引越しをするとき、当日が晴れやくもりの日だけとは限りません。室外では雨や雪が降っていることがあります。雨降りの状態では梱包した荷物を運搬するときに濡れてしまいます。

それでは、こうした雨の日では引越し業者による作業を延期することはできるのでしょうか。また、当日に引越しを決行するにしても、どのような対策をすればいいのでしょうか。

雨の日では自分で行うべき事前準備があります。また、業者が行ってくれる雨天対策もあります。そこで、どのようなことを実践すれば問題なく雨の日でも引越しをすることができるのかについて確認していきます。

基本は雨天決行となる

雨や雪の日では引越し自体を延期できないかと考えてしまいますが、基本的に引越し日や時間をズラすことはありません。どれだけ外が土砂降りの大雨であったとしても関係ありません。引越しの延期はないと考えてください。

なぜ、雨天決行になるのでしょうか。これは、国土交通省の「標準引越運送約款」に定められているからです。すべての引越し業者がこの規則に従って動いています。雨だからといって延期することはないのです。

あなたも、「必ずこの日に引越し作業をしなければいけない。そのための段取りもすべて整えている」と考えていたとき、引越し業者から「今日は雨なので引っ越し作業を中止にしましょう」といわれたらどうでしょうか。非常にがっかりするはずです。

この逆は、引越し業者側にも当てはまります。あなたのために当日のトラックを手配し、荷物を持ち運びするためのスタッフを揃えたにも関わらず、一方的にキャンセルを申し出られるとその分だけ利益が少なくなってしまいます。

もちろん、引越し日に台風が直撃する可能性が高いなど、特別な理由がある場合は考慮してもらえます。大雨だけでなく、強い風によって転倒の危険があるからです。ただ、基本的には直前で延期を申し出てもキャンセルはできません。

キャンセル料を払えば延期できる

もちろん、所定のキャンセル料を支払えば雨の日の引越しを中止または延期することができます。どれだけのキャンセル料になるかというと、引越し業者で一律に決まっています。

キャンセル料(延滞料)は引越し日当日から数えて、以下のようになります。

  • 前々日(2日前)に解約や延期:見積書記載の額の20%
  • 前日(1日前)に解約や延期:見積書記載の額の30%
  • 当日に解約や延期:見積書記載の額の50%

キャンセル料についても標準引越運送約款に記載されています。どうしても雨の日の引越しが嫌な場合、こうしたキャンセル料を支払えば延期することができます。

引越し業者のパンフレットや公式サイトにも解約や延期についての記載があります。どの業者も先に述べたようなキャンセル料になっています。

「アート」「日通」「サカイ」「アリさん」「クロネコヤマト」など、どの業者もキャンセル料は一律だと考えてください。

2日前までの連絡でキャンセル料がかかります。そのため、3日前までの連絡なら延滞料(キャンセル料)は必要ありません。大型台風であれば天気予報から事前に情報がわかるため、早めに連絡するようにしましょう。

ただ、引越しを延期する場合、次の引越しは先になると考えてください。3月や4月などの繁忙期では既にトラックがいっぱいになっています。閑散期であっても、次の引越しまで数日は空くようになります。

「雨なので今日の引越しは延期して、明日に引越し作業をしよう」などのようにはならないので注意する必要があります。

雨の日(雪の日)は縁起が悪いのか

雨降りであると、どうしても運が悪いように思えてしまいます。ただ、その発想を逆転してみるのはどうでしょうか。

実は、雨の日の引越しは幸運を呼び込むと伝えられています。要は、縁起がいいのです。

例えば、結婚式では雨降りがあると非常に縁起が良いとされています。神様が雨に乗って天から祝福してくれるため、古代の権力者は結婚式に雨ごいをしたほどです。

これは引越しも同様です。「雨がすべてを流し、新居に幸せを流れ込ませる」ということから、雨天の引越しは縁起が良いとされているのです。幸運を呼び込むため、延期するのではなくそのまま引越しを続行してみるといいです。

見積もりのとき、事前に伝えることは可能

なお、それでも雨や雪の日の引越しが嫌な場合、事前に伝えるようにしましょう。引越し業者から見積もりをもらうとき、雨降りの日は延期したいことを要望として伝えるのです。

引越し業者によっては、以下のように見積書に「雨天のときにどうするか」という項目があります。

これは、雨の日の引越しを気にする人が多いため、そうした人のために欄を設けているのです。雨の時に「決行」「少雨決行」「延期」から選ぶことができ、どれを選択しても問題ありません。

ただ、「雨天のときは延期」を選んでいたとしても、日程変更は早めに連絡する必要があります。また、雨のときに引越し日を動かすという無理な要望をすることになるため、見積もり代金が通常の相場料金よりも高くなってしまうことは理解しなければいけません。

雨に引越しをするための準備や対策

ただ、いくら縁起が良いとはいっても荷造りをした荷物が濡れるのは当然ながら嫌です。冷蔵庫などの家電製品であれば、濡れたら故障するかもしれません。

しかし天気が悪くなっても、雨や雪が降るかどうかわからないケースがほとんどです。そうした場合、雨や雪が降ることを見越して準備をするといいです。

そのための対策としては、以下のようなものがあります。

大きなビニール袋をダンボールの中に敷く

最も一般的な方法としては、ダンボールの中に大きなビニール袋を入れる方法があります。既に梱包してしまった後では無理ですが、荷造りをする前にあらかじめダンボールの中にビニールを敷いておくのです。

引越しのとき、ダンボールの数は非常に多くなります。すべてのダンボールでビニール袋を敷くのはお金がかかりますし非常に面倒です。そこで、どうしても濡らしたくない荷物だけ以下のようなダンボールを作り、その中に荷物を入れるように荷造りを進めましょう。

すべての荷物を入れ終わった後、ビニール袋の口を閉めます。その後、ダンボールをガムテープでとめて梱包作業が完了します。

雨や雪が降るという前提で荷造りをしていくといいです。特に本は少しでも濡れると微妙な感じになるため、本や漫画、雑誌を梱包するときはビニール袋を活用するといいです。

引越し日の当日、タオルを用意する

雨の日ではどうしてもダンボールや家具、家電製品が濡れてしまいます。これを防ぐことはできません。そこで、新居に荷物を搬送した後はすぐにタオルで箱を拭くようにしましょう。

必要ないタオルが家にたまっているはずです。例えば私の場合、「温泉に行ったときに購入したタオル」「友人からの粗品でもらったタオル」などが家に以下のように山積みになっています。

これらのうち、必要ないタオルを使って引越しのときの荷物拭きとして利用しましょう。

もちろん、タオル類はダンボールへ梱包するのが普通です。以下のように、荷造りのときにダンボールへタオルを詰めていくのです。

ただ、ダンボールのフタを閉じてしまうと、どこにタオルがあるのかわからなくなってしまいます。これを防ぐため、使い捨て用のタオルを入れているダンボールへ大きな目印をつけるようにしましょう。ダンボールの外にマークを入れておくのです。

また、引越し業者には「このダンボールを一番最初に部屋へ入れてほしい」と伝えておきましょう。新居に運搬後、最初に使い捨て用のタオルが入った段ボールをあけ、その後に運び込まれたダンボールや家具、家電製品を拭いていくのです。

新居で早めに開封する

なお、雨の日に運んだダンボールについては、早めに開封するようにしましょう。ダンボールを家の中に置いていたとしても、自然乾燥は難しいからです。

ダンボールは紙なので水が染みます。また、なかなか水分が蒸発せず、放置していると中にカビを生じることもあります。

特に書籍類や衣服については早めにダンボールの中から取り出すようにしましょう。また、もし洋服などが濡れていた場合、乾燥させた後にタンスの中へしまうようにするといいです。

畳の部屋に荷物を置かない

新居では引越しした直後の荷物を部屋に置くことになります。このとき、適切な場所にダンボールや家具を配置していきます。

例えば、キッチン用品が入ったダンボールは台所に置きます。また、洗面用具が入ったダンボールは洗面所に置きます。引越し業者へどの荷物をどこに置くのか事前に指示を出しておくのが基本です。

ただ、家によっては畳部屋があります。新築の一軒家であれば多くの家に畳の部屋がありますし、賃貸マンションであっても畳部屋がある賃貸不動産は多いです。

雨や雪の日の引越しでは、こうした畳の部屋へ荷物を置かないようにしましょう。畳に水が染みていき、新築の家(または新居の賃貸マンション)の畳にカビが生える原因になります。

雨や雪の日だからこそ、畳など「水が染みていく床」に濡れたダンボールや家具を置いてはいけません。

業者側の雨対策

本や洋服、小さな家電製品を含め、濡らしたくないダンボールの中身についてはビニール袋に入れておけばいいことはわかりました。それでは、冷蔵庫やテレビなどの家電製品はどうすればいいのでしょうか。これらは引越し日の当日に引越し業者が運搬するものであり、事前の準備はできません。

これについては、引越し業者側が雨や雪でも問題なく運べるように対策を講じてくれます。

・家電製品の梱包

まず、家電製品についてはむき出しのまま運び出すことはなく、事前に専用の梱包材を活用してくるんでいきます。例えば冷蔵庫であれば、以下のような梱包材を活用します。

こうして、冷蔵庫の全体を覆っていきます。ここまでした後、引越し業者が運搬します。

全体が隠れるようになりますし、運搬時は手で持って運ぶので大雨であっても冷蔵庫が水浸しになることはありません。

もちろん、新居に家電製品を運んで専用の梱包材を取ったとき、外側が多少濡れていることはあります。ただ、少しの濡れであれば家電製品が壊れることはないので問題ありません。

これは、テレビなどの精密機械についても同様です。テレビについても、毛布でくるんだり専用の梱包材を活用したりします。

今回の引越し業者では、毛布を用いてテレビをぐるぐる巻きにしました。

その後、運搬していきます。雨や雪の日であれば、さらにビニール袋をかぶせるなどの対策をしてくれます。そのため、テレビなどの精密機械であっても故障するリスクは少ないです。

・家具類の梱包

大型の電化製品については、問題なく梱包して運んでくれることがわかりました。それでは、家具類についてはどうなのでしょうか。

引越し業者へ依頼すれば家具類についても、雨や雪であっても問題なく荷造りをしてくれます。例えば、以下はテーブルを梱包しているときの様子です。

毛布で包まれた後、ガムテープで角を止めていきます。そうして、全体をくるんだ後に運搬していきました。

雨が降っている場合、土台部分の金属が濡れてしまうのは仕方ないため、これについては新居に運んだ後にタオルで拭くといいです。

また、クッションなどの小物類(ソファー部分にあったクッション)についても、ビニールで包んでくれます。これなら、大雨であっても濡れるリスクは少ないです。

引越し業者を活用すれば、このように雨や雪であっても問題なく運搬してくれます。

ただ、ダンボール自体についてはさすがにビニール袋や毛布などをかぶせての運搬はありません。雨降りがある場合、ダンボールはどうしても濡れてしまうため、新居に運搬した後すぐにタオルで水滴をふき取り、ダンボールから荷物を出すようにするといいです。

・自分での引越しは非常に大変

中には、レンタカーや軽トラックなどを活用して、自分で運搬しようとする人もいます。ただ、引越し業者のように丁寧な梱包はできませんし、軽トラックであればブルーシートをかける必要があるなど非常に手間がかかります。

また、ブルーシートを使ったとしても結局はすべての家具や家電製品が濡れてしまいます。その結果、故障してしまったり使い物にならなくなったりして、引越し業者に頼むよりも値段が高くなることは多いです。

自分で引越しをする場合、こうしたリスクがあることを理解したうえで荷造りや梱包作業を進め、当日に雨や雪が降らないことを祈ることになります。

雨の日の引越しだからこそ引越し業者が役立つ

大雨であったり、外が吹雪だったりするからといって引越しを先延ばしさせることはできません。その日のためにトラックが用意されており、引越しをするための人員も確保されているからです。引越しのキャンセルや先延ばしをしてもいいですが、2日前や前日、当日の延期では違約金が発生します。

そのため、よほどのことがない限りは雨天決行にしましょう。大型台風が近づいている場合は天気予報から事前に状況がわかるはずなので、その場合は3日前までに延期を伝えるといいです。

雨の日に引越しを決行する場合、どうしてもダンボールや家具は濡れてしまいます。そのため、事前に準備や対策を練っておきましょう。ダンボールの中にビニール袋を敷いたり、新居で使用するふき取り用のタオルを用意したりするのです。

本や洋服、小さな家電製品など濡れて困るものについては注意して取り扱い、早めにダンボールから取り出すといいです。

また、引越し業者側でも雨や雪が降っても問題ないように梱包してくれます。自分で行ったり、赤帽などの個人事業主を使ったりする場合はここまで対応できませんが、「アート」「日通」「サカイ」「アリさん」「クロネコヤマト」を含め、通常の引越し業者なら雨が降っても問題ないように梱包してくれます。

こうしたことに注意して引っ越し作業を進めれば、大雨や大雪の日に引越しをすることになったとしても問題なく新居で新生活をスタートできるようになります。


引越しのとき、必須となるのが「複数社から見積もりを取ること」です。引越し価格には定価がなく、引越し業者によって見積もり額はバラバラです。そのため複数の業者から見積もりを取るだけで、何万円も節約できます。

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