引越しをするとき、荷物のほとんどは引越し業者のトラックで一度に運んでもらうことができます。一方で車だと、引越しの荷物と一緒に運んでもらうことはできません。

このとき、運転に自信がある人であれば迷わず車に乗って引越し先へ向かうでしょう。ただ、引越し先が遠かったり運転に慣れていなかったりする場合、車で引越し先へ向かうことは難しいです。

だからといって、車を輸送すると引越し費用がかさみます。そのため「引越し費用を節約するために自分で運転して車を運ぶ」のか、それとも「お金をかけてでも車を輸送する」のかと悩む人は多いです。

それでは、お金をかけてでも車を輸送する価値はあるのでしょうか? また、車の輸送費用を節約する方法はあるのでしょうか? ここでは、引越し時に車を輸送するメリットや車を輸送してもらう際の注意点について解説していきます。

車を引越し先へ輸送するメリットには何がある?

車を引越し先へ運ぶ手段は大きく分けて2つあります。1つ目は、自分で運転して引越し先へ向かう(自走する)方法です。

自分で運転して引越し先へ向かう場合、必要となる費用はガソリン代と高速料金代のみです。自分や家族の移動と車の輸送にかかる費用を数千~数万円で抑えられるため、「引越し代をとにかく安くしたい」と考えるなら自走一択です。

このとき、車を2台以上持っていると、自走で車を運ぶことができません。このような場合、必然的に車を業者に輸送してもらうことになります。ただそうでない場合、自走が最も安いです。

体力を温存でき、事故のリスクを避けられる

しかし所有する車が1台であっても、長距離運転に慣れていないのであれば専門の輸送サービスを利用するほうがいいです。車を自分で運転して運ぶことには、さまざまなリスクを伴うためです。

まず、車を自走で運ぶと、運転による疲れが溜まります。特に引越し先が遠方である場合、長距離運転を強いられることになります。

例えば東京から大阪に引越す場合、自分で運転して引越し先へ向かうと500kmもの距離を運転しなければなりません。これは、休憩なしで行っても6~7時間かかる距離です。これだけの距離を自走すると、新居に到着しても荷解きに取りかかれないくらい疲れてしまいます。

また、引越し当日が晴れているとは限りません。悪天候で道路状況が悪い可能性もあります。これに疲れや運転の不慣れなどが重なると、事故を起こすリスクが非常に高くなります。

さらに車などでの移動には、渋滞に巻き込まれるリスクを伴います。渋滞にはまると体力が奪われるだけでなく、タイミングによっては引越しの荷物が先に着いてしまう可能性があります。

このとき、新居への到着が遅れても追加料金などは発生しません。ただ「間に合わないかもしれない」という状況に陥ると焦りが生じ、運転が荒くなって事故を起こしやすくなります。

このように、車を自走で運ぶことには、疲れが溜まったり事故に遭ったりするリスクを伴うのです。

これに対して車を専門業者に輸送してもらうと、公共交通機関を使って引越し先へ向かうことができます。そのため、事故に遭ったり到着時刻が遅くなったりする心配がありません。

さらに公共交通機関を利用すれば、引越し後の作業に向けて体力を温存しておくこともできます。そのため遠方引越しについて、運転に自信がない人や疲れるのを避けたい人は、専門業者に車を輸送してもらいましょう。

車は専門業者が輸送するのが基本

それでは、車を輸送することを考えたとき、どのような業者に依頼すればいいのでしょうか?

このとき、車輸送の依頼先には引越し業者と専門の陸送会社の2つがあります。ただ基本的に、引越し業者に車の輸送を依頼しても、実際に輸送業務にあたるのは専門の陸送業者です。

顧客の車を運ぶためには、専用のキャリアカーが必要です。ただ、引越し業者はあくまで引越し荷物を運ぶ業者であるため、家財を運ぶための資材・トラックしか持ち合わせていないのが基本です。

そのため引越し業者は、顧客から受けた車の輸送を専門の陸送会社へ依頼しています。例えば以下は、大手引越し業者の車・バイク輸送サービスについてです。

この業者は車の輸送を受け付けていますが、輸送は提携業者が行うことになります。引越し業者が車の輸送を行うのではなく、あなたと輸送会社の仲介を行っているのです。

そのため引越し業者に車の輸送を依頼すると、仲介料金が上乗せされることによって、輸送会社に直接依頼する場合よりも5,000~2万円ほど高くなります。

したがって、車の輸送費用を安く抑えたいのであれば、引越し業者に依頼するよりも車の輸送会社へ直接運送を依頼するほうがいいです。

引越し業者に依頼すれば手続きの手間を省ける

ただ、陸送業者だと輸送費用が安くなりやすいとはいっても、実際の輸送費用は業者によって異なります。料金の安い輸送会社に依頼するためには、複数の業者の料金を比較しなければなりません。

また車の運送を専門業者に依頼する場合、引越し作業と並行して日程調整を行わなければなりません。引越しではさまざまな作業・手続きが発生する中、陸送業者の料金比較や日程調整などを並行して行うのは難しいです。

このとき引越し業者に車の輸送を依頼すれば、輸送会社の手配や日程調整などをすべて行ってくれます。引越し業者に到着希望日などを伝えるだけで手続きを進めてくれるため、引越し作業に伴う負担が少なくなります。

また、引越し業者に車の輸送を依頼すると仲介手数料が発生するのは事実であるものの、引越し費用は複数業者に見積もりを依頼することで安くすることができます。

このとき複数の業者に見積もりを取るだけで、単身引越しであっても1~2万円ほど料金が安くなるのは普通です。家族引越しなど高額な場合であれば、十数万円の差が出ることもあります。他社との価格比較をすることで、仲介手数料の上乗せが気にならないくらい引越し費用を値下げできるのです。

当然ながら、時間があるならば車輸送についても複数業者に見積もりを依頼し、最安値を引き出した方が引越しコストは下がります。ただ引越し前にそれほど多くの時間を取れないのであれば、引越し業者にまとめて見積もりを依頼し、値下げを引き出した方がお得になりやすいです。

輸送にかかる費用・日数と節約のコツ

なお引越し業者と輸送会社のどちらに依頼する場合であっても、輸送距離が長くなるほど日数がかかり、費用も高くなります。具体的には、陸送業者に直接依頼した場合、車の輸送費用と所要日数の相場は以下のようになります。

距離の目安費用日数
近隣~200km(隣県)1~3万円1~3日
200~400km(東京~名古屋)3~5万円2~4日
400~800km(東京~大阪)5~6万円4~6日
800~1,200km(東京~札幌)6~9万円7~8日
1,200km~9~15万円8日~

また、北海道や離島などへ車を輸送する場合、陸送できない区間を挟みます。この場合、フェリーの利用料金が加算されるため輸送費用が1~2万円ほど高くなります。

これに加えて、前述の通り引越し業者に車の輸送を依頼した場合、5,000~2万円ほど料金が上乗せされます。

センター受け渡し・引き取りだと、輸送費用が安くなる

なお車を輸送する際、引き渡し・受け取り場所を自宅に指定できるケースがあります。このようなサービスだと、自宅にいるだけで車の輸送を完結できるので便利です。

ただこのとき、引き渡し・受け取り場所を輸送会社のセンター(ヤード)に指定すると、自宅からセンターまでの輸送料金がかかりません。つまり、輸送費用を節約することができます。

また、自宅まで車を輸送してもらうと、引き渡し・受け取り時に自宅で待機する必要があります。時間を細かく指定することはできないため、引き渡し・受け取り日には半日~1日の待機時間が発生します。

これに対してセンター指定だと、あなたの都合がいい時間に車を引き渡し・受け取りできます。そのため車の輸送費用や時間を節約したい人は、センターでの引き渡し・受け取りを選択するといいです。

引越しで車を輸送する際の注意点

なお、車の輸送を依頼すると、ガソリンを抜いておくように業者から指示されるケースがあります。輸送中にガソリンが漏れると、引火してしまう危険性があるためです。

このとき、ガソリンは危険物であるため素人が抜くことはできません。業者からガソリンを抜くように指示された場合、工場やガソリンスタンドへ持ち込んでガソリンを抜いてもらいましょう。

なお、ガソリンを抜いた後でも、20~30kmは走ることができます。そのため、ガソリンスタンドなどがよほど遠方でなければ、抜いた後に運転して自宅へ帰ることができます。

このとき中には、ガソリンを入れたままでも運んでくれる業者もあります。事前にガソリンを抜いておくことが困難な場合、このような業者に依頼するといいです。

車内の荷物を下ろしておく

また車の輸送時には、荷物を下ろしておくことが求められます。輸送時の揺れによる荷物の汚損・破損を防ぐためです。

このとき、多少の荷物であれば黙認されるケースがほとんどです。ただ、車の輸送ではスタッフが運転して車を運ぶことがあるため、車両運転時の後方確認に支障が出る状態だと断られるケースが多いです。

また、荷物を積んだまま輸送してくれたとしても、荷物破損に対する補償はありません。車内の荷物が破損・紛失しても自己責任となります。

そのため、壊れやすい物や貴重品などは車を引き渡す前に下ろしておきましょう。特にETCカードを紛失すると金銭的なリスクが大きいため、忘れずに取り出しましょう。

改造車や車高の高い車だと輸送料金が高くなる

また通常の乗用車であれば、どの業者であっても輸送してくれます。ただ改造を施した車だと、輸送を拒否されるケースが多いです。キャリアカーは通常の車を載せて運ぶことを想定した造りになっているため、改造車を積もうとすると破損・汚損するリスクがあるためです。

例えば車高を低くした車だと、キャリアカーに積む際に車体が地面と擦れてしまいます。このような車を積む際には、専用の積載車が必要です。そのため一般的なキャリアカーを使った陸送しか取り扱っていない業者だと、低車高の車輸送は断られることになります。

中には、改造車であっても輸送してくれる業者があります。ただ、専用の積載車を利用することになるため、輸送費用が高くなることを覚悟する必要があります。

同様にワゴン車などの全高2mを超える車だと、一般的なキャリアカーに積めないケースがあります。この場合も専用のキャリアカーを利用することになるため、輸送費用が高くなります。

寒冷地に運ぶ場合、装備を変更する必要がある

また引越し先が東北の北部や北海道などの寒冷地の場合、冬場など季節によっては車を寒冷地仕様に変更しておく必要があります。通常の装備のまま寒冷地へ行くと、寒さによって車両が故障するリスクが高くなるためです。

例えば一般的なウィンドウォッシャー液は、外気温が氷点下になると凍って噴射できなくなります。通常、ウィンドウォッシャー液が凍っても、エンジンで温めれば噴射できるようになります。

ただ寒冷地だと、噴射直後にウォッシャー液が凍ってしまいます。そうすると、フロントガラスにきれいになるどころか、氷が張ってしまって視界が著しく悪くなります。

またラジエーター液には不凍液が含まれているため-15℃ほどまで凍りません。ただ北海道だと、真冬の夜に-15℃を下回るのは珍しくありません。参考までに、以下は氷点下20℃での様子です。

さらに外気温が低いと、バッテリーの電圧が低くなります。そのため関東などで利用しているバッテリーを寒冷地で使用すると、バッテリー上がりを発生するリスクがあります。

これに加えて寒冷地以外の地域では、雪道にチェーンを利用するのが基本です。ただ寒冷地の冬道は凍結・圧雪状態となっているため、チェーンを装着しても滑り止め効果を期待できません。そのため冬季の寒冷地に車を運ぶ際には、事前にスタッドレスタイヤに変えておく必要があります。

一般的な装備の車を寒冷地へ運ぶと、車の故障につながります。そのため東北の北部や北海道などの寒冷地へ車・バイクを輸送するのであれば、寒冷地用の装備へ変更してから運ぶようにしましょう。

車を業者に輸送・運搬してもらい、事故と疲労を防ぐ

車などを引越し先へ運ぶ際、自分で運転して運ぶと疲労が溜まって事故を起こすリスクがあります。そのため引越し先が長距離だったり運転に慣れていなかったりするのであれば、車の輸送サービスを利用するといいです。

このとき、輸送の依頼先は陸送業者と引越し業者の2つがあります。引越し業者が車を輸送するのではなく、陸送業者への仲介を行っています。そのため引越し業者に依頼すると、仲介手数料分だけ輸送費用が高くなります。

ただ引越し業者に依頼すれば、輸送手続きを簡単に済ませることができます。また複数の引越し業者から見積もりをもらえば、仲介手数料の上乗せ分に相当する値引きを引き出せるケースもあります。引越し作業と並行して陸送業者とやり取りする手間を考えると、引越し業者に仲介を依頼しても問題ありません。

ただこのとき、車内の荷物や改造車・車高の高い車、寒冷地への輸送など、事前に注意するべきポイントがあります。これらを理解して、引越しの時に車を運搬してもらうようにしましょう。


引越しのとき、必須となるのが「複数社から見積もりを取ること」です。引越し価格には定価がなく、引越し業者によって見積もり額はバラバラです。そのため複数の業者から見積もりを取るだけで、何万円も節約できます。

例えば、以下は5人家族の長距離引越しで見積もりを取ったとき、4社に見積もりを依頼しました。このとき、最高額は438,264円でした。一方、最も安い業者は198,720円であり、半額以下の料金になりました。複数業者へ依頼しないだけで、大きな損をすることになります。

ただ、自ら業者を探して電話をかけるのは大変です。そこで、必要な情報を入力するだけで完了する一括見積もりを利用しましょう。

引越し侍

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