通常、引越し業者を活用して荷物の運搬をするのが基本です。ただ、自力で引越しをしようと考える人も多いです。
自分で作業をすれば、その分だけ引越し費用を浮かせることができます。格安での引越しができるため、作業員として友人を呼んで作業を手伝ってもらうなどして、引越し準備を進めようとする人はたくさんいます。
ただ、当然ながら自分で引越し作業をする場合は非常に大変です。また、たとえ自力での引越しであったとしてもゼロ円とはならず、費用が発生します。それでは、自力の引越しではいくらの費用になるのでしょうか。
ここでは、引越しを自分で行うときのメリットやデメリット、さらには自力で引越しをする方法についても確認していきます。
もくじ
格安引越しが可能なのは自力での引越し
自分で引越し作業を考える理由は当然、価格の安さです。引越し業者に依頼するよりも、自力で引越し作業をした方が費用は安くなります。
それでは、実際のところどれくらいの引越し代を節約することができるのでしょうか。まずは、引越し業者に依頼したときの値段について確認していきます。
一般的には、以下のような料金相場になると考えてください。
・近場(50km以内)の引越しを依頼した場合の価格相場
引越し人数 | 単身・一人暮らし | 2人 | 3人 | 4人 |
部屋サイズ | ワンルーム~1K | 1LDK~2LDK | 2LDK~3LDK | 3LDK |
閑散期 | 3~4万円 | 6~7万円 | 8~9万円 | 10~12万円 |
繁忙期 | 5~6万円 | 8~10万円 | 11~13万円 | 14~17万円 |
私は何度も引越しをしていますが、例えば以下の領収書は東京都内で引越しをしたときのものです。荷物の少ない近距離引越しで32,400円でした。
それに対して、自分で引越しをするときはどうなのかというと、冒頭で述べた通り費用ゼロではありません。レンタカー屋でトラックを借りなければいけません。
「実家に住んでおり、親がトラックを所有している」などの特殊な場合を除き、通常はレンタカーを利用する必要があります。このとき、小型トラックの値段は以下のようになります。
※出典:ニッポンレンタカー
ニッポンレンタカーで18時間借りたときの価格ですが、こうした金額になります。上記の値段に加えて、通常は保険料などさまざまな手数料がかかり、さらにはガソリン代を含めると1万円ほどになると考えてください。
ちなみに大きめの小型トラックであると、2万円ほどの金額になります。
また、ハイエースバンを借りることを考える人もいます。ハイエースを借りる値段についても、大きめの小型トラックとほぼ同じです。
ただ、ハイエースであると冷蔵庫や洗濯機、タンスなど大型家具や家電製品を乗せることができません。屋根があるからです。そのためハイエースバンではなく、軽トラックをレンタルして自力の引越しをするのが一般的です。
ハイエースに乗せるとき、冷蔵庫などを倒して入れてもいいですが、冷蔵庫はずっと横にしたままだと故障する原因になります。冷蔵庫の購入費用はかなり高いため、レンタカーを利用するにしてもハイエースではなく軽トラックの方が現実的です。
・資材代も加わる
これに、資材代が加算されます。引越し業者に依頼する場合、ダンボールやガムテープなどの資材はすべて無料で用意してくれますし、運搬もすべて業者です。
一方で自分たちで引越し作業をする場合、ガムテープを購入したり、台車をレンタルしたりと他にも出費がかかります。友人に引越しを手伝ってもらう場合、昼食(または夕食)を奢らなければいけません。運転手付きのレンタカーを利用するのであれば、さらに値段は高くなります。
こうした資材代やその他の出費は安く見積もって5,000円です。そのため、自分で引越しをするにしても15,000円はかかると考えてください。
自分で行えるのは一人暮らしの単身引越しまで
ただ、自力での引越しを全員が実現できるわけではありません。大前提として、家族での引越しで引越しの場合、自分たちだけで作業を行うのは考えないようにしましょう。非常に荷物が多く、物理的にかなり大変だからです。
3人家族や4人家族に限らず、家族というだけで荷物の量が多くなります。2人家族であっても、荷物量はたくさんあります。例えば、以下は4人家族で引越しをしたときの様子ですが、ダンボールだけでこの数になりました。
また、このとき引越し業者に依頼したトラックは以下のような大きさです。
それに対して、自分で引越し作業を行うとなると、小さめのトラックに詰めることになります。それも、軽トラックです。大きめの小型トラックやハイエースバンを借りてもいいですが、レンタル代だけで2万円になり、これに資材代を加えると金額が高くなって引越し業者と値段がほぼ変わらなくなります。
そして、一般的な軽トラックに積むことのできる荷物は非常に限られています。以下は実際に軽トラックへ荷物を積んだときの様子ですが、冷蔵庫と洗濯機を乗せただけでこのようにいっぱいになってしまいます。
もし、荷物量が多いと旧居と新居を何往復もすることになります。遠距離引越しではまず無理ですし、近場の引越しであったとしても何往復もするのは大変です。
超近距離の引越しであっても、移動準備や信号待ちを含めると片道15分ほどかかるのが普通です。何往復もするのは非常に効率が悪く、荷物が多い場合は1日で作業が終わりません。その場合、レンタカー代が余分にかかって金額が高くなります。
そのため、自分で引越しをするときは極端に荷物が少ない場面に限られると考えてください。
ワンウェイ(乗り捨て)のため、遠距離では損をする
なお、引越しでレンタカーを利用する場合、ワンウェイ(乗り捨て)を考えるのが基本です。
通常、借りた営業所にレンタカーを返すのが基本です。ただ、引越しだと別の営業所へ出向いてそこへレンタカーを返すようになります。例えば東京でレンタカーを借り、新居のある神奈川県(横浜)にある営業所へ返却するのです。これを、ワンウェイシステムといいです。
同一県内を含め、近場の営業所への返却だと乗り捨て無料のケースが多いです。ただ、遠方の営業所へレンタカーを返す場合、どのレンタカー店もワンウェイは有料にしています。例えば、以下は日産レンタカーで車を借り、ワンウェイシステムを利用するときの値段です。
距離 | 30km | 50km | ~100km | 以降50kmごと |
全車種 | 無料 | 3,000円 | 6,000円 | 3,000円 |
※出典:日産レンタカー
近距離引越しならいいですが、長距離ではこのような値段が加算されます。例えば、ワンウェイでの追加料金は「東京-大阪:約500km(30,000円)」「東京-名古屋:約350km(21,000円)」となるため、遠方への引越しでレンタカーを借りると大幅に損をします。
トヨタレンタカーの公式サイトを確認しても、東京-大阪のワンウェイは30,000円(税別)とあり、価格は同じです。そのため、どのレンタカーを借りてもこれだけの料金相場です。
自分で引越しをする場合、近距離の引越しである必要があります。遠距離引越しを自力で行い、レンタカーを借りると損をします。引越し業者に依頼するよりも金額は高騰するため、遠方の引越しを自分で行うのは考えないようにしましょう。
自分でする場合の準備
中距離や長距離の引越しを自力で行うのはむしろ損をすることがわかりました。したがって、近所へ引越しをするときだけ、自分だけで行うといいです。また、往復が大変なので自力引越しは非常に荷物が少ない場合のときに限られます。
ただ、こうした条件を満たすだけでなく、自分で引越しする場合は他にも考えなければいけないことがあります。引越し業者に依頼しないからこそ大変な作業が待ち構えているわけですが、具体的にどのようなことをしなければいけないのか順に確認していきます。
ダンボールなど資材調達
引越し業者へ依頼する場合、前述の通りダンボールを含めて資材を無料で送ってくれます。ガムテープや布団袋、ハンガーボックスなども用意してくれるため、荷造り・梱包作業がかなり楽になります。私が引越し業者へ依頼したとき、必ず以下のように大小のダンボールをもらいます。
ただ、自分で引越しをするとなると、ダンボールを含め資材類を自分ですべて用意しなければいけません。
ダンボールの調達場所としては、近くのスーパーやドラッグストアに依頼することがあります。以下のように、ダンボールを無造作に置いている店舗にお願いするのです。
こうした引越し用の資材は自分で用意しなければいけません。ダンボールについては、家の近くの店からもらうことができても、ガムテープなど他の資材は購入する必要があります。そのため、それだけ時間も手間もかかるようになります。
粗大ごみを出し、できるだけ荷物を減らす
レンタカーなどで軽トラックを借りて引越しをすることから、荷台に積むことのできる荷物量は限られます。そのため、引越しに必要ないものについてはできるだけ捨てるようにしましょう。
特に冷蔵庫や洗濯機を含め、必要ない大型家具や家電製品がある場合は事前に捨てる必要があります。できるだけ荷物を減らすことで、引越し日の当日に運び出すものを少なくしなければいけません。
ただ、粗大ごみの処分は非常に面倒です。そのままの状態では捨てることができず、「専用のシールを購入して、自治体に指定された方法で出す」などのルールがあります。例えば、東京都新宿区では以下のようなものを買わなければいけません。
これが冷蔵庫や洗濯機、テレビ、エアコンなど家電リサイクル法に引っかかるものであるとさらに廃棄処分が面倒になります。当然、廃棄処分の費用もかさみます。ただ、荷物をできるだけ少なくしなければ自力による引越しはできません。
ちなみに、引越し業者に依頼する場合は粗大ごみを代わりに捨ててくれます。余計なことを考えなくても、業者に依頼すれば廃棄処分を代行してくれるので非常に楽です。
解体・組立や特殊工事は非常に大変
他にも家具や家電製品によっては、解体・組立が必要になることがあります。例えばベッドを引越しするとき、自分でする場合は自らベッドを解体し、新居で組み立てなければいけません。
自力でこうした作業ができる人ならいいです。ただ、既に説明書は捨ててしまっていることがほとんどですし、解体後に元に戻すのは至難の業です。
一方で引越し業者に依頼すれば、こうした作業も代行してくれます。
また、特殊工事が必要なこともあります。例えば、エアコンや食洗器の脱着です。こうした家電製品は業者に工事してもらわないといけません。特にエアコンについては、特殊な機械が必要になるので自分で行うのは不可能です。
そのため解体・組立が必要な大型家具や家電製品がある場合、自分で行うのは非常に大変になることを理解しておきましょう。
養生や傷の問題
なお、自分で運ぶときに一番問題になるものとして、実は養生や壁・床のキズ問題があります。引越し業者に依頼する場合、以下のように必ず養生してくれます。引越し代金の中に養生代が含まれているのです。
一方で自力での引越しで養生はありません。養生シートを自らレンタルすると高いですし、そのようなことをする人はいません。
また、引越し業者であれば専用の毛布を活用して梱包するなど、適切な資材を引越し日の当日に用意してくれます。こうした養生や資材があるため、賃貸マンション・アパートの壁や床が傷つくことはありません。
一方で自分でする場合、重い荷物を運搬するときに壁や床を傷つけてしまうことがあります。
実は私も過去、これで失敗しています。荷造りや梱包まではうまく準備できたものの、大型家具を運搬するときに金具が床に当たり、床を削ってしまったのです。
一瞬の出来事ですが、もう元通りにはなりません。これにより、退去時に原状回復費用(元通りに戻す費用)として5万円を請求されました。要は、結果的に引越し費用が非常に高額になってしまったのです。
重い家具を落としてしまったり、家の中で台車を転がしたりしても、こうした傷がつきます。これにより、引越し業者に依頼するよりも金額が高くなることはよくあります。
ちなみにこのとき、食器類をダンボール箱に入れて運搬中に底が抜けて陶器類を粉々にするという事件も自ら起こしてしまいました。掃除が非常に大変であり、自分だけで慣れない引越しをすると大変なことになると学んだものです。
自分で引越しを行うときのコツ
これらのことがあるため、自分で引越しをするのはおすすめできません。荷造り・梱包の準備が大変なだけでなく、壁や床を傷つけて高額な原状回復費用を請求され、結果的に引越し代が高くなることがよくあるからです。
ただ、それでも自力による引越しをしたい場合、次のような注意点に気を付けて準備を進めていくといいです。
・事前にレンタカーを予約しておく
近場での引越しになるとはいっても、基本的にはワンウェイシステムを利用した乗り捨てになります。引越し先にある、近くの営業所にレンタカーを返却するのです。
ワンウェイシステムを利用するためには、事前の予約が必要になります。そのため、1週間前までには軽トラック・小型トラック(またはハイエースバン)を予約しておくようにしましょう。
・手伝ってくれる人を探す
一人暮らしの単身引越しだからこそ可能な自力の引越しですが、一人だけでは無理です。当日はヘルプの人が必須です。
単身であったとしても、引越しのときは冷蔵庫や洗濯機、タンスなど大型の荷物が出てきます。これを一人で運搬するのは無理です。女性の引越しに限らず、男性が引越しする場合もヘルプ人員が必要になります。
そして手伝ってくれた人には、昼飯を奢ったり必要のない家具をあげたり、何かお礼をするようにしましょう。
・荷物運搬の順番を確認する
自分で引越しをするとき、先に大型家具から運び出すようにしましょう。軽トラック・小型トラックやハイエースなどに大きな荷物を先に詰め込み、余ったスペースにダンボールや小物を詰め込むようにするのです。この順番を守ることが自力による引越しを実践するときのコツになります。
引越し業者に依頼する場合、「ダンボール → 大型の家具類」という順番で運搬していきます。これは、部屋に散らかっているダンボールを先に片付け、作業スペースを確保するためです。先にダンボールを運搬したとしても、トラックには十分な空きスペースがあるのです。
ただ、自分で引越し作業をする場合は軽トラック・小型トラックやハイエースバンとなり荷台のスペースは非常に限られます。そこで、「大型の家具類 → ダンボール」と先に大きなものを積むという注意点があります。
なお、こうした準備を進めたとしても自力では引越し作業時間が非常にかかります。引越し業者が1時間で終わらせる作業であっても、素人なので4~5時間はかかると考えてください。
自力の引越しは注意点が多い
ここまで、どのようにして自分で引越し作業を進めればいいのか確認しました。「実家から出るため、初めて引越しをする」「賃貸マンションから実家へ帰るため、必要ないものはできるだけ捨てて引越しをする」などを含め、荷物量が少ないときは自力で何とかできないか考えてしまいます。
ただ、レンタカーを借りる場合はそれだけ費用がかかり、長距離でワンウェイシステムを利用する場合は非常に高額になります。そのため、「遠距離ではなく近距離引越しのときだけ、自分自身での引越しをする」ことを検討しましょう。
また、ダンボールなどの資材類を自ら調達したり、家具類の解体・組立を自分でしたりしなければいけません。壁や床を傷つけてしまうと、原状回復費用はかなり高くなります。
場合によっては、格安引越しを考えていたのに、節約するどころか値段が高くなってしまうこともあるのです。
これらを認識したうえで、上記のリスクを取っても問題ない人だけ引越し業者の見積もりを取らず、自分で作業をするといいです。業者に依頼するとき、作業の一部を自分で実施しても安くなることはないため、「自力で引越しをする」「すべての作業を業者に依頼する」のどちらかになります。
引越しを自ら行うのか、引越し業者に依頼して見積もりを取るのかはあなたの自由です。メリット・デメリットまで考慮したうえで、引越し作業を進めるようにしましょう。
引越しのとき、必須となるのが「複数社から見積もりを取ること」です。引越し価格には定価がなく、引越し業者によって見積もり額はバラバラです。そのため複数の業者から見積もりを取るだけで、何万円も節約できます。
例えば、以下は5人家族の長距離引越しで見積もりを取ったとき、4社に見積もりを依頼しました。このとき、最高額は438,264円でした。一方、最も安い業者は198,720円であり、半額以下の料金になりました。複数業者へ依頼しないだけで、大きな損をすることになります。
ただ、自ら業者を探して電話をかけるのは大変です。そこで、必要な情報を入力するだけで完了する一括見積もりを利用しましょう。
・引越し侍
引越し侍ではアート、サカイ、日通、アリさんなどの大手が登録しており、入力作業は30秒で終わります。無料で利用できるサービスなので気軽に利用できます。
さらに大手だけでなく、中小の引越し業者も登録しているので低価格な引越しが可能になります。最大15社まで見積依頼でき、できるだけ複数の業者の見積もりを取り、最安値で引越しをしたい人に適しています。
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