引越しをするとき、業者の中でも「赤帽は安い」と聞いたことがある人は多いと思います。また、「引越し費用を安く抑えたい」と考え調べていると、必ず赤帽の名前が出てくるようになります。

赤帽というのは、要は引越しの手伝いをする個人事業主といえます。こうした個人に依頼するため、料金だけ見ると低めになります。

しかし、「赤帽は引越し業者に依頼するより安い」とは必ずしもいえません。これは、さまざまな料金が考慮されていないからです。

ここでは、「赤帽はどのようなサービスなのか」「どのような引越しならば、引越し業者より安くなるのか」「赤帽に依頼するメリット・デメリット」を含めて解説していきます。

赤帽とは個人事業主による引越しサービス

赤帽は個人事業主で構成される「事業協同組合」です。分かりやすく例えると、農家が集まって組織化した「農業協同組合」と同じく、赤帽ドライバーが集まって組織になった組合のことを指します。全国各都道府県に約45の協同組合が存在します。

いわゆる引越し業者ではなく、運送業者のほうが近いです。そのため「荷物を運ぶための一貫した作業を自動でしてくれる」「養生をする」など、引越し業者ならば当然のように実施してくれるサービスは望めません。

以下のような養生を行い、2人以上で荷物の運び出しをしてくれることはないのです。

分かりやすく例えるなら「荷物のタクシー版」です。荷物運搬を主に業務としているサービスなので、それ以外の作業の実施はそれぞれの赤帽によって違います。

事実、赤帽に引越しを依頼するにしても、赤帽は個人事業主一人で活動しているため、大きい荷物を運搬するときは必ずあなたが手伝うことになります。引越し業者のように、2人以上によって自動でトラックに運搬してくれるわけではありません。

ただ、「荷物のタクシー版」だからこそ、運送の途中に「実家と引越し先の2箇所に立ち寄ってほしい」など、自由に依頼できるメリットもあります。

しかし個人事業主なので、全国でもサービスの範囲にむらがあります。例えば家具の解体や組み立てまでサービスしてくれる赤帽もありますし、そこまでは実施しない赤帽も存在します。

赤帽ドライバーとの搬入で家具が破損した場合はどうなる?

なお前述の通り、赤帽のドライバーが1人で荷物を運べない場合は手伝うことになります。特に大型家電や家具の運搬だと、必ずあなたが手伝わなければなりません。しかし、引越しに不慣れだと「家具を壊さないか」不安になります。

当然、慣れない作業をすることで荷物を破損させたり傷つけたりすることもあり得ます。通常の引越しであれば、以下のように家電や家具については専用の毛布でくるまれています。

ただ自営業であるため、こうした毛布はありません。このとき万が一、家具が破損した場合は赤帽が入っている保険で補償してもらえます。貨物保険に加入しており、300万まで補償されるケースが多いです。

赤帽に引越しを依頼する場合、補償の範囲や細やかな条件は前もって確認しておくといいです。

赤帽の料金システムは2つ存在する

このとき赤帽では、トラック1台ごとに2種類の料金システムで計算されます。以下の2種類が基本料金です。

  • 距離制運賃
  • 時間制運賃

この料金に引越し作業料金や割増料金(休日・深夜・地区などの割増)が追加されます。特に東京23区や大阪市は金額が割増になることが多いです。

ここで注意しなくてはいけないのが赤帽の料金システムです。赤帽の料金システムを考慮すると、距離制運賃システムにしても、時間運賃システムにしても、距離が離れた引越しには不向きです。

具体的には20km以上離れた引越しでは、引越し業者のほうがお得だといえます。以下に、距離制運賃システムで料金が計算されている赤帽の料金表の例を示します。この料金に、更に高速料金などが追加されます。

20kmまで4,950円4,950円+諸料金
50kmまで+220円/km50kmの場合、11,550円+諸料金
100kmまで+165円/km100kmの場合、19,800円+諸料金
150kmまで+132円/km150kmの場合、26,400円+諸料金
150km以上+110円/km

この「諸料金」というのは引越し作業のことです。先ほども述べたように赤帽は「荷物のタクシー版」なので引越し作業は別途で料金が発生するのです。

また、時間制運賃の場合の料金は以下のようになります。この料金に、さらに高速料金などが追加されます。

2時間貸し切り4,950円+超過30分ごとに1,375円2時間の基礎走行20kmまで
8時間貸し切り21,450円+超過30分ごとに1,375円8時間の基礎走行80kmまで

赤帽の料金システムはこれら2種類のいずれかで計算されることを理解しておきましょう。

赤帽のトラック1台に乗る荷物の積載量

それでは、赤帽での荷物量はどれくらいなのでしょうか。例えば、単身で荷物がトラック1台に収まる場合の引越し料金を考えてみましょう。「トラック1台」というと、どれくらいの荷物が乗るがイメージができないと思います。

赤帽では、軽トラック1台とほぼ同じ大きさのトラックを使用しています。中に入る荷物は約1.5畳(横1410×縦1940×高さ1450㎜)です。

ここで、一般的な赤帽の軽トラックに積める荷物量の具体例を示します。以下の写真が一般的な軽トラックの大きさです。

  • 単身での引越し例

エアコン1台、机1式、椅子1式、シングルベッド1台、テレビ1台、パソコン1台、冷蔵庫(小)1台、食器棚1台、ダンボール10個

おおよそ、これだけの量ならば積むことができます。参考までに、以下は「軽トラックに大型の冷蔵庫と洗濯機を載せた」ときの様子です。

このように、これだけでも半分のスペースを取ってしまうことが分かります。そのため荷物が多い場合、すぐにトラックいっぱいになってしまいます。

単身で短距離の引越しなら赤帽が安い

そうしたとき、どのような引越しなら赤帽が安いのでしょうか。これについてシミュレーションすると「荷物の少ない単身で引越し距離が20km以下の場合」であれば、赤帽がいいです。

これについて、赤帽や引越し業者で見積もりするとどれくらいの金額になるかを以下にまとめます。

赤帽13,750円
引越し業者37,805円
引越し業者(繁盛期)49,147円

この表を見る限り、近距離での引越しなら赤帽は安いといえます。「荷物の運搬を手伝っても問題ない」「養生なしでも大丈夫」「荷物は軽トラック1台分で充分な量」などの条件がそろえば、20km程度の近場の引越しならば赤帽を利用するほうがコストは抑えられます。

遠距離の引越しは引越し業者のほうが安い

それでは、赤帽はどんな条件でも引越し業者より安いのでしょうか。結論からいうと、そうではありません。理由としては、赤帽だと距離制運賃システム・時間制運賃システムのどちらも高速料金や作業代は別途なので、遠距離の引越しではコストがかかります。

例えば200kmで、荷物の少ない単身での引越しをシミュレーションすると、各業者での見積もりは以下のようになります。

赤帽40,700円
引越し業者30,000円
引越し業者(繁盛期)47,260円

この通り、遠距離での引越しでは赤帽は他の業者と比べて安くありません。しかも引越しの手伝いや養生などサービス面から比べると、高いといえます。

家族での引越しは赤帽を利用すると高い

前述の通り単身の引越しで荷物も少ない場合、赤帽の軽トラックで充分な場合もあります。

しかし、家族での引越しとなるとそうではありません。例えば、4人家族が引越しをする場合では4トントラックでやっと運べるぐらいの量になるのが普通です。以下の写真が4トントラックです。

4トントラックと同じ量を運ぼうとすると、赤帽の軽トラック10台分が必要になってしまいます。

赤帽ではトラック1台ごとに料金が発生しているため軽トラックの台数が増えるとその分、総額も高くなります。このとき、トラック1台が増えるとその分だけ単純に料金が倍に増えていきます。

例えば、20km離れたところに4人家族で引越したとして荷物が赤帽軽トラック10台分であったとします。その場合の引越しは赤帽、引越し業者では以下のような差が出ます。

赤帽4,950円 + 諸料金 = 13,750円(1台) × 10台 = 137,500円
引越し業者64,800円

あくまで平均ですが、荷物が多い場合の見積もりではダントツで赤帽が高くなります。この事実を知らずに「赤帽は安い」という概念だけで引越しを依頼すると、かなり高額な料金を支払うことになります。

引越しに不慣れな場合や時間がないとき、引越し業者が無難

赤帽は単身で近距離の引越しならば、格安で荷物を運んでもらえます。しかし、あくまで「荷物のタクシー版」であり、それ以上のサービスを望むとがっかりする場合が多いです。そのため、引越しに不安がある場合、引越し業者に依頼するほうが無難です。梱包や引越し作業全般について、引越し業者であれば確実に実施してくれます。

また、時間がない場合の引越しも専門の引越し業者に委託するほうがいいです。赤帽は引越しの作業をあなたが手伝わなければいけないため、当日は相当な時間を要します。

さらに、家具や家電の廃棄は通常だと自分で行う必要があります。しかし、引越し業者の場合、業者によっては家具や家電の廃棄まで対応してくれることがあります。

参考までに私の場合、廃棄したい家電があったので引越し業者に依頼しましたが、そのときは以下のようながバツの印がつけられていました。

このとき、業者は無料で家電を引き取ってくれました。個人で家電を廃棄するのはとても面倒なので非常に助かったわけですが、引越し業者によっては快く引き受けてくれます。

さらに、引越し業者であれば、梱包から全てお任せできる「らくらくパック」も利用できます。コストはかかりますが、食器や棚の荷物など梱包作業が面倒な場合、引越し業者を利用すればあなたに合った引越しプランを選択できます。

赤帽を利用するメリットは「単身で荷物が少ない場合に、料金がダントツで安くなる」ことです。「単身であまり荷物がない」「体力には自信がある」「荷物の運搬を手伝ってもいい」という場合は赤帽をおすすめします。しかし、それ以外のケースでは引越し業者を活用しましょう。

赤帽を利用するには事前に知識が必要

赤帽を利用するには「赤帽とはなにか」「どのような料金システムなのか」を理解しなくてはいけません。「赤帽は安い」というのを真に受けて依頼すると、引越し業者に依頼するより高くなるケースは多いです。

また、自身の引越し作業に関わる能力も考慮して「赤帽を利用するかどうか」を検討するといいでしょう。「養生や大型荷物の梱包なしに、あなたがダンボールや大きい荷物の運搬を手伝う事態」も想定しておく必要があるからです。

そこで「赤帽は引越し業者ではなく、荷物のタクシー版」と理解しておくと、赤帽を利用するべきかどうか判断しやすいです。

引越しを依頼する業者によって、引越しの作業内容は変わってきます。必ず依頼する前に、その業者が最適なのかどうかを考える必要があります。


引越しのとき、必須となるのが「複数社から見積もりを取ること」です。引越し価格には定価がなく、引越し業者によって見積もり額はバラバラです。そのため複数の業者から見積もりを取るだけで、何万円も節約できます。

例えば、以下は5人家族の長距離引越しで見積もりを取ったとき、4社に見積もりを依頼しました。このとき、最高額は438,264円でした。一方、最も安い業者は198,720円であり、半額以下の料金になりました。複数業者へ依頼しないだけで、大きな損をすることになります。

ただ、自ら業者を探して電話をかけるのは大変です。そこで、必要な情報を入力するだけで完了する一括見積もりを利用しましょう。

引越し侍

引越し侍ではアート、サカイ、日通、アリさんなどの大手が登録しており、入力作業は30秒で終わります。無料で利用できるサービスなので気軽に利用できます。

さらに大手だけでなく、中小の引越し業者も登録しているので低価格な引越しが可能になります。最大15社まで見積依頼でき、できるだけ複数の業者の見積もりを取り、最安値で引越しをしたい人に適しています。

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