引越しでは、さまざまな作業・手続きが発生します。特に引越し当日はスケジュールが詰まりがちであるため、引越し業者が予定していた時刻に来ないと非常に困ります。
このとき引越し業者が遅刻すると、作業終了後の予定がすべて後ろ倒しになります。場合によっては、予定時刻に作業できなかったことによって実害が発生するケースもあります。そのため、業者の遅刻に対して「損害賠償を請求したい」と考える人は多いです。
それでは引越し業者の到着が遅れた場合、引越し料金を値引きしてもらうことは可能なのでしょうか? また引越し業者が遅刻した場合、どのようにして対処すればいいのでしょうか?
ここでは、引越し業者の遅刻トラブルの対処法について解説していきます。
もくじ
引越し業者の遅刻そのものに賠償を請求することはできない
引越し当日は荷物の搬出だけでなく、ガスなどの閉栓や退去の手続きなども発生します。引越し先によっては新居まで交通機関で向かう必要がある人もいるでしょう。引越し当日は作業・手続きが多く、時間に追われやすいです。
このような状況で引越し業者に遅刻されると、予定通りに作業が進まないことによって苛立ちやすいです。そのため、業者の遅刻によるイライラに対して「引越し料金の値引きなど、金銭的な賠償を請求したい」と考える人は多いです。
このとき「スケジュールに予約の組み込みを忘れていた」「確認不足で予約が重なってしまっていた」など、引越し業者の明らかなミスによって大幅な遅れが出た場合、交渉次第で料金の値引きや無料キャンセルなどの条件を引き出せる可能性はあります。
ただ基本的に、引越し業者の遅刻そのものに賠償を請求することはできません。引越し業者は業務の性質上、時間を厳守することが難しいためです。
まず、慣れた道であっても道路状況を正確に予測することは不可能です。また一般の車と異なり、トラックだと抜け道を使用することも難しいです。そのため、トラックの到着遅延を完全に防ぐことはできません。
また、引越し荷物の搬出・搬入は人力で行われます。業者はプロであるため予定時刻内に作業を終えられるように人員調整しますが、場合によっては時間通りに作業を終えられないケースもあります。
特に訪問見積もり時より荷物が増えていたり、荷物が扉を通らず吊上・吊下作業が必要になったりすると、作業完了時刻が大幅に遅れやすいです。
当然ながら、業者が着手する1件目の引越し完了時刻が遅くなると、その分だけ2件目以降の作業開始時刻が後ろ倒しになっていきます。
そのため、あなたの前に他の人の引越し作業が入っていると、作業の進捗によってはあなたの引越し開始時刻が遅くなります。特に3~4月の引越し繁忙期だと業者の作業件数が多いため、午前最初以外の便だと時間通りに業者が来ないケースがほとんどです。
このように、引越し業者が遅刻するのはよくあることです。そのため業者が遅刻しただけで引越し料金の値引き(損害賠償)を請求することはできないので注意しましょう。
業者の遅刻・遅延で発生した損害は補償してもらえる
ただ、引越し業者の到着が遅れたことによって金銭的な損害が生じた場合、発生した費用をそのまま引越し業者へ請求できます。
例えば、新居へ向かうために飛行機や新幹線などの交通機関を利用する場合、事前にチケットを取得しているケースが多いでしょう。
このとき引越し業者の遅刻によって交通機関の予約時刻に間に合わなかった場合、交通機関のチケットを購入し直す代金を引越し業者に請求できます。
また引越し業者が遅刻して作業終了時刻が遅くなると、利用する予定だった交通機関の最終便に乗り遅れるケースがあります。このような場合、タクシーでの移動費や宿泊費などを実費で業者に請求することができます。
他にも、作業遅延によって当日中に引越し作業を終えられないと、退去日が翌日にずれ込むことになります。このような状況で発生した違約金や日割り家賃なども、業者による補償の対象となります。
補償金額は引越し料金が上限となる
ただ引越し業者から補償してもらえる場合であっても、負担した費用を全額補償してもらえるとは限りません。引越し業者による補償については、顧客が支払った引越し料金が上限金額となるためです。
参考までに、以下は国土交通省が提示している引越し業者の基本的な取り決め(約款)です。
ここには、「荷物の受取や引渡が遅れたことによって財産上の損害が発生した場合、運賃などの合計金額の範囲内で賠償する」と記されています。
仮に、高級ホテルしか空き部屋がなく、やむを得ず高級ホテルを利用することになったとしても、補償されるのは引越し料金の金額までです。引越し料金を超えた分の費用は、あなたの自腹となります。
そのため引越し業者の遅刻で交通機関のチケットを取り直したり宿泊先を探したりする場合、引越し料金を超えない範囲で予算を組むようにしましょう。
補償・値引きを受けられないケース
なお当然ながら、作業の遅延によって金銭的な実害が発生したとしても、作業遅延の原因があなたにある場合は補償を請求することはできません。
例えば引越し当日までに荷造りを完了できていなかった場合、当日に業者が荷造りを手伝うことになります。このような状況で交通機関や宿泊施設を予約する必要性が生じたとしても、補償を受けることはできません。
また、訪問見積もり時に業者に申告しなかった荷物があったり、見積もり後に大型の荷物が増えたりした場合、予定時刻に引越し作業を完了することが難しくなります。このような場合も、作業遅延による補償の対象とはならないので注意しましょう。
フリー便での引越しだと、遅刻による損害の補償を受けられない
また引越し作業をフリー便で契約していた場合、業者が予定時刻を過ぎて到着しても、損害を補償してもらうことはできません。
フリー便は「業者の都合がいい時刻に作業を開始する」という条件で引越し料金を格安に設定しているプランです。つまり、フリー便では「時間指定なし」の条件で引越し業者と契約することになります。
「時間指定なし」という条件で契約している以上、何時に引越し業者が到着しても遅刻扱いとはなりません。極端な話、23時59分に作業を終えたとしても、遅刻・遅延したとはみなされないのです。
このとき、フリー便で契約すると引越しの数日前までに作業開始時刻の目安が伝えられます。ただ、これはあくまで目安であり、作業開始時刻を確約しているわけではありません。
そのためフリー便で契約していた場合、伝えられていた時刻に引越し業者が到着しなくても補償を請求することはできないので注意しましょう。
天災や事故などによる遅刻・遅延は補償対象外
また、引越し業者が避けようのないトラブルに巻き込まれてしまった場合、遅刻・作業遅延によって損害が出ても補償してもらうことはできません。
例えば荷物の搬出・搬入の際に地震や洪水などの災害が発生し、作業を一時中断したとします。これによって引越しの完了が遅れて損害が発生しても、補償を請求することはできません。
また事故などによって予見できない道路状況の悪化が発生した場合、これが原因で顧客に損害が発生しても補償されません。引越し業者の遅刻で損害を補償してもらえるのは、業者側に過失がある場合のみなので注意しましょう。
引越し業者が遅刻したときの対処法
それでは、実際に引越し業者が遅刻してきた場合、どのようにして対処すればいいのでしょうか?
まず、引越し業者が予定時刻に到着しない場合、基本的には業者の方から連絡があります。このとき交通機関などの予約時刻が迫っているのであれば、その旨を業者に伝えましょう。顧客が急いでいることが業者に伝わると、応援スタッフなどを手配して作業を素早く進めてくれるケースが多いです。
予定時刻が過ぎても業者から遅刻の連絡がない場合、手間であってもあなたが業者に連絡して「交通機関の予約時刻が迫っているから急いでほしい」「予約している便に乗り遅れたら、損害賠償を請求する」と伝えましょう。
このとき、スタッフが遅刻による補償について対応してくれないようであれば、支店や本社などに連絡しましょう。業者の遅刻によって損害が発生することを具体的に伝えれば、すぐに対応してくれるケースがほとんどです。
損害の内容と金額を伝え、領収書を保存する
一方で、業者の遅刻によってすでにチケットの取り直しなどが必要となっているのであれば、損害の発生が確定した時点で内容と金額を業者に伝えましょう。
例えば「この時刻だと、〇時予約の飛行機に間に合わない。チケットの予約を取り直すので、チケット代金〇円を請求する」と伝えるといいです。そうすれば、費用の精算方法について伝えられるケースが多いです。
このとき、業者の遅刻によって発生した損害について立て替える際には、必ず領収書を発行してもらいましょう。領収書の宛名については、引越し業者の指示に従いましょう。
領収書の発行が難しい場合、支払い金額がわかる書類や支払い画面のスクリーンショットなどを保存しておきましょう。
業者の遅刻で金銭的な損害が発生したら、実費で補償してもらう
引越し業者の到着が予定時刻より遅れた場合、値引きなどの損害賠償を請求したいと考える人は多いです。ただ引越し業者は業務の性質から時間を厳守することが難しいため、遅刻そのものに対して損害賠償を請求することはできません。
一方で引越し業者の遅刻・作業遅延によって金銭的な損害が発生した場合、かかったお金を実費で補償してもらえます。例えば業者の遅刻で予約していた交通機関に乗り遅れた場合、チケットの取り直し費用を請求できます。
このとき業者の遅刻によって損害が発生することが確定したら、すぐに損害の内容と金額について業者に連絡しましょう。また、損害について立て替える際には領収書を忘れずに発行してもらいましょう。
ただフリー便での引越しは「時間指定なし」での契約です。そのため、作業開始時刻が遅くなったことによって損害が発生しても、補償してもらうことはできないので注意しましょう。これらが、業者が遅刻した際の基本的な対処法です。
引越しのとき、必須となるのが「複数社から見積もりを取ること」です。引越し価格には定価がなく、引越し業者によって見積もり額はバラバラです。そのため複数の業者から見積もりを取るだけで、何万円も節約できます。
例えば、以下は5人家族の長距離引越しで見積もりを取ったとき、4社に見積もりを依頼しました。このとき、最高額は438,264円でした。一方、最も安い業者は198,720円であり、半額以下の料金になりました。複数業者へ依頼しないだけで、大きな損をすることになります。
ただ、自ら業者を探して電話をかけるのは大変です。そこで、必要な情報を入力するだけで完了する一括見積もりを利用しましょう。
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安い引越しを実現する、訪問見積もりのコツや流れ、事前準備
見積もりのとき、必ず訪問見積もりとなります。電話やメールだけの見積もりでもいいですが、ほぼ100%の確率で失敗します。追加料金が必要になり、非常に高額な引越しになるのです。
ただ、訪問見積もりではどのような流れになるのでしょうか。またどう接すればいいのでしょうか。引越し業者の営業マンが訪問に来たときの対処法について確認していきます。
見積もり比較サイトでの引越しはおすすめ!料金はいくら安いのか
実際に見積もりを依頼するとき、自ら業者を調べて電話するのは非常に手間です。そこで、ほとんどの人が一括見積サイトを利用します。
ただ、そのような見積もり比較サイトが適切なのでしょうか。利用方法に違いはあるのでしょうか。これらを明らかにしていきながら、おすすめの見積もり比較サイトを紹介していきます。