引越しは心身への負担が大きい一方で、ワクワクするイベントでもあります。特に購入した新築のマイホームへ引越すとなると、新生活に期待が膨むことでしょう。

ただこのとき、引越し先が新築の分譲マンションである場合、通常とは異なる流れで引越し作業を行うことになります。この流れを理解していないとスムーズに引越しできず、新居での生活を気持ちよく始められなくなってしまいます。

それでは新築マンションへの引越しは、どのような流れで行うのでしょうか? また新築マンションへの引越しでは、どのような点に注意するべきなのでしょうか?

ここでは、分譲の新築マンションへ引越す際の段取りや費用を節約するコツなどについて解説していきます。

新築マンションへの引越しは一斉入居が基本

一般的な引越しでは、あなたが希望する日程で自ら引越し業者を手配します。これは、賃貸の新築マンションや完成済みの分譲マンションに引越す際も同様です。

一方で分譲の新築マンションを完成前に購入していた場合、通常と異なる流れで引越しすることになります。マンションを購入した多くの住民が同じタイミングで入居するためです。

このとき、マンションに入居する人がそれぞれ自由に引越しを進めると、「引越トラックを停めるスペースがない」「エレベーターが空かず、荷物を搬入できない」などのトラブルが起こります。そのため分譲の新築マンションへの入居は、事前に決められた日時に行う(一斉入居)のが一般的です。

具体的には、購入したマンションが完成したら販売会社などが「一斉入居のスケジュールを管理する引越し業者(幹事会社)」を指定します。

幹事会社は、一斉入居の対象者に入居希望日時の聞き取り調査を行います。その後、幹事会社の抽選や調整などによって入居日時が確定します。

多くの場合、引越し日の2ヶ月ほど前には入居日時についての通知が届きます。そうしたら、割り当てられた入居日時に合わせて引越し業者を契約し、入居準備を進めていくことになります。

幹事会社以外に引越しを依頼できるのか?

このとき、一斉入居では幹事会社が引越し作業を受け持つ前提で話が進められます。ただ中には、自分で引越し業者を選びたい人もいるでしょう。このような場合、幹事会社以外に引越しを依頼することはできるのでしょうか?

結論からいうと、一斉入居の引越しであっても幹事会社以外の業者に引越しを依頼することは可能です。ただ特別な理由がない限り、幹事会社を利用する方がいいです。これには、以下のような理由があります。

  • 他社を使うと時間内に作業を終えられないリスクがある
  • 利用する業者に引越しルールを正確に伝える必要性がある

以下で詳しく解説していきます。

他社を使うと時間内に作業を終えられないリスクがある

前述のように、一斉入居ではあなたが引越し作業を行える時間が限定されています。時間内に引越しを終えるためには、定められた時間に作業を始めなければなりません。

ただ一般的な引越し業者だと、決められた時間ぴったりに作業を始めるのは難しいです。特に午後便での引越しだと、引越し業者が午前便の引越しを終えてからあなたの引越し作業に着手することになります。

このとき前の顧客の引越しに時間がかかると、その分だけあなたの引越し作業開始時刻が遅れてしまう可能性があります。その結果、制限時間内に引越しを終えられないケースがあるのです。

時間内に作業を終えられなければ、他の入居者に迷惑がかかります。これから先、同じマンションに住む近隣住民からの第一印象が悪くなってしまいます。

また、引越しを時間内に終えられないと幹事会社から作業の中断を求められるケースもあります。このような事態になると、他の入居者の作業が終了するまで引越し業者を待たせることになるため、追加料金が発生します。

幹事会社以外の引越し業者を利用すると、時間内に作業を終えられず、快適な新生活を始められなくなるリスクがあるのです。

一方で幹事会社に引越しを依頼すれば、時間内に作業完了するケースがほとんどです。幹事会社は荷物の運搬ルートやトラックの停車位置などを事前に確認しており、効率よく荷物を運搬できるためです。

また一斉入居では、幹事会社に引越しを依頼する世帯がほとんどです。そのため一斉入居の期間中は、マンション内に幹事会社のスタッフが常駐した状態となります。

このような環境だと、作業の進捗に合わせて他フロアなどからの応援・人員調整を行いやすいです。そのため幹事会社を利用すると、荷物量が多い世帯であっても時間内に引越しが完了しやすくなります。荷物が少ない世帯だと、1時間ほどで荷物の搬入が終わるケースもあります。

作業が素早く終わると、決められた時間を過ぎる心配がないだけでなく、引越しのストレスも軽減します。幹事会社を利用すれば、余裕をもって引越し作業を行うことができるのです。

引越し業者に搬入ルールを正確に伝えなければならない

また一斉入居では多くの世帯が短期間で入居するため、引越しに多くのルールが定められています。

例えば一斉入居の引越しでは、引越し作業を行えるエレベーターや搬入経路が制限されます。また引越し車両の駐車スペースやトラックのサイズなども限定されるケースが多いです。

このとき、幹事会社以外に引越しを依頼する場合、このようなルールを業者へ正確に伝えなければなりません。あなたがルールを伝え忘れたり業者の伝達ミスが発生したりすると、作業中に運搬経路を変えたり車両を移動させたりなどの手間が生じます。

そうすると、無駄な時間がかかって制限時間内に引越し作業を終えられない事態に陥ります。最悪の場合、車両を停められずに引越し作業を開始できないケースもあります。

一斉入居の引越しを幹事会社以外の業者に依頼すると、あなたが引越しルールを伝え、順守してもらう手間が発生するのです。

一方で幹事会社に引越しを依頼すれば、あなたがルールを伝える必要はありません。また幹事会社は引越しルールを社内で周知徹底しているので、ルール違反を心配する必要もありません。幹事会社に引越し作業を依頼すれば、余計な手間や心配がかからないのです。

新築マンションへの引越し費用を節約するコツ

ただ、幹事会社に作業を依頼するデメリットが一つだけあります。それは最安値の料金で引越し作業を依頼できない点です。

基本的に、幹事会社は大手の引越し業者が担います。大手引越し業者は顧客サービスが充実している一方で、中小の引越し業者よりも料金が高い傾向にあります。そのため幹事会社利用による引越しだと、格安業者を利用するよりも金銭的に損をするのは事実です。

ただ、幹事会社による引越し料金は格安業者よりは高めであるものの、大手業者の一般的な水準よりは安めの設定となっているケースがほとんどです。

幹事会社からしてみれば一斉入居は大口契約です。また前述のように、一斉入居での引越し作業では人員の調整を容易に行えるため、効率的に作業を進められます。このような理由から、1件あたりの作業料金を安く設定しているのです。

・幹事会社を利用しつつ、安くするコツ

このとき、幹事会社を利用する場合であっても、値引き交渉は可能です。もともと割引価格となっている引越し料金であっても、交渉次第でさらに安くできる可能性があるのです。

ただ当然ながら、理由なしに「引越し料金を安くしてほしい」と伝えるだけで価格が下がるわけではありません。値引き交渉を成功させるためには、他社との相見積もりが必要不可欠です。

そこで幹事会社と契約するつもりであっても、一括見積によって他の引越し業者の見積もりを取りましょう。他社の訪問見積もりをいくつか受けて、提示された金額を元に幹事会社と引越し料金の値下げについて交渉するのです。

このとき、訪問見積もりの際には即決と引き換えに大幅な値引き提案を受けるのが一般的です。幹事会社と契約するつもりである場合、「即決の提案には応じられない」と考える人がほとんどです。

ただ、即決後にキャンセルしても違約金などは発生しません。そのため即決価格を提示されたら、とりあえず契約しておき、これを元に幹事会社と交渉するのは問題ありません。そうすることで、幹事会社が提示できる最安値の契約料金を引き出しやすくなります。

なお値下げ交渉をした上で幹事会社の引越し料金に納得がいかないのであれば、格安業者を利用することで費用を抑えることもできます。

もちろんその場合、ここまで述べたデメリットを考慮しなければいけません。そこで引越し時の作業人数や信頼できる業者かどうかを確認したうえで、料金と比べながら引越し業者を決めるようにしましょう。

お金をかけずに不用品を処分する

また引越しでは、多くの不用品が発生します。特に、新築マンションへの引越しでは家具や家電などを新調する人が多いです。当然ながら、家具家電を買い替えたら古い物を処分しなければなりません。

ただ、家具・家電の廃棄にはお金がかかります。廃棄する量が多いと、不用品処分に数万円かかるケースもあります。そのため引越し費用を節約したいのであれば、お金をかけずに不用品を処分することを心がけましょう。

例えば購入から3年以内の家具家電であれば、リサイクルショップで売ることが可能です。リサイクルショップであれば衣服などの不用品もまとめて持ち込むだけで処分できますし、うまくいけば引越し費用の足しにできます。

またリサイクルショップで価格が付かなかったものであっても、地元のリサイクル掲示板などを利用すれば無料で引き取り手を見つけられるケースがあります。不用品が金属製品であれば、リサイクルボックスの利用によって無料で処分可能です。

不用品の処分費用を浮かせられると、家具家電などの購入予算を高くすることもできます。そのため引越しで生じた不用品は、なるべくお金をかけない方法で処分しましょう。

一斉入居でやること・段取り

それでは実際に一斉入居で新築マンションへ引越すとなったとき、どのような段取りで作業を進めればいいのでしょうか。

まず前述のように、購入した新築マンションが完成したら入居日の調査が行われます。ただこのとき、平日に比べて土日は希望者が非常に多いです。土日を第一希望や第二希望などに設定しても、要望通りの日程を勝ち取るのは難しいのが現実です。

このような状態で人気のある日時ばかり希望してアンケートの回答を提出すると、場合によってはすべての希望が通らないケースがあります。そうすると、日程調整が難しい日を割り当てられてしまう可能性があります。

一方で、平日を第一希望として提出する人は少ないです。そのため都合の付きやすい平日を第一希望として提出すると、高い確率で希望が通ります。そのため一斉入居の入居日調査では、可能なら都合の良い平日を第一希望として出すことをおすすめします。

新居の採寸を行い、家具や家電、カーテンなどを購入する

引越し日程の調査票を提出したら、引越し日までに新居の家具家電スペースや窓などを採寸します。その後、必要な家具や家電、カーテンなどを購入しましょう。

このとき、賃貸マンションであれば新築であっても照明器具が設置されています。一方で、分譲の新築マンションには照明器具が備え付けられていません。エアコンが取り付けられていない部屋もあります。

これらはどれも生活に必要不可欠なアイテムです。そのため入居日までにエアコンや照明器具などの購入を済ませる必要があります。

特に、エアコンは業者による工事が必要です。日程に余裕を持って購入しないと、工事の予約が取れずに引越し日までの取り付けが間に合いません。そのため新築マンションに備え付けエアコンがないのであれば、早めにエアコンを購入して引越し日までに取り付け工事を済ませましょう。

ガスの開栓やインターネット開通の予約を入れる

なお新居でガスを使用するためには、ガス会社による開栓作業が必要です。ガスの開栓には事前予約が必要です。ガスの開栓が入居日に間に合わないと、ガスを使えない部屋で暮らし始めなければならなくなります。

このとき、ガスの開栓自体は30分~1時間ほどで完了します。そのため入居の日時が確定したら、同じ日にガスの開栓予約を入れましょう。

また同様に、引越し先がインターネットを個別で契約するタイプの分譲マンションである場合、インターネットの開通工事が必要となるケースがあります。

インターネットの開通工事も当日急に行うことはできないので、引越し後に快適なネット環境で暮らしたい人は事前にインターネットの引越し手続きや契約などについて確認しておきましょう。

引越し日までに荷造りを完全に終わらせ、荷物の搬入先を決めておく

このようにして入居先の準備を終えたら、引越し日まで荷造りに取りかかることになります。

このとき前述のように、幹事会社に引越しを依頼すれば、ほぼ確実に時間内で荷物の運搬が終了します。ただこれは、荷造りが完璧に完了している場合です。

引越し当日まで荷造りが終わっていないと、荷物の搬出が遅くなります。そうすると、作業の開始時間が遅れて時間内での作業終了が難しくなってしまいます。そのため割り当てられた時間内に作業を終えるためにも、引越し日までに荷造りを完璧に終わらせておくようにしましょう。

また時間内に作業を終わらせるためには、荷物の搬入先をあらかじめ考えておくことが大切です。特に制限時間のある一斉入居での引越しでは、業者が配置換えに応じないケースが多いです。

そのため一斉入居での引越しでは、家具や家電など大型の荷物を配置する場所をあらかじめ考えておきましょう。また、小型の荷物も搬入先をダンボールに記入しておくと搬入作業を素早く終わらせることができます。

引越し作業後、近隣住民に挨拶へ出向く

入居当日、引越し作業を終えたら最後に近隣住民への挨拶を行いましょう。マンション入居での挨拶では、両隣と上下階への挨拶が基本です。

このとき、中には「今は入居後の挨拶はしなくて問題ないのではないか」と思う人がいます。確かに、賃貸物件に引越すのであれば近隣住民への挨拶は必要ありません。

ただ分譲マンションへ引越すのであれば、近隣住民への入居挨拶を実行するのが一般的です。入居時に挨拶をしておくと、入居後のトラブルを避けやすくなるためです。

例えば、事前に「子供(ペット)がいるから、騒がしいかもしれない」と伝えられている住民からの騒音であれば、多少は許容しやすくなります。

一方で同じ程度の騒音であっても、全く知らない人(挨拶をされていない部屋)からの生活音だと不快に感じやすいです。引越し時に挨拶しないと、少しの生活音でも不快に思われるリスクがあるのです。

そのため分譲の新築マンションへ引越す際には、近隣住民への挨拶を欠かさないようにしましょう。特に子供やペットがいる人は、挨拶時にその旨を伝えておきましょう。

なお、引越しの挨拶では手土産を持参するのが一般的です。ラップやティッシュなどの消耗品が喜ばれやすいので、スーパーやネット通販などで品物を手配しましょう。販売店に「引越しの挨拶で使用するので、のしを付けてほしい」と伝えれば、適切なのしを付けた品物を用意してくれます。

新築マンションへの引越しを理解し、快適な新生活を始める

分譲の新築マンションを完成前に購入した場合、多くの住民が同じタイミングで入居することになります。そのため幹事会社がマンション全体の入居日を調整・管理するのが一般的です。

このとき、一斉入居であっても幹事会社以外に引越しを依頼することは可能です。ただ他社に引越しを依頼すると、時間内に作業を終えられない可能性があります。

また幹事会社の引越し料金は格安業者より高価ですが、他の大手引越し業者よりも安価です。他社の見積もりを元に価格交渉すれば、最安値を引き出すことも可能です。そのため、事前に複数社の相見積もりを行うといいです。

その後、引越し業者や引越し日時が決まったら入居日前にエアコンの取り付けやガス開栓などの予約を入れます。また入居日までには荷造りを完璧に終わらせ、引越し作業終了後には近隣住民への挨拶へ出向きましょう。このようにして新築マンションへの引越しを進め、快適な新生活を始めましょう。


引越しのとき、必須となるのが「複数社から見積もりを取ること」です。引越し価格には定価がなく、引越し業者によって見積もり額はバラバラです。そのため複数の業者から見積もりを取るだけで、何万円も節約できます。

例えば、以下は5人家族の長距離引越しで見積もりを取ったとき、4社に見積もりを依頼しました。このとき、最高額は438,264円でした。一方、最も安い業者は198,720円であり、半額以下の料金になりました。複数業者へ依頼しないだけで、大きな損をすることになります。

ただ、自ら業者を探して電話をかけるのは大変です。そこで、必要な情報を入力するだけで完了する一括見積もりを利用しましょう。

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引越し侍ではアート、サカイ、日通、アリさんなどの大手が登録しており、入力作業は30秒で終わります。無料で利用できるサービスなので気軽に利用できます。

さらに大手だけでなく、中小の引越し業者も登録しているので低価格な引越しが可能になります。最大15社まで見積依頼でき、できるだけ複数の業者の見積もりを取り、最安値で引越しをしたい人に適しています。

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