引越しでは大量の荷物を人力でトラックへ運搬し、大小さまざまな荷物をトラックに積み込んで新居まで運送します。そのため荷物運搬のプロである引越し業者であっても、荷物や部屋の内装を壊したり汚したりしてしまうケースがあります。
ただ、荷物が破損して使えなくなると修理や買い替えが必要となります。また大切な荷物や物件の内装などが汚れたり傷が付いたりした場合、補修することを考えなければなりません。このような費用をあなたが支払うことになると、大きな負担となります。
それでは引越しで荷物や内装などを壊されたり傷つけられたりした場合、補償してもらうことはできるのでしょうか? また破損・汚損に対して補償を受けるためには、どのようにすればいいのでしょうか?
ここでは引越しで荷物や内装などを壊されたり傷つけられたりした際の補償や、補償を受けるための対処法などについて解説していきます。
もくじ
一般的な荷物であれば補償を受けられる
便利屋・なんでも屋などの「引越しを生業としない業者」を利用した引越しでは、引越しによって荷物に問題が生じても補償は一切ありません。そのため便利屋を利用して引越した場合、荷物トラブルがあっても諦めるしかありません。
一方で引越し業者として認可を受けている業者であれば、引越し荷物や内装の破損・紛失に対して補償を受けられるのが基本です。
まず、引越し業者は国が定める引越しの基本ルール(標準引越運送約款)に則って営業しています。
標準引越運送約款では、引越し業者の過失によって生じた荷物の破損・汚損について補償することが記載されています。以下は、標準引越運送約款に記載されている業者の責任についてです。
ここには、「荷物の受取から引き渡しまでの間に荷物などが壊れたり傷ついたりした場合、引越し業者が損害を賠償する」という旨が記されています。
また、ここで記述されている「荷物など」には物件の内装なども含まれます。そのため荷物だけでなく部屋の内装についても、破損・汚損を引越し業者に賠償してもらうことができます。
また引越し業者として認可されている業者であれば、引越し荷物に対しての保険(運送業者貨物賠償責任保険)に加入しています。
この保険に加入している引越し業者は、顧客の荷物の損害について賠償が発生した場合、保険会社から補償を受けることができます。あなたの荷物を補償するお金が保険会社から出るため、引越し業者の出し渋りなどによる未払いが発生する心配はありません。
このように、引越し業者は顧客の荷物や部屋の内装などについて補償する責任が課されています。そのため基本的には、引越しによって荷物や内装などが破損・汚損したことを申告すれば、業者から補償を受けることができます。
破損・汚損の補償は修理対応が基本
ただこのとき、荷物・内装の種類に関わらず、業者による破損・汚損の補償は修理対応が基本です。
例えば引越しによって冷蔵庫が破損した場合、メーカーなどによる修繕費用を引越し業者が負担します。また家具や内装に傷がついた場合、引越し業者が補修業者を手配して傷の穴埋めを行います。
また中には、自ら修繕する引越し業者もあります。そのため物件・荷物の破損について補償を受けられたとしても、元通りになるのは難しいといえます。
荷物の損害は経年劣化を考慮した金額が補償される
なお、破損した荷物・内装によっては、部品や資材の製造終了などによって修理が不可能となるケースがあります。このような場合、まずは同程度の機能・価格帯の品物との交換という手段が取られるケースが多いです。
例えば3年前に14万円で購入した300Lの冷蔵庫の補償については「同じタイプの型落ち品の300L冷蔵庫と交換する」などとなります。
また破損した荷物の補償を現金で受け取る場合、経年劣化が考慮された上で補償金額が確定します。
例えば冷蔵庫の耐用年数は6年とされています。購入から3年経過している14万円の冷蔵庫であれば、補償金額は7万円となります。これは、該当の荷物(この例だと冷蔵庫)が全損して使えなくなった場合も同様です。
このように一般的な引越し荷物が破損・汚損した場合、補償を受けることはできるものの、購入時の金額すべては補償されないことに注意しましょう。
補償の対象とならない荷物がある
このように、引越しによって荷物などが破損・汚損の被害を受けた場合、補償を受けられるのが基本です。ただ荷物の種類によっては、補償の対象とならないケースがあります。
例えば、アルバムや記念品などの思い出の品が破損・汚損した場合、精神的なショックの大きさから「損害賠償を請求したい」と考える人は多いです。
ただ引越しの荷物補償で受けられるのは、あくまで品物の実質的な価値の金額のみになります。例えばアルバムが破損したのであれば、請求できるのはアルバムの購入代金のみです。
同様に、設計図などの情報やパソコン内部のデータなども「補償されるべき価値があるものとされない(=補償の対象外)」となるので注意しましょう。
貴重品や美術品、植木などは補償の対象外となる
また引越しで運ぶ荷物の中には、引越し業者による補償の対象外となる品目があります。
まず、宝石や貴金属、現金などは貴重品扱いとなり、自分で持ち運ぶのが基本です。そのため、これら品目を引越し荷物として業者に運んでもらった場合、破損・紛失が生じても補償してもらうことはできません。
また、絵画などの美術品や骨董品などは「特殊な荷物」として通常の引越し荷物とは別に運搬されます。そのため美術品・骨董品も引越し荷物の保険の対象外となっており、運搬によって破損・紛失しても補償を受けることはできません。
さらに、生き物や植木などのペット・植物も通常荷物と同じように運搬することができません。事前に相談すれ補償ありで運搬してもらえるケースもありますが、連絡を怠って生じた損害に対しては補償されないので注意しましょう。
補償の対象外となるケースは他にもある
また、補償の対象となる品物に思えたとしても、補償されないケースがあります。
まず、品物の破損・汚損の原因が梱包の甘さである場合、補償の対象外となります。例えば皿やコップなどの割れ物は、以下の写真のように緩衝材に包んで梱包するのが基本です。
このような梱包作業を怠ったことによって食器が破損した場合、補償を受けることはできません。破損・汚損に対する補償を受けられるのは、正しく荷造りした荷物のみなので注意しましょう。
この他にも、天災や事故などの「予期しないやむを得ない事態」によって荷物が破損した場合、補償の対象外となるので覚えておきましょう。
荷物の補償には有効期間がある
また引越し荷物の補償については、期限が設けられています。まず、引越し荷物の破損・汚損については、荷物の受取から3ヶ月以内に業者へ連絡しないと無効となります。以下は、標準引越運送約款の責任についての項目です。
ここには荷物を引き渡した日から3ヶ月以内に破損・汚損について通知しなければ、業者の責任が消滅すると記載されています。
また破損・汚損について3ヶ月以内に連絡した場合であっても、荷物の受取から1年が経過すると業者の責任は消滅します(裁判を起こした場合を除く)。そのため業者とのやり取りが長引いてトラブルが解決しないまま1年経過すると、補償を受けられなくなってしまいます。
そのため荷物や内装など破損・汚損の補償を受ける際には、業者からの連絡を待ち続けるのではなく、トラブル解決の進捗状況について定期的に業者へ確認しましょう。
破損に対する補償を受ける流れとコツ
なお破損・汚損したのが物件の内装なのであれば、大家にも速やかに事情を説明しましょう。内装の破損・汚損については家の持ち主である大家に交渉を引き継ぐのが基本です。現場確認などであなたの同席が求められるケースはありますが、交渉そのものは大家に任せましょう。
一方で引越し荷物の破損・汚損については、あなた自身が対応することになります。このとき、破損トラブルの申告が遅くなるほど「引越しによる損害である」と主張しにくくなります。そのため荷物の破損・汚損を発見した場合、すぐに業者へ連絡しましょう。
ただこのとき、中には対応を遅らせることによって荷物の賠償責任から逃れようとする業者もいます。
そのため引越し後に荷物の破損・汚損に気が付いたら、まず該当部分を写真で撮影しておきましょう。写真には撮影日時についての情報が記録されるため、「引越し直後に発見した」という証拠を残すことができます。
また可能であれば、撮影した写真を添付して電子メールによる連絡をしておくといいです。そうすることで「3ヶ月以内に連絡がなかったため、荷物の賠償責任はない」などの言い逃れを防ぐことができます。
引越し業者の本社に破損・汚損トラブルを連絡する
多くの場合、破損・汚損について連絡したら、スタッフによる状況確認が行われます。その後、補償の見積りを受けることになります。
ただ現場スタッフからしてみれば、荷物や内装の破損・汚損が発覚すると人事評価が下がるリスクがあります。そのため中には、現場スタッフに連絡してもトラブル対応してもらえないケースがあります。
このような場合、荷物の運搬を依頼した業者の本社に荷物の破損・汚損について相談しましょう。引越しトラブルの放置は会社の評判に関わるため、本社に連絡すればトラブル対応に動きが出るケースがほとんどです。
破損・汚損トラブルの解決方法を理解し、賠償を請求する
引越しによって荷物や内装などが破損・汚損した場合、修理による補償を受けられるのが基本です。修理が難しい場合は、品物の交換や経年劣化を考慮した金額を現金で補償してもらうこともできます。
なお荷物などの破損・汚損トラブルについては、担当してもらった現場スタッフに伝えるのが基本です。現場スタッフがトラブルに対応してくれない場合、引越し業者の本社に相談するとトラブルが解決しやすくなります。
ただ貴重品や美術品などを引越し荷物として運んでもらった場合、補償を受けることはできません。これらの荷物は引越し荷物の補償対象外であるためです。同様に、植木やペットなどを事前相談なしに引越し荷物に紛れ込ませた場合も補償を受けられません。
また、破損・汚損について補償を受けるためには、荷物の受取から3ヶ月以内に業者へ連絡する必要があります。そのため破損・汚損に気が付いたら、速やかに業者へ連絡しましょう。これらが、荷物や内装を壊されたり傷つけられたりした場合の対処法になります。
引越しのとき、必須となるのが「複数社から見積もりを取ること」です。引越し価格には定価がなく、引越し業者によって見積もり額はバラバラです。そのため複数の業者から見積もりを取るだけで、何万円も節約できます。
例えば、以下は5人家族の長距離引越しで見積もりを取ったとき、4社に見積もりを依頼しました。このとき、最高額は438,264円でした。一方、最も安い業者は198,720円であり、半額以下の料金になりました。複数業者へ依頼しないだけで、大きな損をすることになります。
ただ、自ら業者を探して電話をかけるのは大変です。そこで、必要な情報を入力するだけで完了する一括見積もりを利用しましょう。
・引越し侍
引越し侍ではアート、サカイ、日通、アリさんなどの大手が登録しており、入力作業は30秒で終わります。無料で利用できるサービスなので気軽に利用できます。
さらに大手だけでなく、中小の引越し業者も登録しているので低価格な引越しが可能になります。最大15社まで見積依頼でき、できるだけ複数の業者の見積もりを取り、最安値で引越しをしたい人に適しています。
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また、同じ日であっても午前の引越しを午後にするだけでも値引きが可能です。こうした価格交渉術について解説しています。
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多くの場合、引越し業者は割引制度を設けています。ただ、残念ながらこうした割引はまったく意味がありません。引越しには定価が存在しないからです。
この事実を認識すると、なぜ引越しで何社もの見積もりを取らなければいけないのか理解できるようになります。格安引越しをするためにも、知識をつけなければいけません。
安い引越しを実現する、訪問見積もりのコツや流れ、事前準備
見積もりのとき、必ず訪問見積もりとなります。電話やメールだけの見積もりでもいいですが、ほぼ100%の確率で失敗します。追加料金が必要になり、非常に高額な引越しになるのです。
ただ、訪問見積もりではどのような流れになるのでしょうか。またどう接すればいいのでしょうか。引越し業者の営業マンが訪問に来たときの対処法について確認していきます。
見積もり比較サイトでの引越しはおすすめ!料金はいくら安いのか
実際に見積もりを依頼するとき、自ら業者を調べて電話するのは非常に手間です。そこで、ほとんどの人が一括見積サイトを利用します。
ただ、そのような見積もり比較サイトが適切なのでしょうか。利用方法に違いはあるのでしょうか。これらを明らかにしていきながら、おすすめの見積もり比較サイトを紹介していきます。