どのような作業内容であっても、発生するトラブルを事前に察知するのは難しいです。このとき、引越しは不動産業者や引越し業者など「引越しのプロ」に仕事を任せるため、「トラブルなく引越しを完了できる」と考える人は非常に多いです。

ただ、「引越しをした人の約1割がトラブルを経験している」というデータがあります。引越しのトラブルは決して珍しいものではないのです。

それでは引越しトラブルに遭ったら、どのようにして対応すればいいのでしょうか? また引越しのトラブルは、どこに相談すればいいのでしょうか?

ここでは引越しトラブルの対処法と、引越しトラブルの相談先について解説していきます。

引越しトラブルはお金と時間の被害が大きい

引越しはお金と時間がかかるイベントです。そのため引越しでトラブルに遭遇すると、お金や時間の被害を受けます。

例えば、敷金についての問題は代表的な引越しトラブルの一つです。一般的に、部屋を過度に汚さなければ入居時に預けた敷金の一部は返金されます。

ただ中には、借主の責任範囲を超えた修繕費用を請求する大家もいます。修繕費用の負担額が大きくなると、その分だけ敷金の返金額が少なくなります。場合によっては、修繕費用を追加で請求されるケースもあります。

通常、敷金は家賃の1~2ヶ月分を支払います。そのため敷金返金についてのトラブルでは、金銭的な損害が大きくなります。

引越し業者との間でも金銭的なトラブルが起こる

また、引越しでは引越し業者とのトラブルも多いです。引越し業者の現場スタッフは荷物を傷つけずに運搬する能力に長けています。

ただ当然ながら、時には荷物を破損・汚損してしまうケースがあります。損傷した荷物によっては、被害金額が数万~十数万円に至るケースもあります。

また「引越し業者が約束の日時に来ない」というトラブルも多いです。業者が予定時刻に到着しないと、そのあとに控えている予定がすべて後ろ倒しになります。場合によっては、交通機関のキャンセルなど金銭的な損害を被るケースもあります。

他にも引越し業者とのトラブルでは、営業スタッフと現場スタッフの連係ミスや営業スタッフの見積りミスなどによって金銭的な被害が発生するケースもあります。

正当性を主張するべき引越しトラブル

このように引越しトラブルには、さまざまなパターンがあります。ただ、どのようなトラブルであっても、引越し業者に落ち度がある場合は補償を受けられるのが基本です。

例えば訪問見積もり時に、口頭で無料オプションを提示してくれる営業スタッフは多いです。ただ場合によっては、契約書に無料オプションについて記載されておらず、現場スタッフに対応してもらえないケースがあります。

このとき、「書面に無料サービスについて記載されていないから証拠を示せず、正当性を主張できない」と考える人は多いです。ただ口頭での約束であっても、契約時に提示していた条件を反故にするのは契約違反となります。

そのため契約書にサービス内容の記載がなくても、「営業スタッフに無料オプションを提示されて、その内容で契約した」と伝えれば対応してもらえるケースがほとんどです。

参考までに、私が過去に引越しの訪問見積もりを受けた際、古くなったタンスを処分する予定だということを伝えると「いま契約してくれれば無料で引き取る」と営業スタッフに言われました。ただ、引越し当日になって運搬スタッフから「処分には追加料金がかかる」といわれました。

このとき「営業スタッフに無料での引き取りを提示され、その条件で契約した」と主張したところ、その場で運搬スタッフは営業スタッフに事実確認を行い、最終的には無料で引き取ってもらいました。

このように、営業スタッフと現場スタッフの連係ミスによるトラブルは非常に多いです。証拠がないからと泣き寝入りせず、あなたの正当性を主張しましょう。

高額な修繕費用を請求されたら、明細とガイドラインを確認する

似たようなことは敷金にもいえます。賃貸物件の借主には、「部屋を元通りにして大家へ返す義務(=原状回復義務)」があります。そのため「入居時に預けた敷金が返金されなかったり、修繕費用を上乗せで請求されたりしても仕方がない」と考える人は多いです。

ただ、部屋を改造したり過度に汚したりしたのでなければ、入居時に預けた敷金が返金されるのが一般的です。あなたの退去後に発生した修繕のすべてをあなたが費用負担する必要はないためです。

まず、国土交通省が定める原状回復ガイドラインでは「通常通りの暮らしで発生した傷・汚損は、大家負担で修繕する」ことを求めています。

例えばベッドやソファなどをカーペット・クッションフロアなどの上に設置すると、家具の重みでへこみが発生します。このとき、家具の設置は生活する上で必要不可欠であるため、家具の設置によるへこみは「通常の暮らしで発生する損耗(=大家が修繕費用を負担)」となります。

参考までに以下は、原状回復ガイドラインの「修繕の費用負担」についての記載です。

ここには、家具の設置による床やカーペットのへこみ・設置跡の修繕費用は賃貸人(大家)が負担すると記載されています。普通に暮らしていて発生する修繕については、あなたが費用負担する必要がないのです。

またあなたの過失によって修繕が必要になった場合であっても、修繕費用の全額を負担する必要がないケースがほとんどです。

まず、借主の修繕費用の負担については経年劣化が考慮されます。例えば壁紙やカーペットなどの耐用年数は6年とされているので、3年居住していれば修繕費用の負担は半額となります。6年以上居住していればあなたが修繕費用を負担する必要はなくなります。

また、あなたの過失で修繕の必要が生じた場合、あなたが負担しなければならないのは修繕が発生した部分のみです。例えば壁紙の一部に傷をつけてしまった場合、傷がある壁紙1枚分の張替え費用があなたの負担となります。

このようなことから一般的な暮らしをしているにもかかわらず高額な修繕費用を請求された場合、本来であれば負担する必要のない範囲まであなたの費用負担となっている可能性があります。

そのため敷金の返金がなかったり、敷金以上の修繕費用を請求されたりした場合、請求の内容と内訳、原状回復ガイドラインを確認して大家に「不当な請求である」と主張しましょう。

契約書や約款などの内容が最優先となる

ただどのような場合であっても、契約書や約款などに記載されている内容が優先となります。

例えば原状回復ガイドラインに沿わない請求であっても、契約書に費用負担に関する記述がある場合、あなたが費用を負担しなければなりません。原状回復ガイドラインはあくまで指針であり、契約書の内容を覆す効力はないためです。

例えば原状回復ガイドラインでは、クリーニング費用の支払いは借主の義務としていません。ただ「クリーニング費用〇円は借主負担とする」という書面での内容で契約している場合、借主にはクリーニング費用の支払い義務が生じます。

契約書にこのような記述がある場合、確認サインをしている時点で支払いを了承していることになるため、支払いを拒否することは契約違反となります。

そのため原状回復ガイドラインに沿わない請求であっても、契約書に記されている内容であれば支払いを拒否できません。諦めて請求を受けましょう。

また引越し荷物の運搬の際、宝石や貴金属などの貴重品や絵画などの美術品や骨董品などは「特殊な荷物」扱いとなり、これら荷物を通常荷物として運搬した際に破損・紛失が生じても、補償されません。

これは、国土交通省による標準引越運送約款で定められています。参考までに以下は、標準引越運送約款の一部です。

ここには、「貴重品や壊れやすいものなどを業者に事前相談なしに運搬してもらった場合、損害賠償を請求できない」という旨が記されています。

このように、業者に過失があるように思える場合であっても、契約書や約款などに反していなければ補償を請求できないので注意しましょう。

現場スタッフにトラブル対応してもらえない場合の相談先

一方で、契約書や約款などを確認した上で業者に非があるようであれば、正当性を主張することで補償を受けられるのが基本です。

ただ中には、担当スタッフに正当性を主張しても取り合ってもらえないケースがあります。このような場合、まずは約款やガイドライン、契約書などを確認して自分の主張が正当であることを業者に伝えましょう。

例えば「約款にはこのように記載されている」「ガイドラインに照らし合わせると、この請求は不当である」などと伝えます。多くの場合、この段階で話が進展するはずです。

また現場の作業員や担当スタッフに対応してもらえないようであれば、本社に連絡しましょう。引越し業者にとってトラブルの放置は信用問題にかかわります。そのため本社や現場スタッフの上司にトラブルの事実が伝われば、対応してもらえるケースがほとんどです。

消費者センターや弁護士に相談する

本社に連絡しても対応してもらえないようであれば、消費者センター(消費生活センター・国民生活センター)や弁護士に相談する手段があります。

これらのうち、消費生活センター・国民生活センターでは、トラブルの解決方法について無料で相談できます。また退去費用などの不動産トラブルであれば、不動産適正取引推進機構によるトラブル介入を受けられるケースもあります。

ただ消費生活センターは、トラブルそのものを解決する機関ではありません。そのため基本的には、アドバイスをもとにあなた自身が業者と交渉していくことになります。

一方で弁護士に相談すれば、確実にトラブルを解決することができます。ただ、弁護士に引越しトラブルを解決してもらうと、高額な費用がかかるデメリットがあります。

そのため引越しトラブルを弁護士に相談する際には、まず初回相談無料の弁護士事務所や法律相談センターなどを活用して、弁護士の介入が必要かどうかの判断をしてもらいましょう。

その上で、被害金額が大きいなど多少の出費を覚悟してでもトラブルを解決したいのであれば、弁護士にトラブル解決を依頼することを検討するといいです。

あなたの正当性を主張し、しかるべき補償を受ける

引越しでは敷金や荷物の破損など、さまざまなトラブルが起こることがあります。

このとき、業者側に落ち度がある場合、補償を受けられるのが基本です。そのため引越しトラブルが起こったら、あなたの正当性を証明するためにも、まずは契約書や約款などを確認しましょう。

ただ現場の従業員にとって引越しトラブルは評価に関わるため、対応してもらえないケースがあります。このような場合、本社に連絡してトラブル内容を伝えましょう。

本社に伝えてもトラブルが解決されなかったり本社窓口がなかったりする場合、消費生活センターや弁護士などに相談する手段があります。まずは無料で相談してトラブル解決のアドバイスをもらいましょう。これが引越しトラブルの対処法の基本です。


引越しのとき、必須となるのが「複数社から見積もりを取ること」です。引越し価格には定価がなく、引越し業者によって見積もり額はバラバラです。そのため複数の業者から見積もりを取るだけで、何万円も節約できます。

例えば、以下は5人家族の長距離引越しで見積もりを取ったとき、4社に見積もりを依頼しました。このとき、最高額は438,264円でした。一方、最も安い業者は198,720円であり、半額以下の料金になりました。複数業者へ依頼しないだけで、大きな損をすることになります。

ただ、自ら業者を探して電話をかけるのは大変です。そこで、必要な情報を入力するだけで完了する一括見積もりを利用しましょう。

引越し侍

引越し侍ではアート、サカイ、日通、アリさんなどの大手が登録しており、入力作業は30秒で終わります。無料で利用できるサービスなので気軽に利用できます。

さらに大手だけでなく、中小の引越し業者も登録しているので低価格な引越しが可能になります。最大15社まで見積依頼でき、できるだけ複数の業者の見積もりを取り、最安値で引越しをしたい人に適しています。

SUUMO引越し見積もり

一般的に引越しの一括見積もりでは登録直後、たくさんの電話がかかってきます。こうした電話が嫌でメールだけで完結したい場合、SUUMO引越し見積もりを利用しましょう。

SUUMO引越し見積もりでは「電話番号の登録が任意」なので、メールだけで見積もりの日程調節が可能です。電話が嫌な場合、リクルート社が運営するSUUMO引越し見積もりが最適です。

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