賃貸物件の引越しでは、旧居の解約と新居の契約を行います。当然ながら、旧居の退去日と新居の入居日をそれぞれ決めなければいけません。

このとき、言葉の響きから入居日・退去日のことを「引越しする日」だと思いがちです。ただ、入居日・退去日はそれぞれ「新居の契約開始日」「旧居の契約解除日」を意味します。

当然ながら、賃貸物件の契約中は家賃が発生します。つまり、入居日と退去日の設定ミスをすると引越し費用が高くなってしまいます。そのため入居日と退去日を工夫することで、どのようにすれば引越し費用を節約できるのか理解しましょう。

ここでは、引越し費用を節約する入居日と退去日の決め方について解説していきます。

引越しで最初に行うべきなのは退去日の決定

引越しをするとき、「入居先が決まってから退去の連絡をしよう」と考える人は多いです。

確かに、入居先確定の前に退去の連絡をすると、部屋探しにかけられる時間が限定されます。また退去日までに新居を契約できないと、住むところがないという事態に陥ってしまいます。そのため、入居先が決まってから退去の連絡をする方が合理的に思えます。

ただ実際には、退去の連絡(=退去日の確定)は引越しが決まった段階で行うべきです。退去日の決定が遅くなると、その分だけ二重家賃の発生期間が長くなるためです。

まず退去の連絡を行った後、最低でも1~2ヶ月間は旧居の家賃を払い続けなければなりません。例えば退去予告を2ヶ月前と設定している物件だと、退去連絡から2ヶ月間家賃が発生することになります。参考までに以下は、私が過去に住んでいた部屋の契約書です。

この契約書には、退去通告を2ヶ月前までに済ませる必要があると記載されています。契約書にこのような記載がある場合、退去連絡をしてから2ヶ月間は家賃が発生することになります。

ただ、新居での家賃は契約して少なくとも1ヶ月後から支払いが発生します。そのため旧居への退去連絡が遅くなると、その分だけ二重家賃の発生期間が長くなります。

また賃貸物件の契約は1週間ほどで完了するため、退去までの3週間ほどを物件探しの時間に充てられます。ただ賃貸物件はキープできないため、気に入った物件があったらすぐに契約することになります。

一般的には、物件を探し始めてからおおよそ2週間ほどで契約に至ります。退去連絡を先にしても、物件探しを行う時間は充分に取れるのです。

そのため引越しすることを考えたら、まずは退去日を設定して管理会社などに退去の意思を伝えましょう。

物件によって退去日として設定できる日が異なる

それでは、退去日はどのようにして決めればいいのでしょうか。

早く引越さなければならないような特別な事情がなければ、退去通告の1ヶ月後以降(2ヶ月前申告の物件だと2ヶ月後)に設定するのが基本です。退去連絡から1ヶ月(または2ヶ月)は家賃が発生し続けるためです。

ただこのとき、「退去時の家賃を日割り精算しない物件」「退去時の家賃を日割り精算してくれる物件」の2種類があるため注意が必要です。

まず退去時の家賃を日割り精算しない物件では、実際に退去した日(退去の立会い日)に関わらず、月末(家賃の締め日)までの家賃が発生します。

例えば1ヶ月前申告の物件で2/1に退去連絡を行うと、3/2以降に退去日を設定することになります。このとき家賃の日割り精算に対応してもらえないため、3/2に引越したとしても3/31までの家賃を支払うことになります。

一方、新居の家賃は入居した日から発生するのが基本です。そのため退去時の家賃を日割り精算しない物件で月初に退去すると、二重家賃の発生期間が長くなってしまいます。上記の例でいうと、3/2~3/31の期間は旧居・新居共に家賃(二重家賃)が発生するのです。

そのため退去時の家賃を日割り精算しない物件から退去する場合、月末(家賃の締め日)に近い日付で退去する方がお得です。

これに対して退去日を任意に決められる物件だと、退去日までの家賃を日割りで精算してくれます。上記の例でいうと、3/1の家賃のみを請求してくれるのです。そのため任意に退去日を設定できる物件では、あなたの都合のいい日に退去日を設定しましょう。

例えばなるべく早く引越したいのであれば、退去の申告からちょうど1ヶ月後(もしくは2ヶ月後)の日付を選ぶといいです。また引越し費用を抑えたいのであれば、引越し料金が安い月初や平日などに退去日を設定しましょう。

・繁忙期に引越す場合は引越し業者の予約を先に入れる

ただ引越し繁忙期(3~4月)の土日にしか引越し作業を行えない場合、設定した退去日までに引越し業者を手配できない可能性があります。繁忙期の引越し業者は予約でいっぱいであり、特に土日は数ヶ月前から予約が埋まっているケースがあるためです。

このとき、一度決めた退去日はあなたの都合で勝手に延長することができません。大家に延長交渉することは可能ですが、繁忙期だと次の入居者が決まっている可能性があります。このような場合、延長することはできないですし、退去日までに部屋を空にしないと損害賠償を請求されるリスクがあります。

そのため繁忙期の土日に引越し作業を行う予定なのであれば、まずは引越し業者の訪問見積もりを行い、業者の仮予約を入れてから退去日を設定しましょう。

損をしない入居日の設定方法

退去日の設定と退去の連絡を済ませたら、新たな入居先として気になる賃貸物件を取り扱っている不動産業者へ問い合わせし、物件の内見・契約に進んでいくことになります。

なお賃貸物件の家賃は、物件を契約した日から発生するのが原則です。ただ実際には、契約開始日(入居日)を1ヶ月ほど猶予してくれる大家がほとんどです。そのため、契約から1ヶ月以内に入居日を設定することになります。

このとき、中には部屋の入居準備を行うために引越し日よりも早めに入居日を設定する人がいます。ただ入居前であっても、掃除などの目的があるのであれば鍵を一時的に借りることができます。

参考までに、入居前日の夕方には新居の鍵を受け取れるケースがほとんどです。このとき、仲介業者などに出向いて鍵を受け取ることになるため、その足で新居へ向かって掃除や害虫駆除などを進めることもできます。

つまり、入居日を引越し日の前に設定する意味はありません。入居日を早く設定すると、その分だけ家賃の発生日が早くなるだけなので、入居日は引越し当日に設定しましょう。

旧居の契約期間と重ならないように入居日を設定する

なお二重家賃の発生期間を短くするためには、退去日(旧居の解約日)と入居日(新居の契約開始日)がなるべく重ならないようにする必要があります。

極端なことをいうと、入居日を退去日の翌日にすれば二重家賃がゼロになります。そのため荷物の到着が翌日以降になるような遠方への引越しだと、もともとどこかで一泊しなければ引越しできないため、退去日の翌日に入居日を設定するといいです。

また、まれに月の途中で入居したとき、家賃を日割り精算しない物件があります。このような物件に引越す場合、1ヶ月分の二重家賃が発生することがあります。

例えば3/31に退去・入居すると、新居の居住期間が1日であっても3月分の家賃が発生します。つまり、3月の家賃が二重で発生するのです。このような場合、宿泊費などをかけてでも入居日を翌月にずらした方がお得になります。

ただ、入居時の家賃は日割り精算してくれる大家がほとんどです。このような場合、宿泊費などをかけて入居日をずらすとかえって損することになります。

そのため入居時の家賃がどのような条件になっているのかを確認し、二重家賃の発生期間がなるべく短くなるように入居日を設定しましょう。

・入居日前日に鍵を受け取り、その直後に引越ししてはいけないのか?

なお中には「入居日の前日には鍵を受け取れるのだから、前日夕方から引越しすればいい」と考える人がいます。確かに入居日を退去日の翌日に設定し、入居日前日の夕方に引越しを行えば、宿泊費なしで二重家賃をゼロにすることはできます。

ただ法律上、入居日前日の引越しは不法侵入にあたります。そのため大家や管理会社などに入居日前日の引越しがばれると、損害賠償や違約金などを請求される可能性があります。

また入居日前だと住居の保険が適用前となっています。そのため入居日前に引越して水漏れやボヤなどを起こすと、全額自費で弁償することになります。トラブルが住居全体や他の住民にまで及ぶと、支払い金額がかなり大きくなる可能性もあります。

そのため二重家賃を避けたいと考えても、入居日の前日に引越しするのはやめましょう。

フリーレントを交渉して二重家賃の発生期間をなくす

前述のように、旧居と新居の入居期間がかぶると二重家賃が発生するのが基本です。ただこのとき、交渉次第で二重家賃の発生を防げるケースがあります。新居の契約時に、フリーレント期間を設けてもらうように交渉するのです。

家主からしてみれば、所持している物件に入居者が入らないと収入がゼロになります。一方で少しの割引をしてでも入居してもらえれば、安定した収入を得ることができます。そのため該当の物件を契約する前提であれば、入居が1ヶ月以上先だとしても、入居日まで無料(フリーレント)にしてくれる大家は多いです。

このとき、フリーレント交渉を成功させたいのであれば、欲を出しすぎないことが大切です。得をしたいからといって理由もなしに「1~2ヶ月分の家賃をまけてほしい」と言っても応じてもらえません。あくまで、「〇日まで旧居の家賃が発生するから、その日まで家賃を免除してほしい」と交渉しましょう。

ただ、人気のある物件や引越しが多い時期の場合、割引をしなくても入居者が現れます。そのため人気のある物件への入居や繁忙期の引越しの場合、フリーレント交渉には応じてもらえないケースが多いです。その場合、諦めて二重の家賃を支払いましょう。

入居日・退去日の設定を工夫し、余計な出費を抑える

「新居が決まってから大家に退去の意思を伝えよう」と考える人は多いです。ただ退去の連絡が遅くなると、その分だけ二重家賃の発生期間が長くなります。そのため引越しが決まったら、まずは大家や管理会社に退去日を伝えましょう。

このとき、退去時の家賃について「日割り精算する物件」と「日割り精算しない物件」の2種類があります。家賃を日割り請求してくれる物件であれば好きなタイミングに退去日を設定すればいいです。一方で家賃の日割り精算を行わない物件だと、家賃の締め日に近い日付で退去した方がお得です。

また入居日は、旧居の契約期間となるべく重ならないように設定しましょう。そうすることで、二重家賃の発生期間を短くすることができます。

このとき入居が1ヶ月以上先であっても、交渉次第で退去日・入居日までの家賃を免除(フリーレント)してもらえるケースがあります。交渉することによってあなたが損することはないので、二重家賃が発生しそうな場合は大家や管理会社に家賃免除について相談してみるといいです。このようにして、損しないように入居日・退去日を決めていきましょう。


引越しのとき、必須となるのが「複数社から見積もりを取ること」です。引越し価格には定価がなく、引越し業者によって見積もり額はバラバラです。そのため複数の業者から見積もりを取るだけで、何万円も節約できます。

例えば、以下は5人家族の長距離引越しで見積もりを取ったとき、4社に見積もりを依頼しました。このとき、最高額は438,264円でした。一方、最も安い業者は198,720円であり、半額以下の料金になりました。複数業者へ依頼しないだけで、大きな損をすることになります。

ただ、自ら業者を探して電話をかけるのは大変です。そこで、必要な情報を入力するだけで完了する一括見積もりを利用しましょう。

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