役所で住民票やマイナンバーなどの転出の手続きが必要となります。子供がいる場合、子供手当などの引越し手続きも必要です。

転出の手続きを忘れて市区町村外へ引越してしまうと、引越し先での役所手続きが非常に面倒になります。役所での転出手続きは引越し日の14日前から行えるので、引越し日が近付いたら早めに手続きを済ませましょう。

ライフラインの引越し手続き

なお、引越しで手続きが必要なのは役所関連だけではありません。電気やガス、水道などのライフライン関係についても、それぞれ引越し手続きが必要です。

これらのうち、水道の引越しについては住んでいる地域の水道局に電話連絡するだけで手続きが完了します。新居での手続きも、引越し後に備え付けのハガキに必要事項を記入して提出するだけで手続き完了です。

また電気の引越し手続きも電話やインターネットで行うことができます。利用している電力会社によっては引越し先で利用を継続できないケースがありますが、引越し先住居には地域電力会社による電気の供給があるため、手続きが遅れても電気を使えない事態に陥ることはありません。

これに対してガスやインターネットは、引越し手続きが遅れると引越し後に利用できない期間が発生します。ガスやインターネットの利用開始には、開栓作業・開通工事が必要となるためです。

ガスの開栓はガス業者の作業員が入居者の立ち合いで行います。これはガス業者を変更しない場合も同様です。以下は、業者による入居前のガス開栓作業の様子です。

ガスの引越しでは、旧居でのガスの閉栓と新居でのガス開栓について予約しなければなりません。そのためガスの引越し手続きが遅れると、退去が遅れたり引越し後にガスを使えなかったりする事態に陥ります。

またインターネットについても、新居に利用している業者の光回線が導入されていない場合、開通工事が必要となります。賃貸物件の場合、遠隔操作による工事(宅内工事)のみで作業が完了するケースが多いですが、宅内工事であっても事前の予約が必要です。

さらに中には、独自の光ファイバーを利用しているケースがあります。このような業者を利用する場合、作業員による工事が必要となるため、利用開始までに1~2ヶ月かかることになります。

このように、ガスとインターネットの引越し手続きには事前予約が必要となります。そのため引越し先が決まったら、なるべく早く手続きに着手しましょう。

賃貸物件への引越しにおける当日の流れ

荷造りや掃除などを終えて引越し当日を迎えたら、いよいよ引越し作業と退去の立ち合いを行います。

退去の立ち合いでは、部屋の状態や忘れ物などについて確認します。このときの合意をもとに退去費用の請求が行われるため、事前に原状回復ガイドラインをチェックして不当な請求を防ぎましょう。

また新居は前の入居者が退去する際に業者によってクリーニングされていますが、場合によってはあまりキレイではないケースがあります。

特にクリーニングから時間が経過していると、ホコリが溜まっていたり隙間から虫が侵入していたりすることはよくあります。このような状況が気になるのであれば、荷物の搬入前に新居へ向かい、掃除や害虫対策などを行いましょう。

また新居へ荷物を搬送し終えたら、荷解きと役所の手続きを進めていきます。前述の通り、引越し後の役所手続きについて転入・転居届は入居から14日以内に行います。このとき、引越し前の地域で受け取った転出証明書は引越し後の役所手続きで必要となるので、忘れずに役所へ持参しましょう。

賃貸物件への引越しの流れを理解し、お得に効率よく作業を進める

引越しにはお金と手間がかかります。ただ閑散期に引越したり引越し業者の見積もり件数を増やしたりすれば、初期費用を大きく節約することができます。

また現在の住まいが賃貸なのであれば、まず退去の連絡を大家(管理会社)に入れましょう。その後、不動産業者のインターネットサイトや店舗で住みたい賃貸物件を探していきます。

住みたい部屋が見つかったら、必要書類を揃えて審査・契約に進みます。賃貸物件の契約を終えたら、荷造りとともに役所や電気・ガスなどのライフラインの手続きを進めましょう。

引越し当日には、荷物の運搬と退去の立ち合いなどを行っていきます。早めに荷解きと役所手続きを済ませ、快適な新生活を開始しましょう。このようにして賃貸物件への引越しを進めていくといいです。


引越しのとき、必須となるのが「複数社から見積もりを取ること」です。引越し価格には定価がなく、引越し業者によって見積もり額はバラバラです。そのため複数の業者から見積もりを取るだけで、何万円も節約できます。

例えば、以下は5人家族の長距離引越しで見積もりを取ったとき、4社に見積もりを依頼しました。このとき、最高額は438,264円でした。一方、最も安い業者は198,720円であり、半額以下の料金になりました。複数業者へ依頼しないだけで、大きな損をすることになります。

ただ、自ら業者を探して電話をかけるのは大変です。そこで、必要な情報を入力するだけで完了する一括見積もりを利用しましょう。

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