引越し先への距離が近いと、引越し作業にかかる時間が短くなります。また旧居と新居を行き来するのが容易であるため、作業に不備があっても問題なく対処することができます。

これに対して遠距離の引越しでは、荷物の運搬に時間がかかりますし必要となる手続きも多くなります。

また旧居と新居を気軽に行き来できないため、作業や手続きに不備があると非常に面倒なことになります。そのため長距離の引越しでは、効率よく確実に作業を進めていく必要があります。

それでは、遠距離の引越しが決まったら、何から始めればいいのでしょうか? また長距離引越しを効率よく進めるためには、どのような手順で作業を進めればいいのでしょうか?ここでは、長距離引越しを成功させるための日程・スケジュールのコツについて解説していきます。

退去の連絡を行い、引越し業者を決める

遠方へ引越すことが決まったとき、まずは家を探し始める人が多いです。「引越し先が決まっていないと退去の予定が立てられないし、引越し業者に見積もりを出してもらえない」と考えるためです。

もちろん、遠距離の引越しでは新居探しを早めに行うべきです。ただ長距離引越しでは、新居が確定する前に退去日(=引越し日)を決めて引越し業者を押さえた方がいいです。

まず、退去日の確定・申告が遅れると二重家賃が発生するリスクがあります。賃貸物件では退去の申告を1ヶ月前(契約内容によっては2ヶ月前)までに行う必要があるためです。

例えば、契約書に「退去の1ヶ月前までに申告」と記されている物件から3/31に引越し&解約することになったとします(新居への入居は4/1)。このとき退去前の1ヶ月前に申告が必要な場合、旧居の家賃を4/30まで支払い続けることになります。

退去の連絡が遅れると、旧居と新居の両方で家賃支払いが生じるのです。また遠距離の引越しだと、近距離引越しよりもトラックの予約を確保しづらいです。長距離引越しだとトラックとスタッフを長期間拘束することになるためです。

長距離の引越しでは、早めに予約を取らないと希望日に引越し業者を押さえられないケースがあります。特に3~4月は引越し件数が多いため、1ヶ月前に引越し業者のスケジュールが埋まるのは普通です。

なお引越し業者の見積り・予約については、おおよその引越し先が決まっていれば予約可能です。そのため長距離の引越しが決まったら、まずは退去日を確定して引越し業者の予約に取り掛かりましょう。

複数業者に見積もりを依頼して、最適なプランで引越しする

このとき近距離の引越しでは、貸し切りトラック(チャーター便)で荷物を運搬するのが基本です。一方で長距離引越しだと、さまざまな運搬手段からあなたの希望に合った方法を選ぶことができます。

例えばチャーター便での引越しは、移動距離と拘束時間に応じて費用が高くなっていきます。チャーター便での長距離引越しでは荷物の運搬に2~3日ほどかかるので、同じ条件の近距離引越しに比べて引越し料金が2~3倍ほど高くなるのが相場です。

これに対して複数の引越し荷物を1台のトラックで運ぶ「混載便」であれば、長距離引越しでも費用を抑えやすくなります。

ただ、引越し件数が少ない時期だと混載便のトラックに荷物が集まるまでに時間がかかるため、チャーター便よりも1~2日ほど日数が余計にかかります。場合によっては、荷物の到着日が直前まで確定しないケースもあります。

また引越し業者の中にはトラックだけではなく、列車・船のコンテナ便、航空便などを提供しているケースがあります。

列車や船のコンテナ便だと、新居までの距離が遠くても格安で引越し可能です。ただコンテナ便は荷物の運搬にかなりの時間を要するため、退去後すぐに新居へ向かうと引越し荷物が届かないデメリットがあります。具体的な運搬期間は距離や経路によって異なりますが、到着までに1週間かかるケースもあります。

また航空便での引越しはトラック便に比べて、費用が非常に高額な上に利用区間も限定されます。ただ、長距離引越しでも1日で荷物を送れるメリットがあります。

このように、長距離引越しの料金や日数は業者や引越しプランによって異なります。あなたの希望に合った運搬方法を選ぶためにも、複数の業者に引越しの見積もりを依頼し、所要日数と料金を比較して、契約する引越し業者を選びましょう。

引越し2ヶ月前から新居探しを始める

また引越し業者探しと並行して、引越しの2か月前には居住エリアの候補を絞っていきましょう。具体的にはまず、毎日通うことになる職場・学校への通いやすさで居住エリアを絞っていきます。

このとき職場や学校へ自転車や車で通う予定なのであれば、直線距離が近いエリアを選んで問題ありません。

ただ電車やバスなどを利用して通勤・通学するのであれば、直線距離ではなく所要時間で比較する必要があります。基本的には何度も乗り換えると所要時間が長くなるため、職場や学校に乗り換えなしで通えるエリアを候補に挙げましょう。

職場や学校までの所要時間から居住エリアの候補を挙げたら、次に近隣施設や治安などを比較して候補を絞っていきましょう。

例えば、治安を考えるなら繁華街から離れたエリアがいいですし、大型のスーパーやドラッグストアが近いエリアだと便利に暮らすことができます。また子供がいるのであれば、学校の質が高い地区や保育園の空きがあるエリアが好ましいでしょう。

このようにして居住エリアの候補を1~2つほどに絞ったら、最後にインターネットを活用して新居候補を探していきます。

どのような不動産検索ツールであっても、間取りや家賃、初期費用などで物件を絞ることができます。ペットや防音、駐車場などのこだわり条件を入力すれば、よりあなたの希望に近い物件を探しやすくなります。

このようにして、新居候補を4つほどまで絞りましょう。

内見のスケジュールを調整して効率よく候補物件をまわる

新居の候補を絞り込めたら、入居の1ヶ月前から内見を始めます。

このとき近距離の引越しであれば、内見数が多くなっても数日かけて回れば問題ありません。一方で遠距離の引越しだと、新居候補の地域へ出向くのに多額の費用がかかります。そのため遠方への引越しでは、候補物件を絞り込み、効率よく内見できるようにスケジュールを調整する必要があります。

まず長距離引越しの内見では、1日で物件を回り切るために不動産業者の営業開始時刻に内見予約を入れておくのが基本です。営業開始時刻までに引越し先エリアまで出向けないのであれば、前泊して内見に臨みましょう。

また遠方だと、一度で必要な箇所をしっかり確認する必要があります。そのため内見で確認したいポイントを事前に挙げておき、効率よく候補物件をチェックしていきましょう。

なお、1日に何件も内見していると、物件の特徴などを忘れてしまいがちです。そのため内見時に気になった点は必ずメモし、可能であれば写真に撮って記録しておきましょう。そうすることで、内見後でも物件の特徴を思い出しやすくなります。

遠方引越しで内見に出向けない場合の対処法

ただ中には、距離やスケジュールの関係で遠方の新居候補の内見に出向けないケースもあるでしょう。このような場合、どのように対処したらいいのでしょうか。

まず、新居候補の物件を複数の不動産検索サイトで確認しましょう。同じ物件であっても、物件の様子を判断できる情報は掲載サイトによって異なるためです。例えば以下は、SUUMOに掲載されている物件の情報ページです。

このサイトでは、物件の写真を20枚確認できます。これに対して以下は、CHINTAIに掲載されている同じ物件の情報ページです。

このサイトでは、該当物件の360度パノラマ写真を確認することができます。パノラマ写真だと人の視点で部屋を見渡すことができるため、物件の様子を詳細にイメージしやすくなります。

このように複数の検索サイトで新居候補の物件を見ることで、さまざまな角度から部屋の様子を確認することができます。

また候補物件で気になっている点があるのであれば、現地の不動産業者に該当箇所の写真や採寸などを依頼して確認しましょう。

例えば不動産業者に依頼して写真を送ってもらえば、内見しなくてもゴミ捨て場や集合ポストなどの様子をチェックすることが可能です。ゴミ捨て場や集合ポストなどは住民の質が現れやすいポイントなので、これらの様子は物件選びの重要な基準となります。

また不動産業者に採寸を依頼すれば、手持ちの家具家電を置けるか否かの判断ができます。現地に荷物を運んでから「置き場所がない」という事態を避けられるため、必ず採寸を依頼しましょう。

参考までに、私が遠方へ引越した際、日程などの都合で内見に出向くことができませんでした。そこで不動産業者に候補の物件の現地写真を撮影してもらい、窓枠や家電置き場の採寸を依頼しました。その結果、内見せずに希望条件を満たした新居を選ぶことができました。

本来は内見するべきですが、複数の不動産サイトを活用したり不動産業者に写真撮影を依頼したりすれば、内見できなくてもイメージに近い物件を見つけやすくなります。「内見できないから希望通りの部屋は見つからない」などと諦めず、条件に合った物件を探しましょう。

引越し日までにするべきこと

入居する物件が決まったら、間取りを参考にして家具家電の配置や荷物の搬入先を決めておきます。このとき、部屋ごとにあらかじめ番号を振っておき、荷物のダンボールに搬入先の部屋番号を記入しておくと、引越し当日に効率よく作業を進められます。

また引越しの2週間前になったら、役所やライフラインなどの手続きを進めていきます。特に遠方への引越しでは、引越し前の手続きに不備があると郵送手続きとなるため非常に面倒です。そのため、旧居地域での手続きは引越し前に完璧に完了させましょう。

なお、遠方引越しで必要な手続きは以下のようになります。

  • 役所関係の手続き
  • 旧居・新居のライフライン手続き
  • ホテル、交通機関の手配

これら手続きについて、以下で解説していきます。

・役所関係の手続き

遠距離の引越しでは、旧居の自治体で転出の手続きを行い、新居の自治体で転入の手続きを行わなければなりません。転出手続きが完了していないと転入手続きができないため、引越し前に必ず役所の手続きを完璧に終わらせる必要があります。

なお役所で必要となる転出の手続きは、住民票(転出届)と健康保険、マイナンバーなどがあります。子供がいる場合、これに加えて子供手当や医療証などの手続きも必要です。

これらの手続きはどれも、転出予定日の2週間前から手続き可能なので、必要となる手続きと書類を理解して一度で終わらせましょう。

・旧居・新居のライフライン手続き

引越しではライフラインの引越し手続きも必要となります。具体的には、旧居・新居のガス閉栓・開栓の予約と電気・インターネットの引越し手続き、水道の解約・契約手続きが必要です。水道については電話連絡のみで引越し手続きを完了できるので、忘れずに連絡しておきましょう。

また、ガスの閉栓作業は荷物の搬出中でも行えます。退去の立ち合い時刻までにガス閉栓を完了させられるように、早めの時間帯に予約を入れましょう。

なお電気やインターネットの契約業者によっては、引越し先で利用を継続できないケースがあります。このような場合、現在利用している業者を解約して新しく契約し直すことになります。インターネットの新規契約では回線の開通工事が必要となるケースもあるので、なるべく早く連絡しましょう。

・ホテルや交通機関の手配

また引越し先が遠方だと、引越しに1~2日以上かかるのが基本です。荷物の搬入日に合わせて、旧居や新居の近くにホテルを手配しましょう。車などで新居に向かう場合、旧居と新居の中間地点で宿泊すると効率的です。

飛行機や新幹線などで新居に出向く場合、チケットの手配も必要となります。引越し日当日には荷物の搬出だけでなく退去の立ち合いもあるので、時間に余裕を持たせてチケットを手配しましょう。

引越し当日~入居日の流れ

引越し日の当日になったら、まず荷物の搬出とガス閉栓の立ち合いを行います。荷物の搬出に時間がかかると交通機関の予約時間に間に合わなくなるリスクがあるので、引越し前日までに荷造りを確実に終わらせて当日を迎えましょう。

荷物の搬出が終わったら、賃貸物件の大家と退去の立ち合いを行います。立ち合い確認では、部屋の損耗や忘れ物についてチェックしていきます。部屋が過度に汚いと退去費用が高くなる恐れがあるので、頑固な汚れは前日までに落としておきましょう。

退去の立ち合いが完了したら、大家に鍵を返して宿泊予定のホテルへ向かいましょう。なお、立ち合いの結果は後日新居へ郵送されます。退去費用が発生した場合、書類の到着後1~2週間以内に支払うことになるので覚えておきましょう。なお敷金を支払っている場合、費用を引かれて敷金が戻ってきます。

入居日は早めに新居へ到着し、荷物の搬入と諸手続きを進める

引越し荷物の搬入日には、いよいよ新居へ出向くことになります。

このとき、荷物の搬入前に大家や管理会社などから鍵を受け取っておく必要があるため、引越し業者の到着予定時刻よりも早く新居へ着くようにしましょう。特に旧居周辺にホテルを取っていた場合、新居までの移動距離が長くなるので注意が必要です。

荷物の搬入を終えたら、新居地域での役所手続きなどを進めます。引越しから15日以内に手続きすることになるので、必要な手続きと書類を理解して一度に済ませてしまいましょう。

なお引越しの挨拶については、基本的に実施しなくて問題ありません。一方でマイホームへの引越しや子供、ペットがいる場合は引越しの挨拶をした方がご近所トラブルを未然に防ぎやすくなるので、粗品となる消耗品を持参して挨拶へ出向きましょう。

長距離引越しの流れ・手順を理解し、不備なく作業を進める

長距離引越しが決まったら、まず退去日を確定して不動産の管理会社へ退去の連絡を入れましょう。その後、複数の引越し業者に見積もりを依頼し、あなたの希望に合った業者やプランで引越しを契約しましょう。

また引越しの2ヶ月前には引越し先エリアの選定を開始し、1ヶ月前には新居候補を4つほどに絞ります。物件の内見は朝一で予約し、1日かけて候補物件を内見しましょう。

新居が決まったら、荷造りを進めながら役所やライフラインなどの手続きを行います。手続きモレが発生すると非常に面倒なので、不備なく完璧に手続きを完了させましょう。

引越し当日は荷物の搬出やガスの閉栓、退去の立ち合いを行い、これらが完了した後にホテルへ向かいます。入居日には引越し業者よりも先に新居へ到着する必要があるので、早めにホテルを出発しましょう。これが長距離・遠距離での引越しの基本的な流れです。


引越しのとき、必須となるのが「複数社から見積もりを取ること」です。引越し価格には定価がなく、引越し業者によって見積もり額はバラバラです。そのため複数の業者から見積もりを取るだけで、何万円も節約できます。

例えば、以下は5人家族の長距離引越しで見積もりを取ったとき、4社に見積もりを依頼しました。このとき、最高額は438,264円でした。一方、最も安い業者は198,720円であり、半額以下の料金になりました。複数業者へ依頼しないだけで、大きな損をすることになります。

ただ、自ら業者を探して電話をかけるのは大変です。そこで、必要な情報を入力するだけで完了する一括見積もりを利用しましょう。

引越し侍

引越し侍ではアート、サカイ、日通、アリさんなどの大手が登録しており、入力作業は30秒で終わります。無料で利用できるサービスなので気軽に利用できます。

さらに大手だけでなく、中小の引越し業者も登録しているので低価格な引越しが可能になります。最大15社まで見積依頼でき、できるだけ複数の業者の見積もりを取り、最安値で引越しをしたい人に適しています。

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一般的に引越しの一括見積もりでは登録直後、たくさんの電話がかかってきます。こうした電話が嫌でメールだけで完結したい場合、SUUMO引越し見積もりを利用しましょう。

SUUMO引越し見積もりでは「電話番号の登録が任意」なので、メールだけで見積もりの日程調節が可能です。電話が嫌な場合、リクルート社が運営するSUUMO引越し見積もりが最適です。

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