引越しにはお金がかかります。賃貸物件を借りる際には家賃の5倍ほどの初期費用がかかりますし、引越し業者の利用料金は数万~十数万円ほどが相場です。
このような初期費用を自腹で用意できないのであれば、お金を貯めてから引越しを考えるのが基本です。ただ中には、「お金はないけれど、いますぐ引越しをしなければならない」という人もいるでしょう。このような場合、借金して引越しする手段があります。
それでは引越し費用を借りることを考えたとき、どのような方法があるのでしょうか? また引越し費用を借りる際には、どのような点に注意する必要があるのでしょうか?
ここでは引越しの初期費用を借りる方法と、引越し費用を借金でまかなうときの注意点などについて解説していきます。
もくじ
安定した所得がない人は公的な支援を利用する
引越しをする際には、荷物を運搬したり賃貸物件を契約したりするために多額の費用がかかります。このような引越し費用は、貯金から捻出するのが基本です。
ただ、急に引越しが決まったり引越しせざるを得ない状況に陥ったりすると、引越し費用を貯金でまかなえないケースがあります。このような場合、引越しの緊急性によってはお金を借りて対応することを考えなければなりません。
このとき一般的に、お金を借りるというと銀行や消費者金融の利用を考える人がほとんどです。ただ特に銀行の場合、安定した収入がないと利用できません。
また引越し費用を借金でまかなおうとすると、借り入れる金額が大きくなるため利息の支払い額が多くなります。その結果、借りた後の生活が苦しくなってしまいます。そのため収入が低く生活に余裕がない人は、消費者金融などに手を出すのは避けるべきです。
このとき、住居に倒壊の恐れがあるケースや家庭内暴力から逃げる人など、緊急性の高い理由で引越ししなければならない場合、生活福祉資金貸付制度を利用することができます。
生活福祉資金貸付制度は厚生労働省が管轄している公的な生活支援です。そのため他の手段に比べて金利が低く、返済しやすいメリットがあります。連帯保証人を立てられる場合、無利子でまとまったお金を借りることができます。
また生活福祉資金貸付制度で借りた引越し費用の返済日は、貸付日から6ヶ月後に設定することができます。そのため生活福祉資金貸付制度を利用すると、引越し後の生活が安定してから返済を始めることができます。
これに加えて、生活福祉資金貸付制度で借りた引越し費用は、最長10年かけて返済することができます。1ヶ月あたりの返済額がかなり少なくなるため、家計を圧迫しにくいメリットもあります。
生活福祉資金貸付制度の利用申し込みは自治体の社会福祉協議会で受け付けています。引越しの必要性があるにもかかわらず、引越し費用が足りないのであれば、まずは社会福祉協議会に相談しましょう。
生活福祉資金の借入手続きには時間と手間がかかる
ただ、生活福祉資金の貸付対象となる人であっても、実際にお金を借りるまでには時間がかかります。
生活福祉資金はあくまで公的な支援であるため、引越しの必要性が認められなければ貸付を受けることはできません。例えば「駅から遠い」「広い部屋に住みたい」などの理由による引越しだと、支援(貸付)が必要であると認められないのが基本です。
生活福祉資金の利用の際にはこのような「支援の必要性」を確認する必要があることから、手続きには多くの書類が必要となります。また審査期間も長く、貸付を受けられるまでに1~2ヶ月ほどかかる覚悟が必要です。
また、生活福祉資金を利用すると貸付後にも社会福祉協議会へ出向く必要があるため、役所の開庁時間である平日昼間に何度も時間を作らなければなりません。生活福祉資金制度の利用には、時間と手間がかかるのです。
借りたお金を家具家電の購入などに使用することはできない
また引越し費用の捻出を目的に生活福祉資金の貸付を利用する場合、「総合支援資金・住宅入居費」という項目の貸付を受けることになります。
このとき、住宅入居費は住宅の賃貸契約を結ぶための費用を貸し付ける項目です。例えば以下は、厚生労働省の生活福祉資金に関するQ&Aです。
ここには、「総合支援資金の住宅入居費は、敷金礼金や仲介手数料など、住宅の賃貸契約を結ぶために必要な経費が対象」となっています。つまり住宅入居費として借りたお金は、賃貸物件を契約する初期費用にしか使えないのです。
生活福祉資金の貸付を受けた場合、貸付の事由に利用したことを証明できる書類を提出する必要があります。他の用途にお金を使用したことが判明すると、返還を求められます。
このとき、総合支援資金の運用は各自治体の社会福祉協議会が行っています。そのため自治体によって住宅入居費の対象となる経費の範囲が異なります。例えば賃貸契約にかかる費用のみが対象となる自治体もあれば、引越し業者の利用料金に住宅入居費を利用できる自治体もあります。
ただ、どの自治体であっても家具家電の購入費は住宅入居費の対象とならないケースがほとんどです。引越しに伴い家具家電を買いそろえる必要がある場合、生活支援費や緊急小口資金など別の総合支援資金を利用することになります。
利用する総合支援資金の種類が多くなると、その分だけ必要書類が多くなり、手続きにも時間がかかることを覚悟する必要があります。
引越し費用を払えない人の借金方法
ただ、生活福祉資金貸付制度は公的な生活支援が目的の制度であるため、「支援が必要な世帯である」と認められなければ貸付を受けられません。
具体的には、市町村民税が非課税となる程度の低所得者世帯や障がい者世帯、高齢者世帯が貸付の対象となります。健康で安定した収入がある世帯だと、生活福祉資金貸付制度を利用できないのが基本です。
このような人が引越し費用を借りようとした場合、金融商品を利用する必要があります。具体的には、以下のような3つの手段があります。
- 銀行のローン
- 消費者金融
- クレジットカードなどでの分割払い
それぞれについて、以下で解説していきます。
銀行で引越しローンを組む
銀行の引越しローンは、他の借金方法よりも金利が低いのが特長です。具体的には、3~14%ほどの金利で利用できます。
また、事前に返済期間と毎月の支払額を決められるため、計画的に返済しやすいメリットもあります。そのため公的支援を除き、銀行の引越しローンはもっとも損しない借金方法だといえます。
ただ銀行の引越しローンを利用するためには、営業時間に銀行へ出向く必要があります。そのため引越しローンを組む場合、平日昼間にまとまった時間を確保する必要があります。
また、銀行ローンの審査には1ヶ月ほどの時間が必要です。そのため引越しの緊急性によっては、ローンによる借入が引越しに間に合わないケースがあります。
さらに銀行のローンはクレジットカードなどに比べて審査が厳しく、信用情報によっては利用できないケースもあることを覚えておきましょう。
消費者金融で不足金額を借りる
これに対して消費者金融は、銀行ローンよりも審査が緩めです。そのため銀行ローンを利用できない人でも借り入れできるケースが多く、審査時間も短いです。早いケースだと申し込み日に融資を受けられるため、借入が引越し日に間に合わないという事態に陥りにくいです。
また消費者金融の中には、初回契約から1ヶ月ほど金利なしで借り入れできる業者もあります。1ヶ月以内に返済すれば、利息なしでお金を借りることができるのです。
さらに消費者金融で引越し費用を借りた場合、お金を工面できたタイミングで追加返済できます。自分のタイミングで返済額を増やせるため、うまく利用すれば利息の支払い額を抑えることができます。
ただ、消費者金融の初回契約で借りられる金額は低く、10~30万円ほどとなるケースが多いです。そのため場合によっては、引越し費用を賄いきれないケースがあります。
また初回契約でなかったり無利息期間を超えて返済をしたりする場合、銀行ローンよりも金利が高くなります。具体的には15~18%ほどの利息が発生するため注意が必要です。
クレジットカードの分割払いを利用する
これに対してクレジットカードの分割払いの金利は、銀行ローンよりは高いものの、消費者金融よりも低いです。具体的には、12~15%ほどの金利で利用できます。
そのため消費者金融で借りたお金の返済期間が長くなる場合、クレジットカードの分割払いの方が利息の支払い額が少なくなるケースがあります。
またクレジットカードの分割払いは、利用しやすいのが最大のメリットです。
例えば、引越し費用を手持ちのクレジットカードで支払えばいいため、銀行に出向く必要がありません。また審査のために書類を準備する必要もなく、審査待ちの期間も発生しません。クレジットカードの分割払いは、手軽に利用できるのが最大のメリットです。
ただ、引越し費用をクレジットカードで支払える業者は限定されています。特にクレジットカードでの支払いには業者側に手数料が発生するため、格安で利用できる引越し業者はクレジットカード払いを採用していないケースがほとんどです。
またクレジットカードを利用できる業者であっても、カード支払いを選択すると引越し費用の値下げ交渉が成功しにくいことを覚悟する必要があります。業者側に発生する手数料を相殺するために、値引きに応じないケースが多いためです。
そのためクレジットカードの分割払いは手軽であるものの、現金で支払う場合に比べて総支払額が多くなることを覚悟する必要があります。
引越し費用を借金する注意点
なお一般的な借金方法だと、借入期間が短いほど支払う利息の額が少なくなります。そのため、借りたお金は可能な限り短い期間で返済するのが基本です。
また、必要な引越しに少額ローンを組んだとしても、ローンの利用経験があるとお金が必要になったときに借金に頼ってしまいやすくなります。つまり借金癖が付くのです。
そのため、借りたお金で引越し費用をまかなう場合、借金癖が付かないように「手持ちのお金で工面する」という意識を忘れないようにしましょう。
初期費用を抑える努力をするのは基本
また引越し費用が足りないと感じたら、借金する前に初期費用を減額できないか考えましょう。引越しにかかる初期費用は、さまざまな方法で節約できます。
例えば賃貸物件を借りる際、敷金礼金なし物件や入居後の家賃を一定期間免除してくれるフリーレント物件を選んだり、仲介手数料の低い不動産業者を利用したりすれば、賃貸物件契約時の初期費用を大きく減額することができます。
また荷物の運搬費用は、複数の引越し業者に見積もりを依頼すれば数万円の値引きを受けられるのが基本です。引越し業者からしてみれば、引越し依頼がなければ売り上げが立たないため、大幅な値引きをしてでも自社で契約してもらう必要があるためです。
引越し後に必要となる家具家電が手元にないのであれば、地域のコミュニティサイトやリサイクル掲示板などを利用しましょう。基本的には地域リサイクルを利用する人は家具家電の処分に困っているケースがほとんどであるため、無料で譲り受けられるケースが多いです。
このようにして初期費用を節約できれば、手持ちの資金で引越し費用を支払える可能性があります。また初期費用に充てられる資金が足りなくても、借金を少額で抑えることができます。その結果、利息の支払い額も少なくなり、経済的な負担を軽減できます。
初期費用を節約した上で借金を検討する
引越しの必要性があるにも関わらず費用が足りないとき、お金を借りて対応することを考えなければなりません。このとき、引越しの緊急性が高く安定した収入がないのであれば、まずは公的な支援の貸付を考えるため、社会福祉協議会に相談しましょう。
一方で安定した収入があるのであれば公的資金の貸付を利用できないため、銀行の引越しローンや消費者金融、クレジットカードの分割払いなどを利用することになります。これらのうち、もっとも金銭的な損が少ないのは銀行の引越しローンです。そのため、まずは引越しローンの利用を検討しましょう。
また、借りたお金を1ヶ月以内に返せる見込みがあるのであれば、消費者金融を利用することで利息額をゼロにすることができます。他には、トータルの支払い金額が大きくなってでも手軽に審査なしで対応したいのであれば、クレジットカードの分割払いを選びましょう。
いずれの場合であっても、まずは初期費用の節約を試みることが大切です。そうすることで借りる金額が少なくなり、利息の支払い額を減らすことができます。
引越しのとき、必須となるのが「複数社から見積もりを取ること」です。引越し価格には定価がなく、引越し業者によって見積もり額はバラバラです。そのため複数の業者から見積もりを取るだけで、何万円も節約できます。
例えば、以下は5人家族の長距離引越しで見積もりを取ったとき、4社に見積もりを依頼しました。このとき、最高額は438,264円でした。一方、最も安い業者は198,720円であり、半額以下の料金になりました。複数業者へ依頼しないだけで、大きな損をすることになります。
ただ、自ら業者を探して電話をかけるのは大変です。そこで、必要な情報を入力するだけで完了する一括見積もりを利用しましょう。
・引越し侍
引越し侍ではアート、サカイ、日通、アリさんなどの大手が登録しており、入力作業は30秒で終わります。無料で利用できるサービスなので気軽に利用できます。
さらに大手だけでなく、中小の引越し業者も登録しているので低価格な引越しが可能になります。最大15社まで見積依頼でき、できるだけ複数の業者の見積もりを取り、最安値で引越しをしたい人に適しています。
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この事実を認識すると、なぜ引越しで何社もの見積もりを取らなければいけないのか理解できるようになります。格安引越しをするためにも、知識をつけなければいけません。
安い引越しを実現する、訪問見積もりのコツや流れ、事前準備
見積もりのとき、必ず訪問見積もりとなります。電話やメールだけの見積もりでもいいですが、ほぼ100%の確率で失敗します。追加料金が必要になり、非常に高額な引越しになるのです。
ただ、訪問見積もりではどのような流れになるのでしょうか。またどう接すればいいのでしょうか。引越し業者の営業マンが訪問に来たときの対処法について確認していきます。
見積もり比較サイトでの引越しはおすすめ!料金はいくら安いのか
実際に見積もりを依頼するとき、自ら業者を調べて電話するのは非常に手間です。そこで、ほとんどの人が一括見積サイトを利用します。
ただ、そのような見積もり比較サイトが適切なのでしょうか。利用方法に違いはあるのでしょうか。これらを明らかにしていきながら、おすすめの見積もり比較サイトを紹介していきます。