転勤の辞令が下りると、会社の都合で勤務先が変わることになります。また会社によっては、新卒・転職入社後に本社での研修が行われ、その後に勤務先が決まるケースがあります。
このとき、勤務先の変更によって引越しが必要となったのであれば、会社都合なので引越し費用を会社に負担してもらえるのが普通です。
それでは、どのようなケースであれば引越し費用が会社負担となるのでしょうか? また会社負担で引越す場合、自己負担となる引越し費用の項目はあるのでしょうか?
会社負担とはいっても、大企業でない限り、全額が会社負担になるわけではありません。自己負担が出てくるケースもあります。ここでは、会社負担で引越しする場合の費用負担について解説していきます。
もくじ
会社都合の転勤引越し費用は会社負担が基本
引越しには多額の費用がかかります。そのため引越し費用が会社負担となれば、経済的な負担をかなり軽くすることができます。
このとき、転勤に関する引越し費用について労働法などで定められている事項はありません。ただ基本的には、会社都合によって生じた引越しの費用は会社が負担するのが原則です。
例えば、東京に住んでいる人が大阪の会社に入社して働き始めるための引越し費用は自己負担です。働く場所を大阪と決めたのは会社ではなく、あなた自身(=自己都合)であるためです。
一方で、大阪の支社で働いていた人が辞令によって東京の支社で働くことになった場合、会社の都合で引越しが必要となります。そのためこのケースだと、引越し費用は会社が負担することになります。
ただ前述のように、転勤による引越しに関する法的な基準は存在しません。そのため異動による引越しでは、会社が独自で定めている就業規則に従うことになります。
当然ながら、就業規則の内容は会社によって異なります。そのため一般的には引越しが必要な距離の転勤であっても、場合によっては会社が引越し費用を負担してくれないケースがあります。
実際に私が就業していた会社では、通勤に片道1時間半以上かかるようであれば会社負担での引越しが可能でした。一方で知人の会社は「片道2時間圏内は通勤可能である」とみなされ、この範囲内の転勤で会社負担による引越しはできませんでした。
このように、会社都合の転勤による引越しでは費用が会社負担となるものの、「引越しが必要な異動である」と見なす基準は会社ごとに異なるのが実情です。
赴任先が決まっていない新卒・転職は会社負担となる
また転勤のときと同様に、新卒や転職入社の場合であっても会社の都合で勤務先が遠方へ変更となる場合は、会社負担で引越しが可能です。
例えば支社を広範囲に展開している企業では、一般的に入社後まず本社で社員研修を受けることになります。その後、配属先の辞令が出て勤務する地域が決まります。このとき、本社から離れた地域へ配属となった場合、配属先への引越し費用が会社から支給されます。
また公務員の場合も、新卒採用の人には引越し準備金として赴任旅費が支給されます。公務員も研修後に配属先が決定するためです。なお、手当の金額は公務員区分や所属する自治体などによって異なります。
一方で、本社での新人研修が行われない場合や支社展開していない会社に入社した場合、会社近くへの引越し費用は自己負担となります。会社都合で勤務先が変更とならないためです。
引越し費用が会社負担となるのは、あくまで会社の都合で勤務先が変更となった場合のみであることを覚えておきましょう。
・研修期間の住居への一時的な引越し費用は会社負担
なお新人研修のために本社へ通う必要性が生じた場合、研修期間の住居は会社が用意してくれるケースがほとんどです。そのため新人研修を受けるための引越しでは、賃貸物件の契約費用はかからないのが基本です。スーツケース一つにて、新人研修を受けるために一時的に引越します。
また1~2ヶ月ほどの研修なので、マンスリーマンションまたはホテルでの暮らしになります。中には、家電一式が揃った住居を利用できる場合もあります。そこで現在住んでいる部屋をそのままにして、勤務先が決まった後に引越すようにしましょう。
引越し時の費用はどこまでが会社負担?
それでは、会社都合の転勤に伴う引越しの費用は、どこまでが会社負担となるのでしょうか。
これに関しても、労働法などによる明確な取り決めはありません。そのため転勤での引越しによる自己負担額を抑えたいのであれば、転勤に関する就業規則について確認する必要があります。
このとき、場合によっては上司ではなく人事部や総務部などに転勤引越しの費用負担について確認することも視野に入れましょう。
これは、会社の上司が異動に伴う引越しに関する就業規則の詳細を知らないケースが多いためです。慣習的に自己負担となっている引越し費用であっても、人事に相談したら、実際には経費精算が可能なケースもあります。
また、引越し費用の負担範囲はある程度交渉が可能なことが多いです。参考までに、私が転勤によって引越した際には、ガスの開栓料は赴任手当で対応するようにいわれていました。
ただ引越しでは、家具を取り揃えたり荷解きが終わるまでの食事を用意したりなどの雑費が思っている以上にかかります。そのため赴任手当だけでは引越し費用を賄えないと交渉し、ガスの開栓料などを会社の経費負担にしてもらいました。
当然ながら、引越し費用の負担に関する対応は会社によって異なります。ただ転勤によって引越し貧乏にならないためにも、就業規則をしっかり確認した上で、できる限り交渉することをおすすめします。
敷金礼金など初期費用と引越し業者の利用料金は会社負担
なお引越し費用が会社負担となった場合、引越し業者の利用料金と物件の賃貸にかかる初期費用のほとんどは会社持ちとなるのが基本です。具体的にいうと、引越し費用のうち以下の項目が会社負担となります。
- 物件契約時の敷金礼金
- 前家賃
- 仲介手数料
- 保証金
- 引越し業者の利用料金
また会社都合で引越しが決まると、場合によっては旧居での居住年数が足りず違約金が発生するケースがあります(半年で引越しなど)。この場合の違約金も基本的には会社負担となります。
なお会社が借り上げた物件へ引越したり、会社が提携している引越し業者を利用したりする場合、会社が業者へ直接料金を支払うケースが多いです。つまり、会社負担となる引越し費用の一時的な自己負担が発生しません。
一方で引越し先住居や引越し業者をあなた自身が選んで契約する場合、契約時に発生する費用を一時的にあなたが負担するケースが多いです。この場合、賃貸物件の契約書や領収書などを会社に提出して、引越し費用の精算を行います。
また会社によっては、引越しにかかった費用の実費負担ではなく、社員に赴任手当としてまとまったお金を支給しているケースがあります。
このような場合、支給された手当から引越しにかかる費用をまかなうことになります。引越し費用を支給された金額以内に抑えられれば、差額が自分の収入となる一方で、手当を超えた分の引越し費用は自己負担となります。
引越し先までの交通費や宿泊費も会社負担
また転勤による引越しでは、引越しそのものにかかる費用だけでなく引越し先への交通費も発生します。車で引越し先へ移動する場合、高速道路の利用料金を含めて会社負担となるのが基本です。
さらに転勤先が遠方となった場合、宿泊が必要になるケースもあります。このような移動・宿泊にかかる費用も転勤に付随する引越しの必要経費であるため、基本的には会社負担となります。
このとき宿泊に関しては、引越しの荷物が当日中に新居へ届かない場合に必要となります。そのため基本的には、遠方だと引越し先の地域で一泊することになります。
ただ場合によっては、事前に相談することで中継地点での宿泊を許可されるケースもあります。
例えば私が転勤によって引越ししたとき、引越し先が350km離れた地域だったため荷物の到着が翌日になりました。そのため、引越し先地域で1泊することを会社から許可されました。
ただ、このときの引越し作業は午後スタートであったため、作業が終わってから引越し先へ向かうと到着予定時刻が夜遅くになります。子連れでの引越しであったため、夜中のチェックインは避けたいと考えました。
そこで、私は会社に中間地点(新居地域の100kmほど手前)での1泊を会社へ相談しました。そうしたところ、無事承認が下りて宿泊費を会社負担にすることができました。
このとき、事前に相談しないと「引越し先地域での宿泊ではない(=引越しに必要な宿泊として認められない)」可能性があります。そのため遠方への引越しで中間地点での宿泊を希望する場合は、必ず会社へ事前に相談しましょう。
・移動費などの精算方法はどうする?
なお、引越しのための移動・宿泊にかかる費用の支給方法は会社によって異なりますが、領収書での後精算となるのが基本です。
そのため転勤での引越し費用のうち、移動・宿泊費に関しては一時的な自己負担が生じます。また車で移動した場合、移動距離から交通費を算定して後日支給となるケースが多いです。
このとき、ETCを利用して高速道路を通るとその場で領収書が発行されないため、会社への申請を忘れがちになるので注意が必要です。実際に私は領収書が手元にないことによって経費申請を忘れてしまい、高速道路の利用料金が自己負担となってしまった経験があります。
このようなことを防ぐため、現在では領収書をまとめるファイルに高速道路の利用料金に関するメモを残すようにしました。そうすることで、ETC利用料金を忘れずに経費申請できるようになりました。
そのため高速道路のETCを利用して引越し先へ移動する場合には、経費申請忘れを防ぐため、あなたなりに工夫するようにしましょう。
会社都合の引越しでも自己負担となる費用
一方で引越しに必要な費用であっても、会社負担とならない項目があります。例えば敷金を超える原状回復費用は自己負担となります。また会社によっては、賃貸物件の契約時に発生する火災保険料や鍵交換費などは自己負担となるケースがあります。
他には、引越し業者の利用料金のうち会社負担となるのは荷物の運搬費用のみであり、荷造りサービスなどを希望する場合のオプション料金は自己負担となります。
これに加えて、ピアノなどの特殊な荷物や車の運送料金は会社から支給されないのが基本です。そのためピアノなどは自己負担で新居へ運送し、車を持っている人は新居へ車で移動することになります。
領収書を提出して転勤引越しでの自己負担金額を減らす
ただ前述のように、転勤による引越しの費用負担範囲は会社によって異なります。また就業規則で決められていない詳細に関しては、交渉次第で会社負担となる可能性があります。そのため会社都合の引越しで無駄なお金を使わないためにも、事前に費用負担の範囲について確認・相談しておきましょう。
また転勤による引越し費用の自己負担を減らすためには、引越しに関する支払いのすべてで領収書をもらっておくことが大切です。
このとき、当然ながら家電の買い替え費用などは会社負担とはなりません。ただガスの開栓料やインターネットの初期工事料金など、引越しにかかる初期費用であれば、領収書を提出すれば経費として精算できる可能性があります。一方で領収書を提出しなければ、本来であれば経費精算できる引越し費用であっても自己負担となってしまいます。
このとき、経費で精算できない領収書を提出しても、領収書が返されるだけであなたに不利益はありません。そのため引越し費用に関して経費で落ちるか判断できず悩んだら、とりあえず領収書をもらって提出しておくといいです。
会社都合の勤務先変更では、引越し費用はほぼ会社負担
新卒・転職に関わらず、本社研修がなかったり支社展開をしていなかったりする会社に入社した場合、勤務先地域への引越し費用は自己負担となります。その会社への入社を選んだのはあなた自身(=自己都合の引越し)であるためです。
一方で本社での新人研修後に赴任先が決まる会社へ入社したり、遠方への転勤辞令が出たりした場合だと、会社都合で勤務先が変わることになります。このようなケースだと、勤務先近くへの引越し費用のほとんどが会社負担となります。
ただ会社都合の引越しであっても、賃貸物件契約時の火災保険料や鍵交換費用などは自己負担となるのが基本です。また転勤引越しの費用負担に関しては会社の就業規則に沿って決められるため、負担範囲の詳細は会社によって異なります。
そのため転勤などで引越しの必要性を生じたら、就業規則をしっかり確認して費用の負担範囲をチェックしましょう。また引越しに関する支払いのすべてについて領収書をもらっておくと、経費申請のもれを防いで引越しの自己負担を抑えることができます。
引越しのとき、必須となるのが「複数社から見積もりを取ること」です。引越し価格には定価がなく、引越し業者によって見積もり額はバラバラです。そのため複数の業者から見積もりを取るだけで、何万円も節約できます。
例えば、以下は5人家族の長距離引越しで見積もりを取ったとき、4社に見積もりを依頼しました。このとき、最高額は438,264円でした。一方、最も安い業者は198,720円であり、半額以下の料金になりました。複数業者へ依頼しないだけで、大きな損をすることになります。
ただ、自ら業者を探して電話をかけるのは大変です。そこで、必要な情報を入力するだけで完了する一括見積もりを利用しましょう。
・引越し侍
引越し侍ではアート、サカイ、日通、アリさんなどの大手が登録しており、入力作業は30秒で終わります。無料で利用できるサービスなので気軽に利用できます。
さらに大手だけでなく、中小の引越し業者も登録しているので低価格な引越しが可能になります。最大15社まで見積依頼でき、できるだけ複数の業者の見積もりを取り、最安値で引越しをしたい人に適しています。
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この事実を認識すると、なぜ引越しで何社もの見積もりを取らなければいけないのか理解できるようになります。格安引越しをするためにも、知識をつけなければいけません。
安い引越しを実現する、訪問見積もりのコツや流れ、事前準備
見積もりのとき、必ず訪問見積もりとなります。電話やメールだけの見積もりでもいいですが、ほぼ100%の確率で失敗します。追加料金が必要になり、非常に高額な引越しになるのです。
ただ、訪問見積もりではどのような流れになるのでしょうか。またどう接すればいいのでしょうか。引越し業者の営業マンが訪問に来たときの対処法について確認していきます。
見積もり比較サイトでの引越しはおすすめ!料金はいくら安いのか
実際に見積もりを依頼するとき、自ら業者を調べて電話するのは非常に手間です。そこで、ほとんどの人が一括見積サイトを利用します。
ただ、そのような見積もり比較サイトが適切なのでしょうか。利用方法に違いはあるのでしょうか。これらを明らかにしていきながら、おすすめの見積もり比較サイトを紹介していきます。