マイホームの購入後に転勤・転職で引越すことになった場合、持ち家から離れて暮らすことになります。このとき、持ち家の取り扱いについては「空き家にしておく」「売却する」「賃貸に出す」の3つの手段があります。

これらには、それぞれメリット・デメリットがあります。あなたに合わない選択肢を選ぶと一生後悔することにつながるので、慎重に選ばなければなりません。

また住宅ローンの残額がある場合、金融機関に住所や職場の変更について届け出ることになります。ただこのとき、変更手続きをすることで「契約時と異なる状況になったため、住宅ローンの契約を継続できない」といわれると大変困ることになります。

それでは、マイホームの購入後に転勤・転職で引越しとなった場合、持ち家をどのようにしたらいいのでしょうか? また転職などによって仕事や住所が変わった場合、住宅ローンの支払いはどうなるのでしょうか?

ここでは転勤・転職で引越す際のマイホームの取り扱い方法や、仕事・住所が変更となった際の住宅ローンについて解説していきます。

持ち家を賃貸に出すメリットとデメリット

転勤・転職で持ち家から引越すことになったとき、一番最初に考えるのが賃貸物件としての活用でしょう。

持ち家を賃貸に出せば家賃収入が発生します。そのため「家賃収入を住宅ローンなどの支払いに充てれば、引越しても実質負担なしで持ち家を維持することができる」と考える人は非常に多いです。

このとき教科書的には、住宅ローンの残額が多いのであれば、持ち家を賃貸物件として提供するのは避けた方がいいです。持ち家を賃貸すると、住宅ローンを利用できなくなるためです。

住宅ローンは「購入した家にあなたが住む前提で貸してくれているお金」です。そのため、住宅ローンの残額が残っている状態で持ち家を賃貸に出すことは契約違反となります。参考までに以下は、銀行が提供している住宅ローンの約款です。

ここには「契約者本人が住む物件を取得する資金に用いるとして住宅ローンの契約を締結する」と記されています。つまり、あなたが住宅ローンを組んで購入した家に居住しない(=物件を賃貸する)と住宅ローンの契約違反となるのです。

ただ実際には、住宅ローンを支払いながら持ち家を賃貸に出している人は多いです。銀行に持ち家を賃貸していることがバレるケースはほとんどないためです。

当然ながら、マイホームを賃貸に出すと部屋が汚れるリスクを伴います。ただ家賃を住宅ローンや固定資産税の支払いに充てることができるため、持ち家を維持するための経済的な負担を抑えることができます。

そのため「住居費を二重で支払う経済的な余裕はないが、マイホームを売りたくない」と考えるのであれば、持ち家を賃貸に出すことを検討しましょう。

契約満了時に退去する理由がある人を優先的に借主に選ぶ

ただマイホームの賃貸では、契約満了時になっても入居者に退去してもらえず、大家が持ち家に帰れずに困り果てるトラブルは非常に多いです。

そのため持ち家を賃貸に出す際には、「契約満了時までに退去する理由がある人(=契約期間を守る可能性が高い人)」を借主に選んで持ち家を貸し出しましょう。

例えば期限付きの異動や出向で引越し先を探している人は、転勤・出向期間が終わったら退去となります。また通学のために家を借りる人だと、学校卒業のタイミングで退去してもらいやすいです。

このような人を借主に選べば、「借主に退去してもらえず持ち家に帰れない」という事態に陥るリスクを減らすことができます。

また、事前に期限付きの賃貸契約を考えなければいけません。このとき、あなたがいずれマイホームに戻る予定なのであれば、相場よりも家賃を低めに設定しましょう。期限付きの賃貸契約だと、家賃を安くしないと借り手が付かないためです。

なおマイホームを賃貸に出す際には、不動産業者に仲介を依頼します。あなたの希望や審査条件を事前に業者へ伝えておけば、それを踏まえて入居者の審査を行ってくれます。複数の仲介業者に依頼し、対応のいい業者を選びましょう。

空き家の期間が長くなりそうなら早めに売却する

一方で持ち家に戻る予定がなかったり、賃貸で住む人を見つけられず持ち家を空ける期間が長くなったりしそうなのであれば、家を売ることを検討した方がいいです。

持ち家を維持しながら転勤・転職先で暮らすと、住居に関する費用が二重で発生します。固定資産税の支払いが毎年発生しますし、住宅ローンの残額があればローンも支払うことになります。

また引越してから家を手放すとなると、経済的な損失が大きくなります。家を売る際には、査定や契約などのために何度も旧居地域へ出向くことになるためです。スケジュールによっては、宿泊費がかかる可能性もあります。

さらに、家の設備については使い続ける前提で作られているため、空き家の期間が長くなると通常よりも傷みが早くなります。特に一軒家だと、雨風や雑草、害虫などによって家そのものが傷みやすいです。

当然ながら、築年数が浅くても、傷みがひどければ家の資産価値は低下します。空き家期間を経てから持ち家を売るとなると、売却価格が安くなりやすいのです。

このような理由から、持ち家から離れる期間が長かったり持ち家に戻ってくることができる保証がなかったりするのであれば、引越し前に売った方が経済的に損しにくいです。

なお、家の売却には3ヶ月~半年ほどかかるのが一般的です。転職や転勤だと、家が売れるまで引越さないことは不可能であるため、遠隔地からの売却にも対応した不動産業者を選びましょう。例えば、以下のような全国展開している不動産業者だと、遠隔地からでも持ち家を売りやすいです。

このような不動産業者を利用して、引越し前に物件の査定まで終わらせておきましょう。そうすれば、引越し後はメールや郵送のやり取りを行うだけで持ち家を売却することができます。

期限付きの配属なら空き家にしておく

なお「家を賃貸に出せないが、手放すのも避けたい」となると、家を空き家にしておくことを検討することになります。実際、期限付きの転職・転勤で引越すのであれば、多少の出費を覚悟してでも家を維持する価値があります。

ただ当然ながら、住居費を二重で支払うと経済的な負担がかなり重くなります。そのため転勤・転職先で暮らしながら持ち家を維持したいのであれば、会社の家賃補助や社宅制度について調べてみましょう。

転勤がある会社のほとんどは、引越しを伴う異動に対して社宅や家賃補助などの制度を用意しています。このような補助制度を利用すれば、転職・転勤先での住居費を抑えて持ち家を維持しやすくなります。

このとき会社の住宅補助について調べる際には、あなたが総務などの担当部署に直接問い合わせることをおすすめします。現場の従業員は会社の補助制度について理解していないケースが多いためです。

参考までに、私は家を購入して2年で遠方へ転勤となったため、直属の上司に「持ち家がある状態で転勤する際の住宅補助」について確認しました。このとき、上司には「転勤での引越し費用は支給されるが、住宅補助制度は存在しない」と言われました。

ただ会社の総務に連絡して事情を説明したところ、持ち家がある状態での転勤だと借り上げ社宅制度を利用できることが判明しました。現場の上司は家を所持していなかったため、持ち家がある状態での転勤制度について知らなかったのです。

会社の制度を利用すれば、転職・転勤で引越すことになっても低コストで持ち家を維持できる可能性があります。そのため持ち家を売らずに保持したいのであれば、まずは会社の総務へ住宅補助制度について確認しましょう。

転勤・転職で持ち家を離れる際の住宅ローン

それでは持ち家を維持するとなったとき、住宅ローンの支払いはどうなるのでしょうか。

住宅ローンを借りる際には収入や勤務先などを基準に返済能力についての審査が行われます。そのため中には、「転職によって職場や収入が変わると、住宅ローンの審査結果が取り消される(=借りたお金を一括返済する)のではないか」と心配する人がいます。

確かに、住宅ローンを組んだ直後や審査中に転職した場合、審査内容が取り消されることがあるのは事実です。

ただ住宅ローンの審査中や審査直後でなければ、基本的に住宅ローンを借りた後に転職しても住宅ローンの審査結果が取り消されることはありません。住宅ローンの金利もそのままです。

むしろ住宅ローンの審査取り消しを心配して住所変更をしないと、変動金利による支払い額変更の書類などが自宅に届かなくなります。

このような書類が自宅に届かないと、支払金額の把握が難しくなって支払い延滞(=信用を失う)リスクがあります。このような事態を避けるためにも、転職先と新住所を必ず金融機関へ申告しましょう。

契約者が持ち家から引越すと住宅ローン控除の対象外となる

このように、転勤や転職によって持ち家から引越す場合であっても住宅ローンの支払いは継続されます。一方で住宅ローンの控除については、契約者が持ち家から引越すと適用外となるのが原則です。

住宅ローン控除は、購入した自宅に住民票がある状態で適用となります。そのため転勤・転職で引越して住民票を移した場合、住宅ローン控除を受けることはできません。

このとき引越し後に住民票を移さなければ、持ち家が空き家となっていても住宅ローン控除の手続きは可能です。そのため中には、住民票を新居へ移さずに住宅ローン控除を受け続けようとする人がいます。

ただ基本的に、住宅ローン控除の継続を目的に契約者本人の住民票を移さないという行為は避けた方がいいです。

まず、住民票を新居に移さないと、選挙や運転免許の更新書類などが自宅に届かなくなります。子供がいる場合、子供手当を受給や学校関連の手続きもできなくなります。

また、住宅ローン控除を不当に受け続けるために住民票を移していなかったことが発覚すると、税金の返還だけでなく追加徴収を受ける可能性があります。

特に持ち家を賃貸に出す場合、借主があなたの旧住所(あなたの持ち家)に住民票を移動することになります。そうすると同じ住所に住民票が重複することになるため、あなたが住民票を移していないことが自治体にバレることになります。

このように、住宅ローン控除のために住民票を移さないことには多くのデメリット・リスクがあります。そのため、住民票を移さずに住宅ローン控除を不当に受け続けるのはやめましょう。

・引越し後も住宅ローン控除を継続できるケース

ただ中には、契約者が持ち家から引越しても住宅ローン控除を受け続けられるケースがあります。

例えば、引越したら速やかに住民票を移動するのが原則ですが、例外として1年未満など短期間の引越しであれば住民票の移動をしないことが法的に認められています。

そのため配属期間が1年ほどであれば、住民票を移動しなくても問題ありません。住民票を移動する必要がないので、住宅ローン控除もそのまま受け続けることができます。

転勤・転職で持ち家からの引越しを理解し、後悔しない選択をする

持ち家がある状態で転勤・転職による引越しが生じた場合、「マイホームを賃貸に出す」「家を売る」「空き家にしておく」の3つの手段があります。

持ち家を賃貸に出す場合、賃貸契約に期限を設けることになります。期限までに入居者が退去しないとあなたがマイホームに戻れなくなるので、契約満了時に退去する理由がある人を借主に選びましょう。

また持ち家から離れる期間が長かったり居住地に戻ってくることができる保証がなかったりするのであれば、早期に売却することを考えた方がいいです。ただ配属期間が決まっていたり、会社から住宅補助が支給されたりするのであれば、持ち家を空き家にしておいてもいいでしょう。

このとき、転勤・転職しても住宅ローンの契約はそのまま継続されます。また契約者が持ち家を離れると住宅ローン控除の対象外となるのが原則ですが、短期間の引越しであれば控除を継続することができます。これらが、持ち家から引越す際の考え方です。


引越しのとき、必須となるのが「複数社から見積もりを取ること」です。引越し価格には定価がなく、引越し業者によって見積もり額はバラバラです。そのため複数の業者から見積もりを取るだけで、何万円も節約できます。

例えば、以下は5人家族の長距離引越しで見積もりを取ったとき、4社に見積もりを依頼しました。このとき、最高額は438,264円でした。一方、最も安い業者は198,720円であり、半額以下の料金になりました。複数業者へ依頼しないだけで、大きな損をすることになります。

ただ、自ら業者を探して電話をかけるのは大変です。そこで、必要な情報を入力するだけで完了する一括見積もりを利用しましょう。

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