引越しで困るものとして、大きな家具や大型家電製品があります。大きな荷物であると、ろうかが狭かったりドアが小さかったりするときにうまく荷物を運搬することができません。
1階であれば、庭の窓から荷物を入れれば問題ありません。ただ、2階以上に大きな家具・家電製品を搬入したい場合、階段が狭くて通れないことが多いため、人力で吊り下げ・吊り上げの作業をすることがあります。
場合によっては、クレーンを使ってマンションの3階や4階へ荷物を運搬することがあります。いずれにしても、玄関から入らない場合は荷物を吊り上げてベランダから搬出・搬入するのです。
ただ、一般的に吊り下げ・吊り上げの作業はオプション代が必要になります。また、クレーン車を利用する場合はさらに費用が高くなります。そこで、どのようにして作業を行うのか、その流れや費用の目安を含めて解説していきます。
もくじ
部屋に入らないとき、吊り下げ・吊り上げが必要
まず、どのような場面で家具や家電製品の吊り下げ・吊り上げの作業が必要になるのでしょうか。これには、以下のケースがあります。
- 2階以上から荷物の搬出・搬入をしたい
- 階段やろうか、ドアが狭く荷物を搬出・搬入できない
- 家具を解体しても、大きすぎてベランダからでないと持ち運びできない
「これらの条件がすべてそろったとき」に吊り下げ・吊り上げ作業が必要になります。そのため、クレーンを含め吊り上げの対象になるのは以下のような家具・家電製品になります。
- 大型冷蔵庫
- ピアノ
- 大型のソファー
- 大きなタンス
- ベッド
- 洗濯機
この中でも、特に吊り上げ作業が発生する確率の高いものとして大型冷蔵庫とピアノがあります。大型冷蔵庫だと、玄関からは入らないケースが意外と多いです。
例えば、以下は冷蔵庫を搬入しようとしたときの様子ですが、玄関が微妙に曲がっていてそのままの状態では搬入できませんでした。そのため、冷蔵庫を入れるためにはベランダからの吊り上げが必要になってしまいました。
また、ピアノについては2階以上に運び入れるとき、ほぼ確実にクレーンが必要になります。ピアノは非常に重いため、人力ではなくクレーンを活用するようになるのです。大型のソファーについても、階段を通らない場合は吊り上げとなります。
タンスやベッドでは、分解・解体できるので吊り上げ作業が必要になるケースは少ないです。洗濯機についても、ほとんどのケースで問題なく運搬できます。
ただ、マンションの階段が狭い場合など不動産物件によっては搬出・搬入できないことがあります。ベッドの場合、特にマットレスが階段を通らないことがあります。そうしたときに吊り上げ作業が必要になります。
吊り上げの方法
それでは、吊り上げをするときはどのような方法があるのでしょうか。これには、主に以下の2つがあります。
・手吊り
名前の通り、人力によって吊り上げをする方法が手吊りです。マンションの3階や4階など、階が高いと対応できなくなりますが、2階であれば冷蔵庫などの大型家電であっても問題なく吊り上げることができます。
このとき利用するのはロープです。ロープを括り付け、二人や三人がかりで荷物を引っ張り上げます。以下のような感じになります。
出典:離島引越しレスキュー隊
ロープでの手吊りでは、比較的軽い荷物が対象になります。大型のタンスやソファー、洗濯機、ベッドなどは問題なく吊り上げできます。大型冷蔵庫も重量はありますが、問題なく手吊りが可能です。
特に大型冷蔵庫をもっている人であれば、吊り上げ作業が発生する確率が高くなります。そうしたとき、追加料金を支払って冷蔵庫のみ2階に上げることになります。
・クレーン(ユニック車)
ただ、ピアノなど非常に重量のある荷物であったり、3階や4階など手吊りでは難しい「高い場所への荷物の搬出・搬入」を考えたりする場合、クレーンを活用することになります。このときのクレーンとは、多くの場合は工事現場で活用するようなクレーンではなく、トラックにクレーンがくっついたユニック車になります。
以下が引越しのときにメインで活躍するクレーンになります。
こうした特殊な車を利用することにより、ベランダから荷物を運び入れることができるようになります。
手吊りやクレーンは万能ではない
なお、手吊りやクレーンを活用すればどのような場所でも対応できるかというと、必ずしもそういうわけではありません。
前述の通り、手吊りは人力になるので重たすぎる荷物には対応できません。大型冷蔵庫までが限界であり、ピアノのように250kg以上の荷物を人力で運び上げるのは難しいです。また、2階までなら対応できますが、3階以上に運搬するとなると断られる可能性が高くなります。
それではクレーンはどうかというと、3階や4階なら対応できます。ただ、マンションの高層階であると対応できなくなります。実際、私はグランドピアノをマンションの5階に搬入する引越しを体験しましたが、クレーンであっても5階までが運び入れることのできる高さの限界だといわれました。
より大きなクレーンだと8階などへ搬入できるものの、当然ながら費用が高くなります。
また、クレーンの場合はそれなりの大きさのトラック(ユニック車)になります。そのため、家の前が大きな道である必要があります。建物に横付けして、ベランダや窓から搬入できる場所にトラックを駐車できない場合はクレーンを利用できません。
ちなみに、工事現場で利用するような大型クレーンを活用するという方法はあるものの、非常に大きい特殊車になって道幅が狭い場合は引越し現場まで入ることができません。また、警備員の配置が必要になるなど値段も高額になります。そのため、費用の関係から利用する人はほとんどいません。
吊り下げ・吊り上げをするときの流れ
自分では不可能なので、吊り下げ・吊り上げ作業は引越し業者に依頼することになります。このとき、どのような流れになるのでしょうか。前述の通り、グランドピアノをクレーンで吊り下げ・吊り上げて引越ししたことがあるため、このときの体験談について記します。
手吊りでもクレーンでも、最初は荷物を梱包します。専用の梱包材でくるみ、ロープを巻き付けます。吊り下げ・吊り上げの場合、必ずロープを利用することになるのです。
クレーンの場合も同様にピアノにヒモを括り付け、窓から搬出することになりました。そうして、荷物を外に出します。
搬出後はトラックに荷物を積み、新居まで移動します。ユニック車は荷台があるため、クレーンで搬出した荷物はそのままユニック車の荷台に積むようになります。
そうして新居へ到着したら、再びクレーンで吊り上げをしました。今回は5階とそれなりに高い場所への搬入であり、クレーンがギリギリ届く距離です。それでも、問題なくピアノを運び入れることができました。
手吊りになるのかクレーンになるのかについては、運搬する荷物や新居(または旧居)の階層によって異なります。ただ、手吊りでもクレーンでも同じようにロープを活用し、ベランダの窓から荷物を搬出・搬入することは変わりません。
吊り上げするための料金の目安
なお、引越しのときに大型家具・家電製品の吊り上げ作業をするためには、価格はいくらになるのでしょうか。おおよそでもいいので、費用相場が分からなければ依頼することはできません。
これについて、一般的には以下のような金額になります。
- 手吊り:10,000~30,000円
- クレーン:20,000〜50,000円(クレーン車の大きさにより異なる)
基本的には、手吊りよりも特殊車を活用するクレーンの方が値段は高くなります。例えば、先ほどのグランドピアノの吊り上げについては、3tクレーンを用いた高い階への引越しだったので5万円ほどの費用になってしまいました。
なお、階層が高くなるほど作業が難しくなるため、価格は上昇します。一般的には、1階上がるごとに費用が5,000~8,000円ほど高くなると考えてください。
ただ、新居がマンションの高層階の場合は搬入自体を諦めなければいけないケースが存在します。そのためマンションに住むときは「低層階にする」「高層階に住む代わりに、大型家具はもたないようにする」などを検討するといいです。
安い引越しのため、見積もり比較は必須
吊り上げは多くの場合、オプションになります。引越し業者に手吊りやクレーン作業をお願いする場合、追加料金が必要になるのです。ただ、先に示した通りそれなりに値段は高いです。そこで、少しでも安い引越しを実現するため、複数社に見積もりを依頼するようにしましょう。
引越し業者には「アート」「日通」「サカイ」「アリさん」「クロネコヤマト」など、たくさんの会社があります。これらのうち、いくつもの会社に見積もりをお願いして値段を比較するのです。
このとき、吊り上げ作業が必要になりそうな場合は見積もりのときに事前に確認するようにしましょう。
会社によってサービス内容は異なります。例えば、アリさんマークの引越社であれば手吊りによる吊り下げ・吊り上げは無料になります。
通常、ロープやはしごを活用した手吊りは10,000~30,000円ほどの費用になります。これらが追加料金なしであり、業者ごとに大きく対応が異なることが分かります。
これらを考慮したうえで、いくつもの会社の見積もりを比較検討するといいです。
引き取り、買い替えも検討する
なお、吊り上げやクレーンによる作業はそれなりに高額な費用になります。そのため、場合によっては吊り上げ作業が必要になる家具・家電は廃棄処分し、買い替えをしても問題ありません。
このときは引き取りを依頼したり、リサイクル業者に買取をしてもらったりしても問題ありません。高い費用を払って引越しをするよりも、捨ててしまった方がいいことは多いです。
・小さい冷蔵庫を2つ利用している私の事例
ちなみに、多くの人にとって吊り上げ作業が発生するのは大型冷蔵庫になります。大型冷蔵庫を保有しており、マンションの2階以上に引越しをする場合、全員に吊り上げ作業のリスクが発生します。家具の中でも、大型冷蔵庫は意外とやっかいになりやすいです。
そこで私の場合、結婚していて家族がいるわけですが、大型冷蔵庫は使用しないようにしています。以下のように、冷蔵庫を2つ活用しています。
子供の成長に合わせて住む場所を変えたいため、そのつど引越しが発生します。そうしたとき、無駄に手吊りやクレーンの作業が必要にならないように、中型冷蔵庫で対応するようにしているのです。
将来のことを考えるのであれば、吊り上げが必要な家具・家電は捨ててしまい、小さいサイズに買い替えても問題ありません。
荷物の吊り上げまで考慮して引越しを行う
大型冷蔵庫やピアノをもっている人であると、引越しのときに発生しやすい作業として吊り上げがあります。1階への搬入であれば問題ありませんが、マンションの2階以上に住んでいる人になると、意外と手吊りやクレーンによる作業が必要になりやすいです。
また、マンションの中でも玄関や階段が非常に狭い不動産の場合、洗濯機やベッドについても吊り上げが必要になるケースがあります。
このように考えると、それなりに多くの人が必要とする作業が吊り下げ・吊り上げなのです。
ただ、手吊りやクレーンを含めこうした作業をする場合、それなりに引越し代金が高額になってしまいます。そこで、格安引越しをするためにいくつもの引越し業者に見積もりを依頼するようにしましょう。
安い引越しを考えながら、大切な家財を問題なく新居へ運搬する必要があります。大手や中小の引越し業者を含め、ほとんどの会社が吊り上げ作業に対応しているため、価格を比較しながら納得できる業者に頼むといいです。
引越しのとき、必須となるのが「複数社から見積もりを取ること」です。引越し価格には定価がなく、引越し業者によって見積もり額はバラバラです。そのため複数の業者から見積もりを取るだけで、何万円も節約できます。
例えば、以下は5人家族の長距離引越しで見積もりを取ったとき、4社に見積もりを依頼しました。このとき、最高額は438,264円でした。一方、最も安い業者は198,720円であり、半額以下の料金になりました。複数業者へ依頼しないだけで、大きな損をすることになります。
ただ、自ら業者を探して電話をかけるのは大変です。そこで、必要な情報を入力するだけで完了する一括見積もりを利用しましょう。
・引越し侍
引越し侍ではアート、サカイ、日通、アリさんなどの大手が登録しており、入力作業は30秒で終わります。無料で利用できるサービスなので気軽に利用できます。
さらに大手だけでなく、中小の引越し業者も登録しているので低価格な引越しが可能になります。最大15社まで見積依頼でき、できるだけ複数の業者の見積もりを取り、最安値で引越しをしたい人に適しています。
一般的に引越しの一括見積もりでは登録直後、たくさんの電話がかかってきます。こうした電話が嫌でメールだけで完結したい場合、SUUMO引越し見積もりを利用しましょう。
SUUMO引越し見積もりでは「電話番号の登録が任意」なので、メールだけで見積もりの日程調節が可能です。電話が嫌な場合、リクルート社が運営するSUUMO引越し見積もりが最適です。
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