年末調整で提出する書類には、住所を記入する欄があります。ただ、今年引越した人や近いうちに引越す予定がある人は、新住所と旧住所のどちらを記入するべきか悩むことでしょう。

また年末調整では各種申告書だけでなく、保険会社から送られる保険料控除証明書も会社へ提出します。ただ引越したタイミングなどによっては、旧居の住所が記された保険料控除証明書が届いてしまいます。場合によっては、引越し後の住所に保険料控除証明書が届かないケースもあります。

それでは年末調整の前後で引越しがある場合、書類にはどちらの住所を記入すればいいのでしょうか? また引越しによって旧居が記された保険控除証明書が届いたり保険料控除証明書が自宅に届かなかったりした場合、どのように対応したらいいのでしょうか?

ここでは、年末調整の前後で引越しをした場合の手続きや保険料控除証明書の取り扱いについて解説していきます。

引越し前後の年末調整で記入する住所

年末調整では基礎控除や扶養控除、保険料控除など、さまざまな書類(申告書)を提出します。

これら書類には、給与所得者(あなた)の住所を記入する欄があります。そのため年末調整の前後で引越しがある場合、旧居と新居どちらの住所を書くのが適切か不安になることでしょう。

結論からいうと年末調整に関する書類には、次の年の1月1日に住んでいる住所を記入することになります。これは、年末調整によって翌年の住民税額が確定するためです。

住民税は前年の所得額に応じて税額が変動します。そのため年末調整手続きによって控除額などが確定すると、翌年の住民税額も確定します。

このとき、住民税は1月1日に住所のある自治体に納付することになります。そのため年末調整の書類には、翌年の1月1日に住んでいる住所を記入する必要があるのです。

したがって、年末調整の手続きより前に引越しを済ませているのであれば、いま住んでいる住所を記入しましょう。また来年1月1日までに引越す(新居に入居する)予定があるのであれば、引越し先の住所を記入しましょう。

引越し後に住民票を移していない場合

なお中には、引越し後に住民票を移していない人もいるでしょう。引越しをしたら住民票を速やかに移すのが原則ですが、家族が住んでいる実家に住民票があるのであれば、わざわざ住民票を移す必要性はありません。

このとき、年末調整の申告書類には実際に住んでいる住所を記入するのが基本です。ただ、住民票のある住所を書いた方が手間は少ないのが実態です。

年末調整で作成した住民税関連の書類は、申告書に記されている住所の自治体へ送られます。ただ自治体が住民税を課税するためには、住民票(または住民票の情報)が必要です。

そのため年末調整の申告書類に「住民票とは異なる住所(=実際の住所)」を記入すると、自治体があなたに住民税を課税するための手続きを行えません。

このような状況になると、自治体から会社へあなたの住民票登録について問い合わせが来ます。仕事中に総務・人事部などを介してやり取りすることになるため手間がかかりますし、会社にも迷惑がかかります。

また住民税を自分で納付している場合、年末調整に住民票のない住所(=現住所)を記入すると、現住所と住民票の登録住所にそれぞれの自治体から住民税の納付書が届くケースがあります。

参考までに以下は、中野市の公式サイトに記載されている住民税の支払いについてです。

ここには年末に引越した(=住民票が実際の住所と異なる)場合や源泉徴収票などに記載されている住所が住民票と異なる(=会社に新住所を伝えていない)場合、住民税の納付通知書が2ヶ所以上から届く可能性があると記されています。

届いた2つの納付書のうち、実際に支払う必要のある自治体は実際に住んでいる住所です。納付書が2通届いても、二重に住民税を支払う必要はありません。ただ納付書が2通届いてしまうと、間違って二重支払いしてしまいやすいです。

一方で年末調整の書類に住民票に登録されている住所を書いた場合、手続き上の問題は発生しません。また、自治体からの問い合わせや住民税の二重請求などが来ることもありません。

年末調整後に住民票の住所と実際の住所が異なることが判明しても、税の申告手続きをやり直す必要もありません。年末調整の書類には住民票に登録している住所を記入する方が余計な手間がかからないのです。

そのため引越し後に住民票を移していないのであれば、住民票の住所を年末調整の書類に記入しましょう。

なお年末調整の書類について、会社が「現住所を記入」と定めている場合、それに従う必要があるので注意しましょう。会社のルールがわからないのであれば、いったん住民票の住所で提出するといいです。問題があれば総務・経理から書類が返却されるので、記入し直して再提出しましょう。

保険料控除証明書の住所が古い場合の対処法

なお、年末調整で提出するのは申告書だけではありません。控除の対象となる保険に加入している場合、保険料納付証明書も提出する必要があります。例えば以下のような書類です。

 

このとき、保険会社の登録住所を変更していなくても、引越しから1年間であれば保険会社からの郵便物(保険料控除証明書)が自宅に届きます。郵便局で申請すれば、引越しから1年間だけ旧居宛ての荷物が新居へ届くようになるためです。

ただ登録住所を変更しないと、保険料控除証明書に記載される住所は古いままとなります。このような場合、旧住所の証明書を年末調整で提出して問題ないのでしょうか?

結論からいうと生命保険の控除証明書であれば、登録住所が古いままでも控除の対象となります。登録住所に関わらず、「保険料を正しく支払った」という事実を証明できれば保険料の控除を受けられるためです。

そのため生命保険の保険料控除証明書であれば、新住所に転送されてきた証明書をそのまま提出して問題ありません。

一方で、地震保険は登録住所が新しくなっていないと控除の対象とならないケースがあります。地震保険は住居によって保険料が変動するためです。

そのため転送された地震保険料控除証明書の記載住所が古い場合、すぐに保険会社へ連絡して登録住所の変更を行いましょう。また住所変更の問い合わせの際に、新住所での保険料の差異や控除証明書の発行についても確認しましょう。

住所変更手続きを忘れて保険料控除証明書が届かなかった場合

ただ前述のように、郵便物が転送されるのは引越しから最長1年間だけです。そのため引越し後に保険会社への住所変更手続きを忘れたまま1年以上経過してしまうと、自宅に控除証明書が届かなくなります。

自宅に届かなかった控除証明書は保険会社へ返送されます。そうすると、書類の返送を確認した保険会社から現住所確認と変更手続きについて電話などで連絡が来ます。これに対応すれば、控除証明書を新住所に送ってくれるケースがほとんどです。

ただ中には、自分から連絡しないと証明書が届かないケースもあります。特に、保険契約後に電話番号を変更していた場合、保険会社から連絡が来ることはまずありません。

そのため毎年届いていた控除証明書が引越し後に届いていないことに気付いたら、すぐに保険会社へ確認の電話をしましょう。そうすれば、新住所へ控除証明書を送ってくれたり、控除証明書のデータを送ってくれたりします。

会社の期日を過ぎていても書類が届いた段階で提出を相談する

このとき、年末調整書類の提出期限については「11~12月初旬まで」に設定している会社がほとんどです。ただ保険料控除証明書は10月半ば~11月初旬に保険会社から作成・送付されます。そのため、タイミングによっては、勤務する会社の締め切りまでに控除証明書を入手できないケースがあります。

ただ、年末調整における税務署への提出期限は1月31日です。そのため1月半ばまでであれば、勤務する会社の期限を過ぎていても相談次第で書類を受け取ってもらえるケースが多いです。

参考までに、私が過去に保険会社の住所変更を忘れた際、新住所へ控除証明書が届くのが遅れて会社の提出期限を過ぎてしまいました。ただ、控除証明書が到着してすぐに会社へ提出したところ、1月を過ぎているにも関わらず問題なく受け取ってもらえました。

そのため、会社の提出期限に間に合わなくても、まずは控除証明書が手元に届いた段階ですぐに勤務する会社へ連絡しましょう。

年末調整に書類が間に合わなかったら確定申告する

ただ当然ながら、あなたが勤める会社が年末調整手続きをすでに終えている場合、控除証明書を受け取ってもらうことはできません。また中には、設定する提出期限を過ぎたら書類を受け取らない会社もあります。

このようにして控除証明書が年末調整に間に合わなかったのであれば、2月16日~3月15日に確定申告を行いましょう。年末調整で保険料控除の手続きを行っていなくても、確定申告で控除の申請を行えば、払いすぎた所得税などの還付を受けられます。

このとき、確定申告書類の記入に不安を覚えるのであれば、確定申告の期日内に税務署へ出向いて手続きを行いましょう。申告書類や書類記入の案内を現地で手に入れることができますし、わからないことがあったらすぐに職員へ尋ねることができます。

・自宅で保険料控除の確定申告を行う方法

ただ、確定申告時期の税務署はかなり混み合います。地域やタイミングによっては、確定申告に丸一日かかるケースもあります。そのため確定申告のために時間を取れないのであれば、自宅で確定申告書を作成しましょう。

一般的な会社員が自宅で保険料控除の確定申告を行う場合、3つの手段があります。

1つめは、マイナンバーカードを使用してスマートフォンから申告する方法です。マイナンバーカードを読み取れるスマートフォンに専用のアプリをインストールする必要がありますが、案内に沿って入力して送信すれば確定申告を完了できるためもっとも手軽です。

2つめは、パソコンなどを使ってweb上で書類を作成し、確定申告書類を税務署へ郵送する方法です。以下は実際の確定申告書の作成画面です。

このような画面の案内に沿って必要事項を入力していきます。入力を終えたらデータとして出力し、印刷して税務署へ郵送します。

3つめは確定申告書Aに必要事項を手書きで記入し、書類を税務署へ郵送する方法です。この手段であれば、マイナンバーカードやパソコンがなくても自宅で手続きできます。

確定申告書Aは税務署で手に入る他、国税庁のホームページからダウンロード・印刷できます。以下は国税庁の公式サイト内にある確定申告に関するページです。書類を取りに行くだけであればそれほど時間がかからないですし、データをダウンロードしてコンビニエンスストアなどで印刷すれば、税務署へ出向く手間を省けます。

いずれの場合であっても、源泉徴収票と保険料控除証明書を見ながら必要事項を記入していきます。記入に迷った際は税務署に電話すれば対応してもらえます。年末調整で保険料控除書類が間に合わなかったら、このようにして自宅で保険料控除の確定申告を済ませましょう。

なお確定申告期間が過ぎても、最長5年間は保険料控除による税金の還付手続きが可能です。この場合、確定申告書の代わりに所得税の更正請求書に必要事項を記入して提出することになります。

引越し前後の年末調整を正しく行い、金銭的な損を防ぐ

年末調整で提出する書類には、住所を記入する欄があります。これら書類の住所欄には、翌年1月1日の住所を記入します。

そのため年末調整までに引越しを終えている人は、現在の住所を記入して問題ありません。一方で翌年1月1日までに引越す予定があるのであれば、引越し先住所を記入しましょう。また引越し後に住民票を移していない場合、住民票の住所を記入した方が手間は少ないです。

なお引越しのタイミングなどによっては、保険料控除証明書に記載されている住所が古いままとなっているケースがあります。生命保険の控除証明書であればそのまま年末調整に使用できますが、地震保険だと新住所の控除証明書でなければ控除の対象とならないため注意が必要です。

住所変更漏れなどによって保険料控除証明書が年末調整に間に合わなくても、勤務する会社に相談すれば遅れて受け取ってくれるケースが多いです。書類の入手が遅れたため年末調整で控除手続きができなかったのであれば、確定申告で控除の申告を行いましょう。これらが引越した際の年末調整手続きの考え方です。


引越しのとき、必須となるのが「複数社から見積もりを取ること」です。引越し価格には定価がなく、引越し業者によって見積もり額はバラバラです。そのため複数の業者から見積もりを取るだけで、何万円も節約できます。

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