引越しにはお金がかかります。荷物の運搬を引越し業者に依頼しなければならないですし、賃貸物件の契約時にはさまざまな初期費用が発生します。引越し先住居に合わせて家電や収納などを買い替える必要性も生じるでしょう。

このとき引越し時に発生する初期費用を低く抑えられれば、その分だけ経済的負担が軽くなります。そのため、賃貸物件契約時の初期費用はなるべく抑えたいところです。

それでは、引越し時に発生する初期費用の一つである仲介手数料を安くすることはできるのでしょうか? また、仲介手数料を抑えるデメリットはあるのでしょうか?

ここでは、仲介手数料の相場や初期費用を安く抑えるコツなどについて解説していきます。

仲介手数料の相場は家賃の1ヶ月分

賃貸物件の契約時にかかる初期費用の詳細な内容は、不動産業者によって異なります。ただ、ほとんどの業者で必要となる初期費用の一つが仲介手数料です。

仲介手数料はその名の通り、賃貸物件の貸主(オーナー)と借主(あなた)との仲介で発生する費用です。つまり、仲介手数料は貸主と借主を仲介している不動産業者が受け取る報酬となります。

ほとんどのケースで以下のような賃貸物件の仲介会社を頼ることになるはずです。

このとき、仲介手数料の価格は「家賃1ヶ月分+消費税」が上限と法律で定められています。そのため、ほとんどの不動産業者では仲介手数料を家賃1ヶ月分(+消費税)としています。そのため基本的には、家賃の高い物件ほど仲介手数料も高くなります。

オーナーと仲介手数料を折半できる物件で引越しを安くする

ただ不動産業者は、借主(あなた)ではなく貸主(オーナー)から仲介手数料を受け取っても問題ありません。つまり、あなたから仲介手数料をもらうのではなく、オーナーから手数料をもらいます。この場合、あなたが支払う仲介手数料は少なくて済みます。

例えば、あなたが家賃10万円の部屋を賃貸契約するとします。このとき、通常であれば10万円(+消費税)の仲介手数料を不動産業者へ支払うことになります。

ただ、この物件のオーナーが「借主(あなた)の代わりに、仲介手数料の半分である5万円を負担する」などの取り決めを不動産業者と交わしていた場合、あなたが支払わなければならない仲介手数料は5万円(+消費税)となります。

このようなケースは、物件のオーナーが「仲介手数料を負担してでも、空き部屋を埋めたい」と考えている場合に発生します。つまり仲介手数料が安い物件を選んでも、あなたが損することは特にありません。

「オーナーとの折半により、仲介手数料の負担額が少ない物件」は、お得な物件として売り出されています。例えば以下は、東京にある物件情報です。

この物件は仲介手数料が家賃の55%となっています。このような物件を選ぶと、初期費用を抑えた引越しを実現しやすくなります。

仲介手数料が無料の物件はある?

また賃貸物件は、オーナーとの仲介が必要な物件ばかりではありません。中には、不動産業者が貸主となっている賃貸物件もあります。例えば自社管理物件が多い大手の不動産会社に直接申し込む場合、仲介手数料が無料にて契約できるケースが多いです。

このような物件だと、不動産仲介業者が間に入らないため仲介手数料が発生しません。また同様に、不動産仲介業者を介さずに直接オーナーと賃貸物件を契約すると、仲介手数料は発生しません。そのため不動産業者の自社物件やオーナーとの直接契約であれば、初期費用を大きく抑えることができます。

ただ、不動産業者の自社物件やオーナーと直接契約できる物件はそれほど多くありません。そのため初期費用を抑えるために仲介手数料無料の物件を選ぼうとすると、希望条件を満たさない部屋しか見つからない可能性があります。

仲介手数料が安い物件の注意点

ただ、仲介手数料が安い物件の中には注意が必要なケースもあります。

例えば入居に必要な初期費用や家賃などが安い物件だと、住民の質が低いケースがあります。当然ながら安い物件に住む人の全員が常識のない人ではありませんが、安価な物件・地域だと常識のない住民が集まりやすいのは事実です。

実際に家賃と初期費用の安い物件に住んだ人では、「夜中の騒音がひどい」「共有部分の扱いが悪い」と感じるケースが多いです。

そのため仲介手数料を含め、初期費用を安く抑えられる物件を選ぶ際には、内見時に物件全体を注意深く見てみましょう。例えばゴミ捨て場が荒れていたり共有部分に物が多かったりする物件は、住民の質が低い可能性が高いため注意が必要です。

住む家を決める場合、必ず内見をします。そのとき、周囲の状況についても確認するといいです。

余計なオプションや、相場より高い敷金礼金に注意

ただ、物件の契約時は仲介手数料だけに着目してはいけません。中には、仲介手数料を低くする代わりに他の初期費用を高く設定している業者も存在します。

例えば、仲介手数料の代わりに他の項目を初期費用に加えることで、利益を確保しているケースです。クリーニング費用や防災キット費など、他の項目を上乗せしているのです。

実際に大手不動産業者の中には、1000円ほどの消臭スプレー1本を使って行うクリーニング作業に対して、入居者に1~2万円のクリーニング代を請求していたケースがあります。参考までに、以下は実際のニュース内容です。

また借主(あなた)に請求する仲介手数料を安くする代わりに、オーナーから広告費をもらっているケースもあります。

この場合、不動産業者に支払う仲介手数料の支払いは安く済む一方で、オーナーに支払う敷金礼金が高かったり礼金値下げの交渉ができなかったりするケースが多いです。オーナーが借主から多めに礼金を受け取り、それを不動産業者への広告費に充てているのです。

当然ながら、仲介手数料が安くても他の初期費用が高ければ意味がありません。そのため仲介手数料を安く設定している業者・物件を契約する場合には、他の費用が高くないかをチェックし、初期費用をトータルで安くするように心がけましょう。

仲介手数料を値切ることは可能か?

なお中には、「間取りや内装などの条件は譲れないが、仲介手数料をなるべく安くしたい」という人もいるでしょう。

前述のように、仲介手数料の安い物件から選ぼうとすると、候補がかなり少なくなります。人気のない物件や不便な物件などしか紹介されないケースも普通です。そのため仲介手数料の安い物件だと、住みたい部屋を見つけられないケースは多いです。

それでは、仲介手数料の値下げを交渉することは可能なのでしょうか? 結論からいうと、交渉は可能ですが値下げを実現するのは難しいといえます。

そこで仲介手数料ではなく、その他の部分を値切りましょう。例えば仲介手数料と同じタイミングで支払うことになる礼金であれば、大家と価格交渉が可能です。状況によっては値下げしてもらうことができます。

オーナーからしてみれば、敷金礼金を値下げしても、入居が確定すれば毎月家賃収入が発生します。そのため持ち物件の入居機会を逃さないために、敷金礼金の交渉に応じる意義があります。

一方で、仲介手数料は不動産業者の報酬・利益です。不動産業者からしてみれば、仲介手数料の値下げ交渉に応じたらその分だけ利益が減ることになります。

また仲介手数料の値引きが常態化してしまうと、不動産業者の利益が慢性的に大きく減少することになります。このような事態に陥ると経営が大きく傾いてしまうため、安易に仲介手数料を値引きすることはできません。

さらに、不動産業者からしてみれば、仲介手数料を値引くことで自社の利益を減らす顧客よりも、規定通りの仲介手数料を支払ってくれる顧客の方が大事です。そのため、あなたが仲介手数料の値引き交渉をした物件に他の希望者がいた場合、そちらが優先されやすくなります。

仲介手数料の値下げ交渉自体については、不動産業者が交渉に応じるケースはかなり少ないのが実情です。

鍵交換費用やフリーレントなどの減額しやすい項目で交渉する

また、他にも大家と交渉可能な項目があります。例えば、初期費用に含まれがちな消毒費や鍵交換費用などは必須契約ではありません。そもそも、部屋のクリーニングや鍵交換などは貸主負担が基本です。そのため契約書類を確認し、その他費用の項目に必須契約ではない費用が計上されていたら不要であることを伝えましょう。

例えば私の場合、以下のメールが来た時に鍵交換費用を拒否することで、42,000円を浮かせることができました。

これに加えて、物件の空き状況やオーナーの意向などによっては、前家賃の一部をフリーレント(家賃の一部を無料)としてくれるケースがあります。例えば月半ばで入居が決まった場合、本来であれば日割りで発生する家賃をサービスしてくれるのです。

ただ、他に入居希望者がいる場合だとオーナーとの値引き交渉などが成立しにくいです。そのため物件契約時の初期費用を抑えたいのであれば、3~4月の引越し繁忙期を避けて物件を探しましょう。

仲介手数料だけでなく、初期費用全体を安くすることを意識する

仲介手数料は不動産業者の利益となる項目です。そのため、不動産業者を介して賃貸物件を契約する場合、仲介手数料の減額交渉を成功させることは難しいです。

ただ中には、「仲介手数料をオーナー負担にすることで、手数料を安くしている物件」があります。このような物件だと、あなたが支払う仲介手数料は半額程度で済みます。また不動産業者の所有物件であれば、仲介手数料はかかりません。

しかし仲介手数料を低くしている物件・業者の中には、不要なオプションを初期費用としていたり、敷金礼金が高く減額交渉ができなかったりするケースもあります。

そのため賃貸物件を契約する際には仲介手数料だけでなく、初期費用全体に着目しましょう。その上で不要なオプションを省いたり、礼金や前家賃などの減額交渉を持ちかけたりするといいです。


引越しのとき、必須となるのが「複数社から見積もりを取ること」です。引越し価格には定価がなく、引越し業者によって見積もり額はバラバラです。そのため複数の業者から見積もりを取るだけで、何万円も節約できます。

例えば、以下は5人家族の長距離引越しで見積もりを取ったとき、4社に見積もりを依頼しました。このとき、最高額は438,264円でした。一方、最も安い業者は198,720円であり、半額以下の料金になりました。複数業者へ依頼しないだけで、大きな損をすることになります。

ただ、自ら業者を探して電話をかけるのは大変です。そこで、必要な情報を入力するだけで完了する一括見積もりを利用しましょう。

引越し侍

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