小中学生であれば、親の転勤・引越しなどで居住地が変わっても、引越し先の学校へ転校することができます。小中学校は義務教育であり、この年齢に相当する子は教育を受けられない事態に陥ることはありません。
一方で高校は義務教育ではありません。そのため、さまざまな制度・仕組みが小中学校とは異なります。
それでは引越しによって居住地域が変わった場合、高校を転校することは可能なのでしょうか? また高校生が転校するためには、どのようにしたらいいのでしょうか?
会社命令であれば、引越しを避けられない社会人がほとんどです。そうしたとき、引越しで高校生のいる家庭はどのように考えればいいのか解説していきます。
もくじ
実際のところ、高校の転校は難しい
子供が小学生や中学生の場合、転勤による引越しでの転校手続きは比較的容易です。冒頭で述べたように、小学校・中学校は義務教育であるためです。そのため小学生・中学生であれば、日本のどの地域へ引越しても、所定の手続きを済ませるだけで居住地の学区にある学校に通うことができます。
また学校によって学力レベルの差はあるものの、カリキュラムは一定であり留年することもありません(公立の場合)。
このとき、現在の日本では高校へ進学する人がほとんどです。そのため「高校は義務教育の延長である」と考え、高校も小中学校と同様に容易に転校できると思っている人は多いです。
ただ高校の扱いとしては、大学などと同じく任意の教育です。そのため、高校の転校は小中学校と仕組みが大きく異なります。高校を転校するためには、さまざまな条件を満たす必要があるのです。
例えば小中学校であれば、手続きを済ませるだけで転校が可能です。一方で高校だと、転入学試験に受からなければ転校することができません。
転入学試験では基本的に国語と数学、英語の3科目の試験が課され、転入学試験を実施する高校の定期試験を基準にしたレベルの問題が出題されます。中には、期末試験をそのまま利用するケースもあります。
また転校時の試験では面接も行われます。これらの結果と現在通っている高校の成績証明書の内容などを合わせて、合否が決定されます。このような転入学試験に落ちてしまうと、転校できずに高校中退となってしまいます。高校は小中学校のように「必ず転校できる」というわけではないのです。
高校転校は転勤などによる遠方からの転居が原則
また他にも、高校の転校では条件をクリアする必要があります。まず、高校を転校するためには「県外からの転入である」のが基本的な条件です。県内での引越しだと公立高校の転校は認められず、通う高校を変える際には再入学(編入)するのが基本です。
実際に以下は、兵庫の教育委員会ホームページに記載されている高校転入学(転校)についてです。
このように兵庫県では、保護者の転勤などによる県外から兵庫県内への一家転住が高校転入学の条件となっています。県内の引越しだと、引越し前の高校に通い続けられると見なされて転校が認められないのが原則です。
ただ、高校の転入についての取り決めは県によって異なります。例えば東京だと、都内での転校について特別な条件はありません。
また北海道は一家転住が高校転校の条件となっていますが、学区外であれば道内での引越しでも転校が可能です。北海道はかなり広く、道内の引越しであっても引越し先によっては通学が不可能な距離になるためです。
そのため県内遠方への引越しによる高校の転校を考えている人は、まず住んでいる地域の教育委員会に問い合わせてみましょう。都道府県や引越し距離などによっては、県内引越しでも転校が認められる可能性があります。
引越しのタイミングに関わらず、転入学は新学期となる
また小中学校であれば、手続きさえ済ませれば引越し後すぐに新しい学校へ通い始めることができます。一方で高校は、新学期のタイミングでしか転校できないのが基本です。
例えば6月に新しい地域への引越しを終えても、新しい高校へ通い始められるのは新学期が始まる8月末~9月となります。
そのため学期途中の引越しでは、授業を受けられない期間が生じ、学力に大きな影響が出ることを覚悟する必要があります。
なお、ほとんどの高校では学期途中の転校が認められないものの、地域や高校の校風などによっては学期途中での転校にも柔軟に対応しているケースがあります。そのため学期途中で引越しせざるを得ない場合、まずは引越し先の教育委員会や高校に相談してみましょう。
転校する高校を自由に選べない
なお通常時(転校時ではない場合)の高校受験の際には、学区内にある学校の中から子供に合う学校を選びます。学力や校風、制服などのさまざまな基準で自由に学校を選択することが可能です。
ただ高校を転校する場合、通う高校を自由に選ぶことはできません。各学校ごとに転校生の受け入れ枠が定められており、枠の空きがない高校には転校できないためです。
例えば以下は、東京都の教育委員会ホームページに記載されている学校別の転学受け入れ人数です。
このように転入学の募集人数は1~2名がほとんどです。中には、募集枠がない学校・学年もあります。受け入れ枠のない学校・学年には転校することができません。
また高校を卒業するためには、国が定める必修科目を履修する必要があります。ただ、高校のカリキュラムは学校ごとに異なります。そのためカリキュラムの違いにより、転校後の高校での3学年修了時に必修科目のすべてを履修できない場合、その高校には転校できません。
そうした事態を防ぐため、高校の転校では教育委員会や転校前後の高校でカリキュラムの整合性が確認されます。調査の結果、カリキュラムの違いによって必修科目を履修できないことが判明した場合、該当する高校への転校は認められません。
したがって高校転校を実現するためには、転校前の高校とカリキュラムの整合性が取れており、かつ転校生の受け入れ枠が空いている高校から選ばなければならないのです。
・私立高校への転校条件と流れ
また地域によっては、私立高校から公立高校への転校を認めていないケースがあります。このような場合、私立高校へ通っている子供は、引越し先の私立高校へ転校することを考えなければなりません。
私立高校の場合も、基本的には今まで述べたようなさまざまな問題をクリアしないと転校できません。転校生は学期ごとの募集が基本であり、カリキュラムの整合性が取れる高校でなければ転校できません。また、転校時には必ず転入学試験が実施されます。
ただ私立高校の場合、転校条件が学校によって大きく異なります。転学試験が面接だけのケースがあれば、学区内引越しでも転入可能な高校もあります。
そのため私立高校への転校では、地域の教育委員会ではなく、希望する私立高校に直接問い合わせましょう。
親が転勤・引越しても高校を転校しない方法はあるのか?
このように、高校の転校は小中学校のように簡単ではありません。そのため高校転校の難しさを知った人の中には、親の引越し後も子供が現在の高校に通い続けられる方法を模索するケースが多いです。
このとき、親の転勤時での高校を変えない手段としてもっとも代表的なのが単身赴任です。両親のうち片方が転勤で引越しても、もう片方が子供と一緒に旧居に残れば、子供は現在の高校に通い続けることができます。
また、両親が引越しても学区内に親戚が住んでいるのであれば、親戚宅へ居候させることによって通学を継続することもできます。
ただ中には、単身赴任や親戚宅への居候が難しいケースがあります。このとき、子供に一人暮らしをさせて現在の高校への通学を継続させようとする人がいます。
しかし、ほとんどの公立高校は通常の住宅で一人暮らしをする高校生の通学を認めていません。親が契約している住宅に住んでいる場合であっても、保護者と同居していなければ高校への通学を継続できないのが基本です。
なお、高校生の保護者は必ずしも親・親世代である必要はありません。例えば大学生以上の兄・姉と同居すれば、高校生の保護者として認められるケースが多いです。そのため大学生・社会人の兄・姉がいるのであれば、兄姉との同居を検討してみるといいでしょう。
・高校生寮(学生会館)は、一人暮らしでも高校への通学が認められる
ただ一人暮らしであっても、高校生向けの寮(学生会館)に住んでいる場合は高校への通学が認められるケースが多いです。基本的に寮には責任者が常駐しており、寮の責任者が保護者として認められます。
また学生寮だと、一定のセキュリティが保たれた環境で安心して過ごすことができます。生活に必要な家電・家具が揃っており、食事が保障されている寮も多いです。学生寮であれば、生活力のない高校生であっても、問題なく日常生活を送ることができます。
そのため「親が転勤で引越しを避けられないが、高校生の子供を転校させたくない」という場合、公立や私立を含めて高校生寮への入寮を検討してみましょう。
高校の転校手続きの流れ
前述のように、高校の転校は小中学校のように簡単ではありません。ただ中には、それを踏まえてでも転校せざるを得ない事情を抱える人もいるでしょう。
このような人は、引越しが決まった段階でなるべく早く転校手続きを進めましょう。高校を転校する手順の詳細は各都道府県、高校によって異なりますが、おおむね以下のようになります。
- 現在通っている高校へ相談し、必要書類をもらう
- 引越し先の転校条件や受け入れ可能学校などを調べる
- 転校を希望する高校に問い合わせ・連絡を入れる
- 引越し後、住所や転勤などを証明できる書類を用意する
- 転学試験を受ける
以下に、それぞれについて詳しく解説していきます。
・現在通っている高校へ相談し、カリキュラムの確認と必要書類の発行手続きを進める
高校の転校を実現するためには、該当する子供が「高校生である」という証明が必要となります。つまり、引越す前の地域で高校に通っていたことを証明できる書類が必要です。
また前述のように、転校前の高校とカリキュラムが大きく異なる高校へは転校できません。そのため転校先の高校では、転校前の高校で履修した科目に関する証明書の提出を求められます。
これらの書類は、転校前の高校(現在通っている高校)で発行してもらう必要があります。例えば以下は、東京の全日制高校へ転校する際に必要となる書類一覧です。
ここに記されている書類のうち、下線のある書類は転校前の学校で発行してもらう必要があります。
また、現在通っている高校での履修科目がわからなければ、引越し先で転校できる高校を探すことができません。そのため高校の転校が必要な引越しが決まったら、まずは現在通っている高校へ連絡しましょう。
・引越し先の転校条件や受け入れ可能学校などを調べる
引越し前の学校で現在の履修科目の情報を得たら、引越し先のカリキュラムの整合性が取れた転校可能な高校を探しましょう。
このとき、カリキュラムの整合性が取れた高校を自力で探すのは難しいです。一方で教育委員会に相談すれば、カリキュラムの整合性だけでなく学力レベルなども踏まえて転校可能な高校を紹介してもらえます。
そのため現在通っている高校のカリキュラムがわかったら、引越し先の教育委員会へ連絡して転校可能な高校に関する情報を集めましょう。
・転校を希望する高校に問い合わせ・連絡を入れる
転校先へ提出する書類は高校によって異なります。場合によっては、転校前の学校で発行してもらわなければならない書類が必要となるケースもあります。
引越し後に転校前の高校で書類の発行手続きを進めようとすると、時間がかかってしまいます。場合によっては、転入学試験までに書類を揃えられないリスクもあります。
そのため転校したい高校の目星がついたら、引越し前に転校に必要な書類について問い合わせましょう。
なお引越し先の高校へ転学するためには、転校先高校の入学願書も必要です。引越前に入学願書を取り寄せておくと転校手続きをスムーズに進めることができるため、願書の取り寄せも引越し前に済ませるようにしましょう。
・引越し後、住所や転勤などを証明できる書類を用意する
基本的に、公立高校は学区内に住所がある人しか通えません。そのため公立高校へ転学するためには、学区内に住所があることを証明できる書類が必要です。つまり、引越し先で住所変更手続きを済ませた後の住民票などが必要となります。
新居の住民票は引越し後の住所変更手続き(転居・転入届など)を済ませれば発行可能となります。
このとき、引越し後にはさまざまなシーンで新居の住民票が必要となります。そのため引越し後の住所変更手続きで役所に出向いた際に、少なくとも3~5部ほど住民票を入手しておくと便利です。
また前述のように、公立高校の転校は転勤などによる一家転住が条件となっているケースが多いです。そのため中には、転勤などの「引越しをした理由を証明する書類」を求められるケースがあることも覚えておきましょう。
・転学試験を受ける
必要書類をそろえて入学考査料などの支払いを終えると、転学試験の実施日などについて連絡を受けます。転入学試験は転校先高校の空き教室などで実施されます。
転入学試験の合否は、基本的に試験当日に伝えられるケースが多いです。試験に合格すれば新しい高校への転校が確定し、学校から指定される入学手続きや入学準備を進めていくことになります。
学力ランクを1~2つ下げて転校先高校を選ぶのが基本
このとき、前述のように高校の転校は転入できるタイミングが新学期に限られるのが基本です。これに伴い、高校の転入学試験の日程も限定されます。
地域によっては転入学試験の日程が学校ごとに異なるケースもあります。ただ公立高校の場合、転入学試験の実施日が重なるケースがほとんどです。
そのため基本的には、転入学試験をいくつも受けることはできなません。転入学試験は多くても2校までしか挑戦できず、場合によってはチャンスが一度しかないケースもあります。
実施された転学試験にすべて落ちると、高校の転校が叶わなくなり高校中退となります。
一度高校中退となると、該当する学年で高校へ再入学しなければ高校卒業の資格を得られなくなります。例えば2年生の途中で試験に落ちた場合、2年生の1学期での編入となります。つまり、高校を1年留年したのと同じ状態になります。
そのため高校の転校を考えているのであれば、高校中退となるリスクを低くするため、現在の学力ランクより1~2ランク低い高校を受けるのが一般的です。
なお大学受験などのために高校のランクを下げたくないのであれば、滑り止めとして私立高校への転校も視野に入れましょう。私立高校であれば試験日が高校によって異なるケースが多いため、公立高校の転入学試験に落ちた場合でも転校を実現しやすくなります。
高校は小中学校のように容易に転校できない
義務教育である小中学校と異なり、高校の転校は難しいです。転入学試験に受からなければ転校することはできませんし、一家での県外転勤などの事情がなければ転校が認められないのが基本です。
このとき片方の親だけが単身赴任したり親戚を頼ったりすれば、高校の転校を避けることができます。また通常の一人暮らしだと高校への通学は認められませんが、学生寮であれば一人暮らしでも高校に通い続けることが可能です。
ただ中には、どうしても高校を転校せざるを得ない人もいるでしょう。このような場合、転校生の受け入れ枠があり、かつカリキュラムの整合性が取れる公立または私立の高校へ転校しなければなりません。
そこで高校を転校しなければならないのであれば、まず現在通っている高校に転校の相談をしましょう。その上で引越し先の教育委員会や転校希望の高校に問い合わせし、転校手続きを進めていきましょう。
引越しのとき、必須となるのが「複数社から見積もりを取ること」です。引越し価格には定価がなく、引越し業者によって見積もり額はバラバラです。そのため複数の業者から見積もりを取るだけで、何万円も節約できます。
例えば、以下は5人家族の長距離引越しで見積もりを取ったとき、4社に見積もりを依頼しました。このとき、最高額は438,264円でした。一方、最も安い業者は198,720円であり、半額以下の料金になりました。複数業者へ依頼しないだけで、大きな損をすることになります。
ただ、自ら業者を探して電話をかけるのは大変です。そこで、必要な情報を入力するだけで完了する一括見積もりを利用しましょう。
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引越し侍ではアート、サカイ、日通、アリさんなどの大手が登録しており、入力作業は30秒で終わります。無料で利用できるサービスなので気軽に利用できます。
さらに大手だけでなく、中小の引越し業者も登録しているので低価格な引越しが可能になります。最大15社まで見積依頼でき、できるだけ複数の業者の見積もりを取り、最安値で引越しをしたい人に適しています。
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